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【高速レビューチャレンジ】2020年2月12日(水) ACLグループG 第1節 神戸vsジョホール【GO WEST】

※画像は追って掲載します

前書き

今回は一部界隈で話題の試合終了後すぐにレビューを仕上げる“高速レビューチャレンジ”に挑戦しようと思う。
ACLを録画して見返す環境をまだ整備できていないため、当分はこの形での執筆が増えることになると思われる。
予めご了承いただきたい。

前半

フェル―酒井間へのフリーマン落とし

システムが変わろうと神戸のやることは変わらない。いつも通りサイドの選手がロンドの外枠を形成し、ビルドアップの出口となる。特に飯倉はSBへの浮き球を選択することがより多かった印象だ。
対するジョホールの布陣は4-3-3の可変式。数的不利の1トップにはボールサイドのIHかWGが加勢して、神戸のCBにプレスを行い、残った2枚で人を捕まえていく。飯倉まで突っ込んで高い位置で奪いきるというよりは、蹴らせて回収という色のほうが濃かったと思う。
神戸のフリーマンは安井,郷家,イニエスタの3人。彼らがロンドの中で活動し、CBの間というよりはフェルマーレンと酒井の中間に落ちて、ジョホールのWG,IH,SBに選択を強いる。
WGがフリーマンに寄せてSBが神戸SBを捕まえるならシンプルに裏を快速3トップに狙わせ、フリーマンを放置するならそこを起点に逆側でオープンな展開といった具合に後出しジャンケン方式でボールを前進させていく。
安井はボールに寄りすぎる嫌いがあり、またフェルマーレンがペナ幅に開かないことで出口ができなくなることもあったがフィンクとしては中央は大崎やサンペールのような“安心できる”選手に任せたいのだろう。
さておき、この仕組みにジョホールは苦戦。前半だけで右サイドの選手に3枚イエローが出るなど見るからに消耗しており、後半になるとさらに困難な状況に陥ることとなる。

ギャップにトリデンテどうでしょう

ビルドアップ時には絞ったポジショニングが多かった神戸の3トップ。狙いはジョホールの4バックを中央に引き付けて大外の神戸SBをフリーにすることと、SBが神戸SBに出るならその裏を突くことである。前半はボールタッチの少なかったドウグラスだが、DFラインの牽制役としてはきっちり役目を果たしていた印象がある。1点目の小川のゴールも彼の引く動きに連動した裏抜けで、2点目も3トップがDFラインを足止めしておいての西の楔パスが起点だった。
こうなると神戸SBにはWGが付いていく必要があるため、サイドからのロングカウンターを予防しやすくなる効果もあった。

4-4-1+イニエスタで解決できること,できないこと

ボール非保持時の神戸は4-4ラインを形成し、イニエスタが1列目と2列目を行き来する形。因数分解するなら4-4-1+イニエスタという表現になるだろうか。
ジョホールはCBがペナ幅に開き、適宜アンカーもDFラインに入ることでSBを押し上げる。
クリーンなビルドアップで前進という形は少なく、まずは1トップのジオゴへのロングボールで牽制。セカンドボール隊はボールサイドのIH,WGとSBで、丁度ボール周辺で菱形を作るようにポジショニングする。
マッチアップすることが多かったフェルマーレンとのエアバトルは五分五分だったが、セカンドボールに人数を掛けていることもあり度々回収からのアタック移行に成功していた。
1点目の失点シーンは4バックの構造的欠点を突かれたもので、スローインのクイックリスタートからフェルマーレンを右サイドに釣りだされ、クロスが手に当たってしまいPKを献上してしまった。
昨季の神戸のゾーン1のコンセプトは5バックで城壁を築いて人海戦術で守る色が濃かったため、CBを釣りだされてもどうにかなる場面が多かったが4バックではそうはいかない。
またゼロックスでの2失点目もスローインのクイックリスタートが起点で、もう1度同じ形で失点してしまったことは反省点の1つだ。

後半

トリデンテどうでしょう2

リードを許し、このままでは埒が明かないジョホールはハイプレスを実施。それならと神戸は引いたSBを起点に貯金を作ってDFラインの裏を強襲する狙いを継続していく。
右サイドは西が引いて、小川がカットアウトランで内から外に抜けていく形が繰り返し見られた。
左サイドはSB,WG,フリーマンで入れ替わりつつ三角形を形成。酒井を内に絞らせて古橋をサイドに張らせるようなポジショニングも披露し、ジョホールのWGの足が止まっていたこともあってSB周辺を文字通りタコ殴りに。
酒井の偽SB的な動きは興味深い事象の1つで、3点目のグラウンダークロスも彼のハーフスペースランからだった。
ロンドに従属させられたことで消耗著しいジョホールに対し、神戸は得意のコントロールオープン展開に持ち込む。こうなると自慢の3トップが猛威を振るえるようになり、ボールにプレッシャーのかからない相手を尻目に縦横にボールを動かしてチャンスを作り出す。大崎サイドを狙ったカウンターでヒヤリとさせられる場面もあったが、フェルマーレンの度重なるカバーでカオスを鎮めて結局点を奪われることなく後半を終えた。

戦術的まとめ

サンペールが起用できないのもあるが、ビルドアップに話を限定するとやはり彼のような本職ピボーテが欲しくなる試合だった(ハイプレスのカバー役としては不向きだが)。小川が強烈に存在価値を証明したことを考えると、しばらくは山口にこのポジションを任せると予想する。

個人的雑感

前回のハットトリックから7年もの年月が過ぎ去り、彼を取り巻く全てのことが変化していた。
毎年のように加わるライバル、繰り返す故障、見失った“いつかの自分”、SBへのコンバート、そして愛するクラブとの別れ。
正直なことを言うと、こんな日が来ることを予想していた人間など無に等しかっただろう。
それでも、彼は願い続けた。笑われようと毎年のように目標には得点王と大書し、愚直に彼にしかない能力を愛するクラブのために使い続けた。
彼にしかない能力に足りなかったものが足し合わさった時、全てが変わった。“いつかの自分”の幻影を振り払い、力強く金色のライオンは吠えた。
ありがとう、小川慶治朗。君を信じてよかった。