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見れば面白い『屋根裏のラジャー』、予告編はどこまでネタバレすべきなのか

スタジオポノックの新作アニメ映画『屋根裏のラジャー』を見た。「あんまり面白くなさそうだな…」という鑑賞前の印象に比べて、はるかに面白かった。

映画ライター、ヒナタカさんの記事に西村プロデューサーの貴重なインタビューがある。読んでみてほしい。

さて『屋根裏のラジャー』、面白いとは書いたが、ヒットしていない。それも少々の興行不振ではない。2016年の長編アニメ『メアリと魔女の花』の初動が32万4000人、4億2800万円。今回の『ラジャー』が4万9642人、6816万9730円。(元編集長の映画便り氏@moviewalkerのツイートより)ほぼ7分の1である。7割ではない。7分の1。このままだと最終興行成績は4億円前後ということになる。

スタジオポノックは、ジブリを母体にしている。ジブリ時代に『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を米林宏昌監督が監督し、興行成績も宮﨑駿作品には及ばないものの良かった。ジブリから独立してポノックになった『メアリと魔女の花』の最終32億だって立派なものだ。

だが、同じ今年に宮﨑駿の『君たちはどう生きるか』が公開され、スタジオジブリが日テレに買い取られる、という報道があったことは、ジブリブランドの影響化にあるポノックにも大きな影響を与えてしまったのかもしれない。

厳しいことを言えば、金曜ロードショーで『メアリと魔女の花』を放送してもらう宣伝体制を取ってもらい、製作委員会には日本テレビ放送網、東宝、ウォルトディズニージャパンが名前を連ねる体制である以上、宣伝やバックアップが足りませんでしたとは言えない。

同情すべき点はある。ポノックというか、米林監督のアリエッティのころから、ジブリで物を作る若手はどうしても宮﨑駿・高畑勲と比較される運命にある。これがね、頭の硬い老害でイデオロギーに凝り固まったつまんないもの作ってるんなら若手もまだ立つ瀬があるんですよ。こいつら70歳80歳とかでめちゃくちゃ面白いもん作るんだから。ありえないでしょ普通そんなこと。週刊少年ジャンプで80歳超えた漫画家が読者アンケートで40年くらいトップ取り続けてるの見たことないでしょ。でもそれが宮﨑駿なのである。ほとんど、モーツァルトの元で作品を発表する弟子みたいな状況だ。

いっそジブリと全然関係ないスタジオとしてポノックが存在していれば、「派手ではないけど、丁寧な良いアニメを作るスタジオがある」と静かな支持を得たかもしれない。しかし、ジブリブランドの傘下として観客がポノックを見る以上、どうしても宮﨑駿作品からの引き算で作品が評価されてしまうような所はあった。

あえて言えば、これまでのポノック作品は丁寧な「佳作」ではあっても、宮﨑駿が晩年に作ったような、この世の禁忌をこじ開けて観客に世界の秘密を見せるような「名作」にはあと一歩届いていなかった。でも今作『屋根裏のラジャー』の後半は、その領域に手が届きかけている。だからこそ興行不振が惜しい。

正直に言うと、『屋根裏のラジャー』がめちゃくちゃ面白くなるのは中盤からである。序盤は正直に言ってしまうと凡庸と言ってもいい。したがって序盤までしか紹介してない予告編もあまり面白そうではない。

子どもの時にだけ見える、心の友だち、イマジナリー。なんだかディズニーアニメにいかにもありそうな設定だ。だが、この設定が中盤からあっと驚くような展開を見せる。

ここからはネタバレなので月額マガジンで。西村プロデューサーの脚本のあまり良くないところも書こうと思う。

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絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言なども個々に書きたいと思います。

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