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[46]秋の月 五句
昇るほど色失くしゆく秋の月
月渡りささやきあえる屋根瓦
満月や主なき窓覗きけり
窓にいる水面にもいる秋の月
逍遥し月をひろって帰りけり
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地平線から顔を出したばかりの月は、
熟れた果実のように
今にも崩れそうな危うさがある。
しかし、それもほんのひと時のこと。
天頂に向かうにつれて、
その光は色を失くしながら輝きを増し、
無機物に命を与え
神々しくも手の届かない存在になる。
ゆったりと月が天を渡っていく間、
屋根瓦は水を得た魚のように、
さざめきささやき合う。
ただ見上げ憧れる
唯一無二の手の届かぬ存在。
その距離に改めて少し絶望しかけた時、
誰もいない私の部屋の窓に満月が映った。
そして、
昨日の嵐でできた足元の水たまりにも。
フラフラと彷徨っていた私は、
心安らかに家路についた。
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