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アメリカでレモネードを買いに行ったらコーラをもらった話

2020年4月、コロナで世界が大変な中、アメリカから帰国した。タイトルのレモネードを買いに行ったのは、ちょうど2年半を過ごしたアパートを出る前日の話。

まさかアメリカを去るのに、こんな終わり方になるとは思わなかった。

おそらく”これまで”の世の中だったら、職場の人と一緒に写真を撮ったりして、アメリカだから、きっとハグなんかもしたりして、Thank you! なんて言いながら、職場の最終日をワイワイ過ごしていたんだろうと思う。ところが実際は、誰もいないオフィスに見送りに来てくれた数名と、声が微妙に届くか届かないかの距離でバイバイする程度になった。ある意味忘れられないアメリカ勤務の最終日。

レモネード。カリフォルニアのレモネードは、日本のレモネードより多分美味しい。太陽がよく当たるせいかな。よく買っていたレモネードを最後に飲みたいなと、オフィスからの帰り道に思った。

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それがこのレモネード。よく買いに行って、よくお店に並んだ。いつもは人で賑わってる。カップを渡されて自分で注ぐスタイル。ここはレモネードだけじゃなく、サンドイッチも美味しいんだよな。そう思って車を走らせた。コロナの影響で、このお店が入っているショッピング街に人は居なくてゴーストタウン。それとは反対に、透き通った青い空。不思議な感じだった。

テイクアウトのみでお店は開いていた。いつもどおりサンドイッチと一緒に最後のレモネードを頼もうと店内へ。


浅はかだった。コロナの影響で、人が触れるものはことごとく使用禁止になっていた。言うまでもなく、自分で注ぐスタイルのレモネードもその対象。ジュースのタンクは空っぽだった。口がもうレモネードになっていて、それはもう、とても悲しかった。でもそのまま出るのも忍びなく、仕方なくサンドイッチだけを買って外に出た。

仕方ない。コロナの影響で、色々なことを「仕方ない」と思うことに慣れてしまっていた。もし今日が”これまで”の世の中だったら、何がなんでもアメリカ最後のレモネードを、とか言って、レモネードを売っているお店を探して、車で駆けずり回ってたんだろうなと思った。

何か飲み物がいると思ってウロウロしたけれど、お店はほとんど閉まっていた。またウロウロして、何軒か先のファストフード店が、開いているか開いていないかよくわからない状態で開いていた。入ってみたけど閑散としていて、コーラやスプライトといった、世界中どこでも飲めるような飲み物しかなくて、ちょっとがっかりした。

仕方なく瓶のコーラを指差して、2年半で少しだけできるようになった英語で、「それちょうだい」と伝えた。店員の彼は「これだけ?」と言ってきた。まぁそりゃそうか。「あぁ、うん。それだけ。」と返して、クレジットカードを差し出した。

すると彼は「んじゃコレ持っていきなよ。払っといてやるから。」と言ってコーラの瓶を渡してきた。ただでさえ人も居なくて売上もないのに、それは申し訳ないなと思って押し問答した。何回も確認したんだけど、いいから持ってけ持ってけ、という感じで陽気な奴だったので、Thank you! Thank you!って何回も言いながら、その場をあとにした。

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それがこのコーラ。よく見たらここもサンドイッチのお店だったんだ。Love & Sandwiches。今見ても憎いぐらいの透き通った青い空。

いつものレモネードは飲めなかったけど、立ち寄った店で店員さんからコーラを貰って、最後のレモネードの代わりに、突然最後のアメリカのコーラを飲むことになった。味は多分普通のコーラだったけど、なんとなく忘れられない日になった。


ふと携帯を見て、そういえば今日は自分の誕生日だったなと、思い返した。


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