【海のピ】406文字
魚釣り
リールを巻いていると途中で突然重くなり
竿がカーブを描くことがある
深い海底で大物が
食いついたのかもしれない
期待しながら竿を思いっきり引くと
” ピ ” っと糸が張る
ああ残念
地球を釣ってしまったらしい
押しても引いても左右に動かしても
” ピ ” は ” ピ ” のまま
私は途方に暮れた
なにもなかったように波の音だけが響く
こんなとき
幼い頃の話になるが
父と兄が察して私から釣竿を取り上げた
それから大きく竿を引いて
力ずくでやるもんだから糸が切れてしまう
はははっと笑いながら
新しい針をつけてたっけな
今は一人だから自分で解決しないといけない
竿に負担がかからないように地面と平行にしてから
後ろへゆっくり下がる
『海のピ』との戦いだ
竿からキシキシと音がする
釣り糸が細くなり限界まで伸びる
もう少しで……
そう思ったときパツンと音がして糸が切れた
私は戦いに敗れた
はははっ
今にも父と兄の笑い声が聞こえてきそうだ
私は記憶のリールを巻いた
【海のピ】お題が面白過ぎですよ(笑)
お笑いに走りたかったけどノスタルジックになってしまった
次回はお笑いに挑戦してみたいです!