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指導者に恵まれる

ラグビーを始めたばかりの中3の娘。

色々な方のアドバイスで、月に数回の活動の女子チームに参加しつつ、他の日は男子と混じってラグビースクールで練習という、かけもちスタイルをとっています。

どちらも指導者にとても恵まれていてビックリします。

女子ラグビーはまだまだ黎明期のようで、できる環境は本当にわずか。でも応援してくださる人の温かさは信じられないほど。

娘自身も「自分が何かやりたいと思って、こんなに応援してもらえることってある?」とその幸運さをかみしめています。緊急事態宣言も解除されてラグビー練習が本格的に始まった春休み。とても充実していたそうです。

親が見ていても、体型、走り方が変わってきました。まだ始めて間もないのですが、これまで大して運動をしてこなかった分、伸びしろたっぷり。やればやっただけ効果が出ることは本人にとっても、自己効力感につながっているようです。

本人も、学校以外に自分の居場所ができたことがとてもうれしいと言っています。

まだまともにみんなと一緒にラグビーをするレベルには至っていませんが、新しいことを知り、できなかったことができるようになるのは、とても楽しいそうです。そしてとにかくコーチたちが本当に優しくて素敵なのだそうです。

ラグビースクールのジャージ問題

色々体験行脚したのちに、入会したラグビースクール。少ないながらに中学生女子もいて、女性コーチもおり、女子の指導に慣れているということがお世話になる決め手となりました。

先日の土曜日のことです。新入生ラグビースクールのチームジャージの採寸をすることになっていました。コーチたちが集まって、色々考えてくださったそうです。コロナの影響で、ラグビースクールでの活動は残り1年もない状況。

色々備品を購入させることは、負担ではないかという気遣いと、一人だけジャージがない方がかわいそうという気遣い。

娘のために何がよいのかそれぞれのコーチが真剣に考えてくださっていました。

翌日はラグビースクールの入校式で、ジャージを着て参加、記念写真を撮ることになっていました。娘はジャージを持っていないので、普段の練習着で参加するつもりでいました。でも、なんと女性コーチがOGの娘さんのジャージを一式用意して、持たせてくださったのです。練習以外の時間にも娘のことにエネルギーを使ってくれている方々がいることに胸が熱くなりました。

女性コーチたちで、「似合う!」「かわいい!」など盛り上げ、監督やコーチも色々声をかけてくださったそうです。「コーチが本当にみんなやさしすぎる」と娘もとても感激していました。

軸となる練習環境への迷い

備品のことだけでなく、練習環境についても、それぞれのコーチが、娘に良かれと思う環境について真剣に考えてくださっています。

女子チームの活動の方は、ちょっとレベルの高い方のクラスで同世代と練習すべきか、下の世代の子達と練習すべきか迷っていました。当初から相談に乗ってくださっているコーチが「がんばって中2中3と一緒にやりましょう」と背中を押してくださいました。

娘は、県内の猛者たちが集まる環境に初心者が飛び込むことに、緊張で倒れそうになりながらも参加し始めました。

一方、緊急事態宣言の影響で、先に練習が始まっていたラグビースクールの方のコーチは、おそらく高いレベルでタフな女子が集まる環境にまだフィットするのは厳しいのではとの配慮から、こちらで面倒をみる覚悟をしてくださっていて、ラグビースクールの活動を優先していいよと声をかけてくださいました。

娘は揺れていました。

中学3年生で男子と練習するのはレベルもコミュニケーションも難しく、正直心が折れそうにはなるのですが、コーチが優しく、練習についていけない場合は、個別に指導をしてくださるので、大変居心地がよく、女子活動が怖くなってきていたようです。

女子チームの練習と、ラグビースクールの練習が重なった場合にどうするか、本人も迷い始めていました。

ジェンダーギャップとラグビー

さて、日頃からジェンダーギャップについて色々意識している娘。母である私のキャリアにジェンダーギャップを痛感して、ママはもうちょっと報われた方がいいとしきりに残念がってくれつつ、その甘さを反面教師にもしているようです。

地方の公立出身の私は、女子校というのは、おっとりしたお嬢様の世界かと思っていました。娘を入れてみて、むしろたくましい女性が育つ場であることがわかりました。

共学だった私の方が、知らず知らずのうちに女性の役割や、女性としてウケるさじ加減を忖度していた気がします。女子だからこれくらいにしとくかとか、男子にここは任せようとか、無意識に思っていたことに気づいて、衝撃を受けたことを覚えています。

娘は、両親の関係性を見ていて、色々思うことがあるようで、男女は一緒ではないこと、平等と公平の違いなど、考えてきたようでした。私自身も男女差を意識することなく成人してしまい、色々うっかりしていたことを反省し、娘には中高時代を女子だけで過ごすことの意義を考えてもらいたく、アメリカの女性のルース・ギンズバーグ最高裁判事の映画なども一緒に観に行ったりしていました。

そんな娘が、初心者であるだけでなく、女子であることでマイノリティとして申し訳なさそうに、ラグビーをしている姿を見るのは、正直複雑な思いでした。

新たな環境に適応するのは苦手とする娘。保育園の新年度は誰よりも泣いて手のかかる子でした。新たに女子チームに適応するエネルギーを生み出すしんどさから、ラグビースクールで男子に混ざるのはキツイけれど、このまま優しいコーチたちに別枠で指導してもらっている方がいいなと言い出しました。

常日頃、強い女子として生きる気満々の娘が、珍しいなと思って聞いていると、ハッとしたようです。

「まずい!『女子だからできない、できなくてもいい』って思っちゃってた!」

もちろん、ラグビースクールで指導してもらえることは、とてもありがたいけれど、公式戦に出ることはないのです。なんのために遠くまで中3というかけがえのない時間を使って通っているのか。強い仲間を応援しながら、初心者女子だしと優しくしてもらって、横でチョロチョロなんとなく混ざっているままでいいのか。

もちろん女子チームでも、小学生から続けてきて、さらに高校でも続けていきたい有能な子ばかりの集まりですし、そもそも、そんな簡単に試合に出られるレベルになるわけがありません。

今年は基礎固めの時期。ルールや基本をしっかり覚えてほしいと思いますが、この先を考えたら、女子のチームでがんばるべきです。

「これから世の中に出て、女子だからこんなくらいでいいよと大目に見てもらって、自分も甘んじていたら、ハッと気づいたら何も身についていなかったし経験も積めていなかったということは往々にしてあるよ…ママみたいに中途半端になってしまうよ。」と私も内心ヒリヒリしながらも伝えました。

ラグビースクールのコーチは、きっと女子ならではの厳しさをご存知の上で、こちらを優先してもいいと逃げ道を作ってくださっていたのでしょう。

まずは女子チームの活動を優先し、そちらにチャレンジしてみるという娘の希望を尊重してくださいました。

「本人の意思が優先。何かあればいつでも相談してほしい。」と。

そして女子チームの活動後には「大丈夫でしたか?練習が被る時は、その時その時で優先する方を決めましょう。」とメールをくださいました。

女子ラグビーをする子がレアとはいえ、こんなに大事に育てていただいて、親としても感激してしまいます。ラグビーを通じて出会う大人がみんな素晴らしすぎると、本人もこれまでにない経験に、ありがたすぎて、ビビりつつ、励みになっているようです。

娘はある夢があって、女子校に通っています。でもこのまま6年間、土日は家にこもって勉強しているよりも、もしその夢が叶わなくても、外の世界に触れて、素敵な大人や仲間に出会って豊かな時間を過ごしてほしいなと、親としては願っています。