クリスタがAI画像生成を基本機能に盛り込むことについて思うこと

こういうニュースがありました。

クリスタにも話題の画像生成AIが来ると。まあ無料公開されてるものを組み込んだだけとは言え、今までやり方知らなかった絵師、興味なかった絵師には「AIが勝手に向こうからやってくる」構図になります。
で、気になるのはここ。

利用規約が書いてあるんだけど、
この部分ですね

要するに、画像生成aiを機能として組み込むけど、それを使用して訴えられても責任は取らないと。これ、普通の人はまず読まない所に、読んでも分かりにくく書いてあるけど、かなり大事なこと。

画像生成AIの著作権問題は、今後どう展開するかわからない。「AIの学習」としては特別許可されるけど、それで出力したデータが「AI画像生成だから」という理由で著作権訴訟から免除されるわけではない。当たり前だよね。そうでなければ、ミッキーマウスの画像だけ学習させてミッキーマウスの絵を出してもディズニーに使用料を払わなくていいことになってしまう。

「なんだかんだ言ってもいずれ画像AIはみんな使うようになる」それは確かにそうかもしれない。でもその前に、AIと著作権をめぐる激しい攻防が起きるという予想は多い。訴訟社会であるアメリカ、俳優組合が強いハリウッドで、AI俳優をめぐって権利問題でかなりモメるかもしれない。映画会社にとってとてつもないギャラをもっていくスターの出演料を削減できればこれほど都合の良いことはないわけだし、今の技術なら、美人女優の顔をミックスしたスーパー美人に、演技派女優の演技をモーション学習させたスーパー俳優を作ることができるようになるだろう。人間の才能をAIがコピーしてしまうことをどこまで許すのか、たぶんアフリカ系ミュージシャンのコピーをした所で文化の簒奪論争も絡んで相当なことになると思う。
良い面もある。障害のある人、かつてできたことができなくなった人をAIが助け、作品を作るかもしれない。(それはAIを推進したい人たちが真っ先に『良きモデルケース』としてピックアップするだろう)。そういった良い側面と、人間のフィジカルな才能への敬意がどこで折り合うのか、まだ想像もつかない。

最近感じるのは、僕たちは思っている以上に表現というものを「どんな人間がどうやって作ったか」を織り込んで受けとめているということだ。ネット黎明期、他愛のないネタ画像やネタ動画でも作るのは大変だった。それに対するリアクションは「こんなくだらないネタに手間ひまかけやがって」という、人間の汗に対する感情的対価としての笑いや拍手が混じっていたと思う。黎明期の特撮に対する愛もそうで、着ぐるみとピアノ線で怪獣と戦闘機の映像を作ることが大変であることを知っているからこそ尊敬と愛が特撮オタクを作る。「文は人なり」という言葉が典型だが、僕たちは表現物を、自分で思っている以上に「相手が自分に発した声、メッセージ」として解釈する動物なのだ。自然の海や岩の美しさにすら「造物主の意志」「神の声」を見出すほどに。


人間にとって夕暮れが特別なのは、それが1日のうち数分間しかないレアな時間だからだ。それを絵に描けるものが少ないほど絵には価値が出る。だが、誰でもワンクリックで美しい夕焼けの画像を生成できるようになった時、それはハイパーインフレ国家の紙幣のように価値を失う。それは単にアーティストが仕事を失うだけではなく、人間にとって美のインフレによる、美の暴落が来るかもしれないということだ。
もう一つ、月額マガジン部分でAIについて僕が危惧していることを書く。月末の更新に暗い話で申し訳ないけど、たぶんそれはカルトや政治セクトのプロパガンダへのAIの導入である。

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絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言なども個々に書きたいと思います。

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