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Lofi (ローファイ) なものを探す

今世紀初め頃に使っていた初期のデジカメ。最近は娘が好んで使っている。このカメラ、今もバリバリに写る。だけど容量1GBまでのSDカードしか読み書きできない。近頃の10代~20代は古いものが好きなようで、昔のデジカメも人気がある。その影響か、1GBのSDカードに相当の需要があるらしい。既に製造されてないのに需要があり過ぎて、簡単に入手できない。SDカードは最も廉価なゾーンとして32Gのカードが1000円未満でコンビニでも売られている。そんな昨今、1GBのSDカードはいくらで取引されているのか。ちらっとAmazonをみてみる。1GBカード、いくつか出品はされているから、欲しければ買えそうだけど、価格はと言うと、安いものでも1万円近く。128GBカードと同じくらいか、もっと高い。何ですか? この現象。そもそも、なぜ古いカメラが良いの?

娘に訊いてみたら、こんな説明だった。
今のカメラは色彩が鮮やか過ぎる。そして iPhoneはそっち方向に進化した。
それは〈iPhoneでできること〉なんだから〈iPhoneでいいじゃん〉ということになって、みんなカメラには〈iPhoneでできないこと〉を求めてる。 〈Lofiな写真〉が撮りたい、ってことで、ガラケーを使うひともいる。

なるほど。そういわれて YouTube で流れるミュージックビデオを観てみると、やたらボンヤリ系の風景映像とかが使われているような。
鮮やか過ぎる写真って、確かに、味わいがない。家電量販店の大型テレビ売り場の画面みたいなのって、テレビはすごいなと思うけど、別にそれだけだし、なんちゃらK映像で見るから感動するってものでも、ないな、確かに。もっと言うと、高解像度イメージには〈想像力を受容する隙間〉がない。なんかぼんやり、ふんわりした空気が漂わない。

私たちが子どもの頃、写真は人生のイベントや子どもの成長を記録するための、ちょっと特別なものだった。私たちの世代って、その感覚で成長して、カメラもテレビも高解像度路線でどんどん進化させてきた。一方で、いつでもどこでも何回でも写真が撮れる日常で育ってきた子どもたちが、写真に別のものを期待するのは、考えてみたら自然なことか。そのときに使うのが昔のガジェット。掘り起こせ昔のものたち。

今週、東京のどこかに、日本一高いビルが竣工したというニュースを見た。カメラの進化の方向と似てる。コロナがいったん落ち着いて外国人観光客が戻ってきている。Instagramのフォロワーが9千万人近いUK Popのシンガーで、ミレニアム世代のアイコンとも言われる Dua Lipa がまた日本に遊びに来てる、と若い人たちがSNSでつぶやいている。Dua Lipa が巡っているのは神保町の古書店街や下町の裏通りにある昭和レトロな風景のあるスポット。そういうものに価値を感じる若い世代が成長してきてマーケットを動かし始めている。古いものを捨てたり壊してしまっては取り返せない。台湾は古い建物を資源として慈しみ、リノベーションして活用し、次代に残そうと努力している。その価値を見出せずに歴史あるものをどんどん壊し、ただ高いだけのどこにでもあるような新しいビルを建てるとか、そういう私たち世代の愚挙というか「イケてなさ」が酷過ぎる。


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