細野晴臣ドキュメンタリー「NO SMOKING」

私が敬愛する細野晴臣のドキュメンタリー。これまでNHKなど特番で放送されたものを、細野晴臣のインタビューを軸に時系列をたどりながらデビュー50年を振り返ったもの。細野晴臣のお茶目なキャラクター、懐の深い飄々とした人間性が垣間見えて面白い。それぞれの時代に精一杯遊び尽くしたからこそ、時代を超えてもなお彼は愛され、彼の音楽が残る。

恵まれた音楽環境で育ち、フレッド・アステアに憧れ、ダンスやギャグを愛する父、タイタニック号の日本人唯一の生き残りの祖父、洋楽好きのモダンガールの母、ピアノ調律師の母方の祖父、パラマウント映画で働く叔母など、裕福でハイカラな家庭環境で育った少年時代。立教大学時代にデビューした「エイプリルフール」(細野晴臣、松本隆、柳田ヒロ、小坂忠、菊池英二)、大瀧詠一と出会い、松本隆、鈴木茂らと結成した日本のロック史に燦然と輝き続ける「はっぴいえんど」、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆らと作った「キャラメル・ママ」(のちのティン・パン・アレー)、狭山市のアメリカ村の自宅に音楽機材を持ち込みレコーディングした「HOSONO HOUSE」、ハリー細野として「トロピカル・ダンディ」「泰安洋行」「はらいそ」というトロピカル3部作も作った。ニューオリンズからハワイ、中国、沖縄、そして世界各地の民族音楽やアンビエント・ミュージックへと細野の音楽的興味は無限に拡がっていった。そこから高橋幸宏、坂本龍一とコンピューター音楽の「Y.M.O」を結成、大ブレイクへと繋がっていく。「Y.M.O」に飽きてくると、松田聖子や安田成美など歌謡曲への楽曲提供&プロデュースをはじめ、アニメ『銀河鉄道の夜』の映画音楽も素晴らしいクオリティだった。細野氏の音楽的才能は、縦横無尽に展開していく。まさに天才であり、細野チルドレンと言われるほど、多くの若き音楽家に影響を与えている。

その一人であると星野源に「あとはよろしく!」と語ったりしながら、自身は飄々と音楽を楽しみ続ける。ドキュメンタリーの中で楽屋裏などでひょうきんにステップを踏み、多くの人たちに愛される理由は、彼の才能だけではなく、遊び心を忘れない人間的な魅力にある。
その姿は、世界各国の人々を今でも熱狂させている。最近になってやっと「歌うのが楽しくなってきた」と、世界ツアーをしながらロカビリーやブギウギ、ラテン、ジャズ、ロックンロールのリズムに身体を乗せて、時代を超えたいい音楽をいつまでも楽しんでいる。

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