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栗嫌いのモンブランと母。

探偵局のみなさんこんばんは。私の母親の記憶が誰かに書き換えられたかもしれないので、調査してください。先日、・・・


探偵ナイトスクープへの依頼のような出来事の話、
というほどの大げさな話ではないけど、いかにニッチな依頼かが、探偵ナイトスクープの強みだと思っている。





私は子どもの頃から「栗」が苦手だった。
確か、風邪をひいた時にたまたま栗を食べて、気持ち悪くなったという理由だったと思う。明確な記憶がないぐらい昔の話。

だから、私の栗嫌いは生まれつきみたいなもので、家族はその事実を間違いなく知っていたはずだった。



我が家では、秋になるとよく栗ご飯が出た。
そんなとき私は、ご飯の中から栗だけを綺麗に全部退け、家族の誰かのお茶碗にのせるまでが、秋の風物詩だった。

学生時代には、本当に栗を食べなかった。高校生ぐらいになると危機管理能力が研ぎ澄まされ、栗が入っている和菓子は、遠目からでも大体見分けられるようになる。この頃まで来ると、もはやただの食わず嫌いだったと思う。

だから成長して大きくなってから一度、栗にチャレンジしたことがあった。食べられないことはないけど、自ら進んで食べるような感じでもないな、というのが初めてちゃんと向き合った「栗」の感想だった。
自分は甘党で、ケーキやスイーツと言われるものは基本的に何でも好きだけど、モンブランだけは人生で一度も選んだことが無かった。



数年前、私がアメリカに住んでいた頃、京都に新しくモンブランのお店ができたと母親から連絡があった。テレビでも取り上げられるような、結構有名なお店だった。なぜに私にモンブラン、と思ったが、母親は「○○したい」と強く言う方ではないし、家族とこんなに距離が離れたのは初めてで人恋しさもあって、一時帰国の折を見て二人で食べに行った。

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朝11時前頃に到着して整理券を貰ったのに、実際にお店に入れたのは夕方という人気ぶり。鴨川の河川敷で待つのも寒くなってきた11月のこと。
栗の木一本分贅沢に使っています、みたいなキャッチコピーが付くぐらい、今まで自分が人生で食べた栗を全部足したとて、到底追いつかない量の栗のスイーツ。確か選択肢は、栗を贅沢に使ったモンブランか、栗を贅沢に使ったパフェの二択で、見た目に栗の少ない方を選んで、「さすがに栗の量めっちゃ多いね」とか言った。

鴨川沿いのお店の雰囲気も良かったし、何より、今まで母親と二人で出掛けるのは、どこか照れくささもあってあまり経験がなかったので、結果的に良かったなと思ってアメリカに帰った。


ー月日が流れ、つい先日。

母親からまたモンブランの情報が送られてきた。今度は、地元にモンブランの新しいお店が出来たようだという連絡。

大人になるまでほぼ一度も口にできなかった栗。多くの人は知っていると思うけど、モンブランは栗でできている。

母親は決してワガママを言うタイプでは無いし、大人になった今では、正直もっとワガママを言ってくれてもいいのにな、とも思っている。だから、苦手な栗のスイーツのお誘い(2回目)が来るのが不思議で仕方なかった。どこかで記憶が180度回転して、私は栗がめちゃくちゃ好きな娘だったのかな、とまで真剣に思った。


聞き方によっては傷つけるかもしれないと思いながら、おそるおそる母親にLINE。以下時系列。


私「モンブラン好きなんやね。」

そのお店、是非一緒に行こう、お供しますよ、という心意気で送信。



母「私はそんなに^^;」

んんん?衝撃。理解できないってこんな感じ。そんなに好きじゃないって事も知らなかったけど、じゃあなしてモンブラン...。



私「私もそんなにだよ、モンブラン。笑」

一応遠慮気味に伝える。(おそらくあなたが一番知ってると思うけど)と心のなかでつぶやきながら、文字には起こさずハイ、送信。



母「確かにそやね(・∀・)」

あれ、知ってた。これが、とりわけモンブランが好きでもない母親と、栗が結構苦手な娘の会話です、みなさん。探偵ナイトスクープがもし来てくれたら、不思議要素強めな回になりそうな予感。



私「全然行こ、モンブラン食べたいんかと思った。」


ここまで来ると、私はもはやモンブランが好きな人の振る舞いをした。もうとりあえず店に行こう、話はそこからだ。そんな感じ。送信ボタン、えい。




母「新しいとこはどこでも行きたいの(^^)。」



ハハッ(ミッキー)。



なるほど。謎が解けた。


秋になると、きっとモンブランの新店舗が沢山できるのだ。

日本の暑い暑い夏が過ぎ、
少し涼しくなって母親の行動力が増した時、
つまり、ちょうど秋になるこのタイミングに、
世の中では「新しい」お店がたくさんできていて、
たまたま、
その気になったお店の2つがモンブランのお店だったと推測。「モンブラン」はその次の話。

物事ってやっぱり多面的だ。
一つのことでも、見える側面は人によって全然違うって、きっとこういうことかもしれない。




二人とも大してモンブランが好きな訳ではないけど、とりあえず、その新しいお店に誘って、この答え合わせがしたい。

そんなことを思ったのは、まだまだ暑い秋の日の夕方のこと。

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