2022年6月の記事一覧
河瀬直美監督ドキュメント映画『東京2020オリンピックSIDE:B』には、なぜ「最も重要な人物」が1秒も映らないのかという話
河瀬直美監督が東京五輪ドキュメンタリーを撮る、と報じられた時、左派からよく引き合いに出されたのはベルリン五輪におけるレニ・リーフェンシュタールだった。要はリーフェンシュタールがナチス政権にそうしたような、東京五輪を美化するプロパガンダになるのではないかという危惧である。 先月に公開された『東京2020オリンピックSIDE:A』を見た時、その心配は杞憂に終わったと感じた。そこにあるのは良くも悪くも監督のメッセージが脱主体化された、東京五輪に参加する各国の選手たちの肖像、さまざま
映画『PLAN75』が描くのはファシズムではなく「近代」である話と、別の映画『いのちの停車場』の吉永小百合の話(6月30日加筆)
『PLAN75』の予告編を映画館で見た時、正直なことを言うと「あっ、またこのネタでやるのね」という思いがよぎった。75歳以上の安楽死が合法化された未来の日本。老人の「姥捨」を書いたSF作品は、藤子不二雄の『定年退食』(1973年)など、昔から存在する。このネタで『世にも奇妙な物語』でやるくらいならいいけど、長編映画はダレるんじゃないの?と思っていたのだ。 だがそうではなかった。変な言い方だが、この映画は最初から最後まで強烈なスリル、息もつかせないサスペンスに満ちあふれている
完全3DCGアニメ『ドラゴンボール超 SUPER HERO』の映像的進歩、そして鳥山明にとってナメック星人とは何だったのかという話
新作アニメ映画『ドラゴンボール超 SUPER HERO』を見てきました。今作の最大の特徴は、過去の手描き作画に対して、全編フルに3DCG化したということだと思います。 CGアニメというと『トイ・ストーリー』や『アナ雪』などのディズニー、進化版人形劇のような映像をイメージしますが、セルアニメの質感に合わせたトゥーンレンダリング、セルシェーディング(言い方はさまざまですが)で、違和感のない、というか素晴らしい出来になっています。もともと鳥山明という人の立体デッサン力が圧倒的で、3