見出し画像

朽ち果てることのない温室

藪枯らしに覆われた温室に、木漏れ日がひっそりと差し込みます。人けのない場所なのに、生命力を感じるのはそこが花卉を栽培していた温室だったからでしょうか。

ほだ木が転がり、大きい椎茸がいくつもありました。豊島の長老たちが「椎茸栽培をして出荷しよう!」とチャレンジした名残です。豊島事件で「よっしゃ、やらんかい」と長老をバックアップした兒島さんもまた革新的な挑戦者でした。狩猟を楽しみながら山々を歩き、ヒノキを植え、つる草からカゴを編み、木べらや菜箸を削り出し、イチゴ栽培農家を兼業し、地域の自治に尽力しました。その兒島さんが乗り気だった椎茸栽培。いつしか椎茸は自家消費となり、下草を駆られることなくその土地に同化していきました。

現代アートの作品を見て豊島を回ると、景観にハッとすることがあります。時間の経過とともに朽ち果てていくかと思いきや、藪枯らしに覆われ、錆びた鉄の塊が、地面と一体化しているのです。自然の造形に飲み込まれていく過程があるのです。

先の温室は藪枯らしに覆われていくのに、放っておかれた植物が自由奔放に伸びて、勢いがあります。円環する時間が成せる技です。

犬島 くらしの植物園は人の手が加わった観光園です。協調された植物たち。豊島の温室を見るたび、野趣とは案外こんなところにあるのかもしれないと思います。


豊島(てしま/瀬戸内海)の



画像1

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?