智将はつとめて敵に食む

孫子のことばと食文化


おとなりの国、中国は、美味しいものでいっぱいですが、それは「孫子」のせいかもしれません。
孫子は、ご存知のとおり、今から約2500年前、中国がまだたくさんの国に分かれていた春秋戦国時代の軍事戦略家で、呉(呉越同舟の呉)の王に重用された孫武というひとが、著した兵法書といわれています。この戦争のバイブルみたいな本に
「智将はつとめて敵に食(は)む」という言葉があるそうです。
ざっくり訳せば「兵士や軍馬には、敵国の兵糧や作物から食べさせるのじゃ」ということです。
兵糧は運ぶのもたいへんなので、現地調達せよ。ということですね。
爾来、多くの軍人が智将たらんとして、孫子の教えを守ったことでしょう。

いくさが運んだ食文化

彼らが気に入った食べ物は、敵国の捕虜や奴隷とともに持ち帰り、栽培させたり、調理させたり。いにしえの食文化交流は、当時のいくさに伴う多くの人の移動がもたらしたものが大きいといえましょう。

たとえば、いまわたしが、スーパーやコンビニで、何気なく手にする冷凍餃子。中国では餃子(ジャオズ)、韓国ではマントウと呼ばれ、水餃子が人気。韓国ではネパールでも「モモ」と呼ばれる同じ料理がよく食べられ、インドの「サモサ」を経て、スペインや南米では「エンパナーダ」という揚げ餃子になります。
パスタの一種として扱われるイタリアのラビオリも、もしかしたら親戚なのかな。どの地域が発祥かまったく知らないのですが、世界を席巻する餃子的食べ物に、どんな歴史があって、どうしてここにあるのか、非常に興味深いです。

餃子たべたい いくさは嫌い 

一方、現代の戦争は、自国の兵士には、軍事用ミールキットが空から支給され、敵国の田畑や農場ははじめに破壊するのだとか。それから一般住人も含め、町全体、国全体を封鎖し、兵糧攻めしながら空爆するやりかたですね。それがたとえば世界食糧需給にかかわる作物だと、地球全体が、参戦していない多くの国が、可視化できないながらも、じわじわと兵糧攻めの中にあるということで、事態は深刻です。
人類は苦しみながらも、良き方向へ進化する、それはわかる。同時代の他国の人たちにそれを負わせておいていいものだろうか。
いろんな国のおいしい食事を食べ、その国と交流することが、いくさではなく、平和の手立てに役立つといいなあ、と冷凍餃子を見つめて思うことでした。


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