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いつも矛盾しているもの

 床反力というものがあって、理学療法士は歩行とか動作を観察し、分析し、異常のある所を見分けることを得意とするのだけれど、はじめぼくはこの床反力というものがあまりよくわからなかった。床というものに限定すると床反力となるのだけれど、そうではなくて地球には重力というものがあるから、それと同等に反対してくる反力がないと重力のままに人間は地球の奥底まで沈んでいってしまう。そうではなくて地上に有らしめるために重量と同等の反力が働いていることで地上に存在することができる。

 反力はあるものとして、常識的なものとして理解しておけばいい。これが反力ですよと推し量ることはできるだろうけど、その方向性も含めて、反力はあるものだと理解しておけばいい。反力は文字通り反対する力だから、作用する力と同じだけ反対してくる。そうしないと作用する力に負けてしまうからだ。

 最近になって、またこの反力というものがおもしろいなと思ったのは、人間の感情や行動にも反力というものがあって、反力は無意識的に作用している。何か行動することを決めてもできない。ダメダメだと思う感情や欲求に抗うことができない。こういったことは意識的に方向づけられたものに対しる無意識の反力が働いているからだ。行動が行き過ぎないように、感情に流され過ぎないように反力は無意識に働いている。反力が勝つと自分との約束が守れない、行動できない人になる。ということは、ぼくたちは何かをしようと決心したり、行動計画を立てている時点で、絶えず自己矛盾をしている。

 ある人のことを好きだと思った瞬間にブレーキがかかる。健康になりたいと思った日から夜更かしをしてしまう。ダイエットしようと決意した日から焼き肉を食べてしまう。そういった例には事欠かない。自分自身に対してもそうだし、他人に対しても同じだ。無意識の反力が行動を抑制することもあるし、素直に表現できなくもある。

 ただ反力が働いただけなのに自分自身を否定しなくてもいいし、あきらめなくてもいい。人が話すことなんてどうせ自己矛盾しているものなんだから、反力の先を観察したほうがわかり易かったりもする。


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