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七草日記

絵やマンガなどの創作物、WEB記事やTwitterに書ききれなかったこと。あとは映画やいろいろな作品について、ネタバレを含むのでTwitterなどに書けないことなどを書いていきた… もっと読む
絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言など… もっと詳しく
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#映画

映画公開後の疑問『オッペンハイマーをプロメテウスに例えて本当にいいのか?』

映画『オッペンハイマー』が公開されました。試写の時はさすがに内容に踏み込んだことを書くのは控えたのですが、無事公開もされたことですし、あらためて内容について書きたいと思います。 Prometheus Stole Fire from the Gods and Gave It to Man. For This, He Was Chained to a Rock and Tortured for Eternity.” 映画『オッペンハイマー』はこの引用から始まります。 「プロメ

試写会で見た『オッペンハイマー』に日本の観客として感じたこと

映画『オッペンハイマー』の試写会に行ってきました。日本中の映画関係者が来ているのではないかと思うほどの大劇場満員の試写で、受付だけで大行列でした。 まずはこの映画の配給に手を挙げてくれたビターズ・エンド社にお礼を言いたい。アメリカで映画賞総なめ状態にも関わらずこの映画の公開はなかなか決まらなかった。『正欲』『熱のあとに』など優れた日本映画の配給を支える一方、こうした火中の栗を拾うような作品も配給してくれるのは映画ファンとして足を向けて寝られない。 『オッペンハイマー』の映画技

SNSで映画を批判することの難しさと、映画『月』に対する批判、そしてそれとは別に映画『TATAMI』のこと

アカウントを見失ってしまって引用できないけど、先週くらいにTwitterで映画宣伝アカウントによる「映画を批判しないで、良い感想だけ書いて」というツイートが話題になっていた。映画を愛するならポジティブな感想だけ書いてください!みたいなやつである。 当然のことながら、このツイートには批判も多くあった。批評するな、と言ってるのも同然だからだ。批評が宣伝になってしまった、という以前の指摘をそのままなぞるような内容の、ある意味では無邪気で迂闊なツイートだったと思う。 しかしまあ、

映画『バービー』への疑問、なぜトランプではなく、ビル・クリントンの写真なのか?なぜ東アジア系のバービーには台詞がないのか?新たな『映画政治家』ガーウィグ監督に対する忖度と神格化への懸念

映画『バービー』を初日の朝に見てきました。バービーについては先日この記事を書いたばかりですが、 広告宣伝と映画の価値はまた違うもので、映画としてはよく出来ているのだろう、という思いもあり、またグレタ・ガーウィグ監督の『ストーリーオブマイライフ 私の若草物語』も良かった記憶があるので、初日が休日ということもあり早朝の初回に見てきました。 SNSでは、肯定派が「素晴らしいフェミニズム映画、これが大ヒットして世界は変わる!」否定派が「露骨なフェミニズムでうんざり」といった両極端

映画『PLAN75』が描くのはファシズムではなく「近代」である話と、別の映画『いのちの停車場』の吉永小百合の話(6月30日加筆)

『PLAN75』の予告編を映画館で見た時、正直なことを言うと「あっ、またこのネタでやるのね」という思いがよぎった。75歳以上の安楽死が合法化された未来の日本。老人の「姥捨」を書いたSF作品は、藤子不二雄の『定年退食』(1973年)など、昔から存在する。このネタで『世にも奇妙な物語』でやるくらいならいいけど、長編映画はダレるんじゃないの?と思っていたのだ。 だがそうではなかった。変な言い方だが、この映画は最初から最後まで強烈なスリル、息もつかせないサスペンスに満ちあふれている

ガンダム映画の最新名作『ククルス・ドアンの島』で、安彦良和監督がネットミームから奪い返したもの

特別料金1900円かよ、高いな〜と見る前は思っていた。貧乏なCDBちゃんはいつも割引デーに映画をハシゴして鑑賞料金を節約しているからである。しかし、1時間48分の最新ガンダム映画『ククルス・ドアンの島』を観たあと、思わず4400円の豪華版パンフレット+クリエイターサンクスセットを買ってしまうくらい面白い内容だったのである。率直に言ってこれは歴史に残る名作アニメだと思う。 何よりまず、異常なくらい絵が上手い。元々この『ククルス・ドアンの島』というファーストガンダムシリーズの中

2022年5月の映画傑作ラッシュメモ①『マイスモールランド』の光と、美しさの影

言うまでもなく5月、ゴールデンウィークは映画の激戦区である。名探偵コナン。シン・ウルトラマン。流浪の月。ハケンアニメ!。そしてトップガン。次から次への勝負作が投入される、ワールドカップで言う『死の組』である。グループリーグの予選通過が2組であるように、普通に生活する観客が見られる映画の数は決まっているので、見逃してしまう作品も出てくるのではないかと思う。というわけで今日から何日か、5月に公開された映画の良い点と悪い点、良い悪いというと偉そうで申し訳ないけど、好きな所と微妙な点

映画『ずっと独身でいるつもり?』とてもよかった

正直いうと公開前、田中みな実の一般的キャラクターイメージはこの物語の主人公に合うだろうか?というのが唯一の懸念だったのですが、公開されてみるとドンピシャの演技をされていました。市川実和子の人間味あふれる感じ、松村沙友理のダークな演技、どれも素晴らしかったです。 ふくだももこ監督はそれぞれの俳優の活かし方がとても上手いと思う。 内容としては雨宮まみさんのエッセイをおかざき真里さんがストーリー漫画に再構成したものを、ふくだももこ監督がさらに大胆にアレンジしています。SNSの取り