見出し画像

シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい(レビュー)

私の好きな、19世紀末のパリ、ベルエポック、アールヌーボーの時代。私の好きなミュシャや、サラ・ベルナール、ラリックが活躍した時代が舞台のフランス映画です。今でも人気のシラノドベルジュラックが上演されたメイキングのコメディ。

俳優さんは誰も知らなかったけど、エンドロールに歴代のシラノ役をやった俳優さんが出てきて、ジャン・マレーと、ジェラール・ドバルドューを辛うじて知ってた程度(笑)。
しかも、肝心のシラノのあらすじをよく知らない。大きな鼻とマントに剣を持つビジュアルだけのイメージ。フランス人なら詳しく知ってるのかも。

でも、知らなくても楽しめます。もちろん知ってたら、名セリフ、名シーンの数々がどう生まれたのか、というエピソードにワクワクするのでしょうね。

映画は、スランプに陥っていた詩人で劇作家のエドモンと、実は借金で困っている名優コクランを、サラベルナールが引き合わせるあたりから始まります。エドモンは勢いでまだ何もないのに、脚本の構想がある振りをする。親友のイケメン俳優のラブレターの代筆もしなければならず、お陰で変な三角関係になり、妻には疑われ、スポンサーは無理難題、女優はワガママ、名優の息子は大根。次から次へとトラブルや災難に見舞われますが、粋なカフェの主人に出会ったり、追い詰められたエドモンにインスピレーションを与えるミューズがいて、ギリギリ初日に間に合います。しかし、初日にもトラブル連続。

本当のエピソードと架空の話が入り交じっているとは思うけど、現実の世界からインスピレーションを得て見事な作品が出来上がるメイキングをテンポの良いコメディーに仕上げています。

また、ベルエポックのファッションが素晴らしい。衣装に小物に大道具。あれもこれも、じっくり見せて欲しいです。ムーラン・ルージュの賑わい、華やかさ。パリの街並み、娼婦の館も(笑)。あの時代に、世界で一番お洒落の最先端だったパリ。その最先端のサラベルナール。スクリーン片隅にミュシャのポスターが貼られるシーンがあったり、ラベルのボレロが良いところに使われ、ツボにはまります。ベルエポックに詳しい人なら、もっともっと、あれもこれもと、あるでしょう。素晴らしいあの時代のパリの再現です。

ストーリーは、見ているこちらも関係者は一員になったような気持ちになって、無事に上演されるか、果たして最後まで演じきれるか、ヤキモキ。飽きさせません。

エドモン役のトマ・ソリヴェレスが童顔で情けなく頼りなく見えたり、繊細な素敵な詩人に見えたり、適役でした。