『私をくいとめて』こじらせ系女子をのんが好演

独身女性心理を描くのが得意な大九明子監督のひとり言ばかり言っている「おひとり様」満喫で、他人と関わることが苦手になってしまった独身女性の苦悩と不器用な恋愛を描いた作品。

原作は綿矢りさ。主演はのん。不器用で生きづらさを抱え、繊細な感じがよく出ている。いわゆる「こじらせ系女子」である。優しい彼氏役の林遣都はいつもと同じ感じ。ひとり言のもう一人の自分の声Aに中村倫也。実際にイメージとしては、前野朋哉が浜辺に突然現れる。飛行機恐怖症の彼女が、大瀧詠一の「君は天然色」の歌に救われる場面、大瀧詠一好きなのでニンマリ。結婚してイタリアに行ってしまった親友に橋本愛。イタリアで楽しくやっているかと思えば、「ずっと孤独で不安だった」と突然泣き出し、誰もが心の不安を抱えていることを描く。大声でもう一人の私Aと会話する場面がこの映画の最大の特徴だが、その音量がひとり言の域を超えていて面白い。誰もが自問自答しながら日々過ごしているが、最近はこういう若い人たちが増えているような気がする。いつの時代でも、一人の時は自由で安心できるが、孤独で不安なものだ。そんな人との関係を取り方がますます不器用になっているような気もする。半径5メートルの世界に幸福を求め、その世界で安心している人が多いからか。「おひとり様」ブームの現代の女性が共感しやすい映画か。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?