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文春オンラインで記事を書きながら思った『宮崎駿の原点 母と子の物語』を書いた大泉実成氏は今どうしているのか?

文春オンラインで『君たちはどう生きるか』の記事を書きました。


自分なりに思うところを書いた記事ですので上の記事も読んでいただけたら幸いなのですが、このNOTEでは記事の中で引用した大泉実成氏の『宮﨑駿の原点:母と子の物語』について書きたいと思います。

この記事が映画の公開からやや遅めの公開となった理由のひとつには、大泉実成氏がこの映画について記事を書くはずだ、とそれを待っているようなところがありました。

『君たちはどう生きるか』を語るにあたり、『宮﨑駿の原点:母と子の物語』はほとんど決定的なテキストと言っていい。宮﨑駿の兄弟のインタビューから彼の父母との関係を浮かび上がらせ、過去の膨大なインタビューの発言の中から全体を再構築していく手法は見事なものです。書籍の中には宮﨑駿の実母、宮﨑美子氏の写真まで掲載されています。

実際、個人ブログから女性週刊誌に至るまで、この『宮﨑駿の原点:母と子の物語』からの引用はされまくっている。中には書籍の内容をかいつまんで転載しただけみたいな記事までありました。にも関わらず、著者の大泉実成氏の記事はいっこうに発表されません。

それだけではありません。この『宮﨑駿の原点:母と子の物語』という書籍そのものが、品切れになったまま重版もされていないのです。そんなことってあるでしょうか?70億を突破する国民的アニメの巨匠の家族関係を読み解くにあたり、これほど重要なテキストはありません。にも関わらず、単に書店やアマゾンで買えないだけではなく、古書として入手することもできないほどソールドアウトしている。逆に言えばそれはいかにこの書籍に対する需要があるか、再版すれば必ず売れるという証明のようなものでもあります。なのにこの本はいまだに絶版品切れとなったまま、まったく重版される気配がありません。

大泉実成氏について検索しても、出てくるのは『宮崎駿の原点を手に入れて読んだ』という書籍の感想ばかりです。朝日新聞で2年前に宅八郎氏の死について取材を受けている記事が検索で見つかり、この中では非常に的確な分析を話しています。特に連絡が取れないという状態でもないように思えます。

しかし、ではなぜいったい、(自分を含めて)いくつものメディア記事で引用されるこの書籍は再版されないのか?その答えはわかりません。

寂しく思うのは、多くの人がこの書籍に当たりながら、再版されないこと、最も深く宮﨑家に取材を重ねた大泉氏が、なぜか今作について一切の記事を書いていないように見えることに対して不思議がる声が少ないことです。

庵野秀明をクイックジャパンの座談会に迎えた「スキゾ・エヴァンゲリオン」「パラノ・エヴァンゲリオン」などを読み返しても、大泉実成氏がクイックジャパン上で重要な扱いを受ける、ある種のカルチャースターだったことがわかります。その後の書籍にしても、『宮﨑駿の原点』がこれほど引用される重要なテキストになっていることからもわかるように、ノンフィクション作家として素晴らしい仕事をしている。なのになぜ、SNSでは彼の沈黙についての言及が少ないのでしょうか。

もちろん、僕が業界の情報からまったく遠い書き手であるだけで、なにかしらのプライベートな事情で今は物を書いたりコメントしたりできる状況ではなく、それを知った上であえて触れられていないという可能性もあるわけですが、本来なら映画のヒットとともに大々的に再版され、書店に並んでもいいはずのこの書籍が絶版品切れ状態のまま、それを悲しむ声も少ないまま過ぎていくのがどうにも悲しく思えました。

一方で、宮﨑駿監督の近況は聞こえてきています。

既に新作の構想を持ち、スタジオに毎日来ていると。

しかし、自分の記事でも書いたように、今回の作品にともない、宮﨑駿監督は一切のインタビュー、ドキュメンタリーに姿を表していません。僕の知る限り、今回公開された彼の写真はたった一枚、木村拓哉と撮影したツーショットのみです。

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絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言なども個々に書きたいと思います。

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