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はやすぎる蓋棺録


番外編で早すぎる蓋棺録を。「月刊文藝春秋」は年2回芥川賞受賞作品掲載号を年2回購入しているが、巻末に「蓋棺録」(ガイカンロク)という連載がある。亡くなった有名人への追悼コラムなのだが、蓋棺録とは「人は棺の蓋をしてはじめてその値打ちが判る」ということなのだそうだ。

石川キンテツ氏

ここ数年、あまりSNSなどもチェックしていなかったこともあって出版界の知人二人の早すぎる同年代の死去に驚いた。まずは、石川キンテツ氏だ。小田原ドラゴン氏の投稿でその死を知った。


私の知る「石川くん」はまだライター集団・ストロウドックスの石川くんで、まだ私が若手編集者だったころ、かれこれ25年くらい前か。新宿歌舞伎町のとあるバーが金曜? 土曜?だけ出版関係者(赤木太陽さん?)のお店になるというので、通っていたときがありました。いわゆるサブカル系出版編集者、ライターさんが集まっていました。そのカウンターに入っていたのが石川くんで、同じストロウドックスのたしか松永くん(?)もカウンターに入っていた。メンバーは3人いて、もう一人のメンバーの小泉くんはそういうのには入らないクレバーなリーダータイプだった。

まだ「キンテツ」という名前がつく前で、当時まだ存続してた「近鉄バッファローズの選手にいそうな雰囲気」ということでキンテツと呼ばれ始める前後のころのこと。文化人の花見会で合流したりと、新宿や中野の飲み会の席でしか会っていない(仕事の話はしたことがない)。
 
その後、ストロウドッグスは月刊誌「投稿写真」(?)だけでなく、「週刊少年サンデー」などの巻末の連載などもはじまりライター業も絶好調に見えていた。当時の出版界でいえば漫画雑誌の巻末ページの連載なんてその後の成功は約束されていたようなものでしょう。一方で私はその後、経済系の編集者になっていくことになります。その土曜だけのバーで宝島社の編集者さんとも知り合いになり、私は『コワ~い不動産の話』シリーズを手掛けるようになる。

ここ10年は出版不況、とくに雑誌不況で、業界自体とすっかり縁が遠くなっていたがツイッターで彼を知ったのは、プロレスについての書き込みが出てきたことがきっかけだ。私も知らなかった晩年の長州力のWJプロレス! でも、プロフィールに以下のように書かれていたので気になっていたところだった。

近年は小田原ドラゴンさんの連載にキャラ化して登場するなどの活躍だったようだ。また、いつか接点があるのかと思っていた若手の40代後半、早すぎる逝去だった。

北村尚紀氏

北村さんはもともとは週刊金曜日の記者で、その後、扶桑社の週刊誌「SPA!」に移った編集者さん。ニュースサイトのハーバービジネスレビューの編集者もしていた。その時に私が担当したのは以下の記事。この記事はかなり読まれました。

北村さんはハーバービジネスレビューという経済メディアの担当編集者でありながらPDCAやOODA(ウーダ)について私が原稿を持ち込んでも、まったくぴんとこず、この記事がかなり読まれて、「なぜこんなに読まれるのか? 読まれる理由がわからない」と笑い話にしていた。もともと北村さんは社会派で私とは森達也さんの映画「A2」の上映会で東中野で名刺交換をしたのが最初。北村さんは三省堂出身で、私とは事務所近くの神保町交差点ですれちがったり、北村さんがやめたはずの週刊金曜日の編集部(当時)で遭遇したりした。当時の編集長のサンデー毎日出身の同性の北村肇さんも2019年に亡くなっている。

近年は、出版不況で紙媒体とニュースサイトの投稿に多忙だったようで、Facebookもストレスがたまった書き込みがあったのを見かけたことも(のちにその時期の投稿は削除されている)。また、ソーラーパネルのための森林伐採のひどさに、動物への虐殺だと怒りと苦しみを吐露していたことを記憶している。朴訥な語り口のいっぽうでストレートな正義感を併せ持っていた。2013年には結核で入院していたこともある。

志葉 玲 - とても悲しいお知らせ。... | Facebook

昨年2023年9月に亡くなっていたという、私のところにも知らせはあったかもしれないが気が付かなかった。今回、久しぶりに連絡を取ろうと近況を検索してはじめてその死を知った。52歳での肝硬変?のようである。雑誌不況での奮闘を、同年代の戦友としてご冥福をお祈りしたい。今頃は共通の知人である元出版社社長で一足先に2019年に亡くなられた那覇のOさんとあの世の抱瓶で一杯やっているのかもしれない。52歳、53歳は多くの方の体調を壊す時期でもあり、自戒せねばならない。

それにしても

かつてのように私も周りの人も組織に属していることが少なくなり、友人ともSNSでのゆるいつながりになっている。いざ逝去したとしても知りえないという状況が起こりやすくなっている。SNSでは本人たちはまだ生きているようにふるまっているし、まわりも気が付いていないかもしれない。デジタル時代の友人を送る方法を考えたいものだ。

追伸:研究の世界でお世話になった小泉和重先生も昨年2023年に急逝している。その話は別稿で追悼したい。





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