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笛注意報【毎週ショートショートnote】

担任の先生から笛注意報が出たと聞いて私は急いで図書室を出た。

村の北側にある深い谷に強風が吹くと自然音でヒューヒュウと音がする。笛の音のような。そのあと必ず天候が急変して冬の嵐が来る。そのような理由で笛注意報ができたらしい。

私は川沿いの細道を足早に歩いた。辺りは薄暗く人もいない。突然強風と共にピューっと笛の音がした。10分後、吹雪で前方が白くなった。私は風雪にあおられないよう低い姿勢で地面を見ながら歩いた。そろそろ家の近くに来たはずだと思って顔を上げると木製の橋がすぐ先に見えた。橋を渡れば家に着く。ホッとしたときそれは見えた。
橋の欄干に誰かが立っている。雪の中、着物に桜色のベールのような物をかぶり横笛を吹いていた。

「…だれ?」

その人は笛をやめて私を見た。白い肌、漆黒の瞳、息を呑むほど美しい容姿だった。数秒後、吹雪と共に消えた。私は祖父の言葉を思い出した。

「この村には源氏の末裔がいたんだよ」




※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


たらはかにさんの企画に参加させて頂きました😊今回はちょっと難しかったです😓