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[43]稲刈り 三句

稲刈りや畳の香り嗅ぎに行く

幼き子スズメとともに穂を拾う

藁山のてっぺんに寝て鳥になる

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田んぼを渡る風の香りは、
季節とともに変わっていく。
青田の香りは夏野菜のように瑞々しく、
刈り入れを迎えた稲田は
陽だまりを思わせる藁の香りだ。

稲藁の香りは、
実家の座敷を思い出させる。

実家の座敷は
人が集まることを想定して、
二間続きになっている。
家具は大きめの座卓がある程度だ。
昔は婚礼や葬儀も自宅で行った。

そのがらんとした空間のど真ん中で、
ごろんと寝転ぶ。

縁側と障子に遮られ、
座敷にはほのかな間接光が届くだけだ。
天井が高い。
ところどころに仄かな光の斑点が揺れる。
背中がひんやりして、そして次第に馴染んでくる。
畳の香りとその硬さが心地よい。

まるで水底に沈んでいるようだ。
私は静かに長く息を吐く。
水底では呼吸の仕方を変えるものだ。

遠く離れた土地の住宅街の小さな田んぼ。
その刈り入れ時、畳の香りで思い出す。
私は大人になって、
水底での呼吸の仕方を忘れていた。

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