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夏の足音

逃げ出したかった2年目の春が終わった。
ジメジメと暑い日が続く、やけに雨が降る。
夏がもう近くまでやってきていることを感じた。


わたしはちっとも強くない。
声を上げたかった、
でも、喉が萎縮して、
出せる声は、引き攣った「大丈夫」だけだった。


羨ましい、
と思われるのかもしれない。
期待。
目に見えなくても、
視線で感じる、
言葉で感じる。

けどそれが、
私を縛り付けて、
無意識に自由を奪い去っていく。
待って、
気づいた時に追いかけても、
いつもスルリと消え去っていく。


羨ましい、
と思う日々。
暗闇を走る私には、
明るい光を見ることは到底なくて、
差し出される手もない。
誰か、
と光を、手を、探しても、
その行動に嫌気がさして、
また下を向いて走り続ける。


「最近どうなの?」
「まあまあ」
視線を逸らす。
話したって伝わらない、
私の頭を占める黒くて重たいアイツの存在なんて。
誰にも、伝わらない。

「けどまあ楽しそうでよかった」
「まあまあ」
無理やり口角を上げる。
それしかできなかった、
何も知らない、言えないあの人への、
いちばんの戦い方はそれだった。

どこに向かっているのか、
何を求めているのか、
自分でもわからない日々。

ずっと、
足踏みし続ける。
ずっと、ずっと、
何処へも行けずに。行かずに。



ただ、ただ、
時間だけが流れてく。
ほら、
また夏が。

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