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ぼくのメジャースプーン/辻村深月

ある事件に巻き込まれ心を閉ざした女の子のために自分の持つ特殊な力を使い復讐を図ろうとする少年の話。

とにかく多面的。奪われたもの、どう復讐するのか、代償、どうしようもないこと、事実としてそこにあるもの、それを取り巻く環境、自分自身。いろんなことが重なって混ざって、それでも起こってしまったことを失ってしまったものがあって、主人公はそれを奪った相手に復讐を試みる。まったく同じ人間はおらんし、考え方の違いという言葉だけではとても足りんくらい価値観が違う人間はおるし、ほんまに考えさせられる…この本読んだことある人と感想喋ってみたいなあ。

主人公は小学四年生の少年で、大切な人のために幼いながらに自分なりの考え方、答えを探そうとする。高校生の時は主人公の考え方に甘さを感じつつも共感できたけど、年を重ねるとだんだん主人公より秋先生の意見に傾きがちになる。それなりに色んな経験を積んで、つらいことも楽しいこともあって、目の前の出来事がどれだけ大きかったとしても時間がたつにつれて薄れていくことも学んでいく。悪意だけを掬い取ってはかることが不可能に近いこともわかる。それでも今はまだぎりぎり主人公の感情に近くあると思う。人を殺すことが怖いと思う気持ち。どうしようもない人間は死んでしまってもいいんじゃないかと思う気持ち。悪意も善意も反省も心も目に見えない。

これどこまで感想で本筋に触れていいんかめっちゃ悩むなあ~~!読んでみてほしいな。

辻村深月さんは物語の力を信じてる。誰かが誰かに影響して、本人さえも与り知らぬところで見えない力で守られて思われてるってことを、めちゃくちゃ丁寧にかつ緻密に表現する。スロウハイツの神様を読んだときもそう感じた。やからいろんな独立した小説でありながら登場人物がリンクする、繋がってることでより世界に入り込める。書評もとても良きでした…。

伝えたいけど伝え方がわからへんし、私がこういう風に思ってることをたぶんその人は素直に受け取ってくれへん気がする。それでもやっぱり思う気持ちは変わらんし、微かにでも感じてくれてたらうれしいなと思っております。それがなんとなくでも支えになれれば。


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