SECONDTALE ep.9

翌日、フリスクが丘の上に着くと、既にデルタが待っていた。

「デルタさん、その格好...」

「ああ、これ?俺の勝負着だよ。」

昨日の寝巻きとは違い、今日の格好はまるでアレクサンドル・デュマ・ペールの『三銃士』のようだった。

「んじゃ、試練やるぞ。」

デルタは懐から一丁の銃を取り出すとフリスクに手渡した。

「お前はこれを使え。」

「銃?これを使って一体どんな試練を?」

「簡単さ。」

デルタも自分の銃を取り出した。銃には大きなトパーズが埋め込まれており、黄色い光を放っていた。

「お互いに銃を使って、先に相手に一撃ぶちこんだ方が勝ちだ。」

「え、ええ!?」

「試し撃ちならしていいぞ。」

デルタはあっけらかんと言う。フリスクは渡された銃をまじまじと眺めた。

まるで中世に使われていたような古くさい銃。しかし威力はなかなかにありそうだった。

「撃たないのか?なら俺から試し撃ちさせてもらうぞ。なにしろ久しぶりなんでな。」

そう言うとデルタはフリスクの横にある木に向かって銃を構えた。瞬間、空気が張り詰める。

(...さっきまでとは雰囲気が違う!)

「はぁ...この技使うのダルいんだけどな...」

『明鏡止水(ダイブ)』

デルタは目をかっと見開くと弾丸を放った。

『銀の弾丸(リベリオントリガー)』!!!

一瞬にしてフリスクの隣の木は破壊された。

「なっ...!!」

「ほら、言っただろ?俺の弟凄いんだってば。」

いつの間にか隣にいたペテンがポツリと呟いた。

「『明鏡止水(ダイブ)』は、極限まで集中力を高める能力。その代わり反動でしばらくはダメ人間みたいになっちまうのさ。だけど発動中はね...」

「っしゃあ試練やるぞ!!!久しぶりだな!!!腕がなるぜ!!!!」

「...ああなるんだ。」

さっきまでとは明らかに違うデルタを見てフリスクは驚愕した。

「あれが、デルタさんの本当の姿!?」

「まあそうなるな。」

「普段は能力の反動でああなってるってことか...」

「んじゃ、試練頑張ってね。」

ペテンは少し離れたところに移動すると木に寄りかかった。

「フリスクつったな!少しは楽しませてくれよ!!それじゃあ試練開始だぁ!!」

「えっ!?ちょっと準備がまだ!!」

「『銀の弾丸(リベリオントリガー)』」!!!!

「いきなりぃ!?」

物凄い速さで飛んでくる弾丸をなんとか避けながら銃を構えようとするが撃つ余裕がない。

(今のデルタさんとまともに撃ちあっても勝ち目はないなっ!!)

『決意(ディターミネイション)』!!

(あとはよろしくキャラ!!)

「ったく、重要な所は全部私任せかよっ!!」

フリスクの体に入ったキャラは、一旦デルタから離れるところで猛攻を逃れた。

「へっ、簡単だよな。この銃であいつに一発ぶちこめばいいんだろ?それじゃあさ!!」

キャラは銃口を向けた。


デルタではなく、ペテンに。


「!?」

「兄貴!危ない!!」

「こうすりゃあいいんだろ!!!!!」







乾いた銃声が響いた。



「おいデルタ!大丈夫か!?」

「大丈夫だよ兄貴...肩に一発食らっただけさ。」

「簡単だったね。この試練は。」

二人がキャラの方を向く。

「わざわざ狙う必要はない。狙っても当てられないのなら」

「撃ったところに来るよう仕向ければいいってわけか。」

「そうだよ。そして実際うまくいっ...

がっ!?」

突然キャラは声が出せなくなった。いや、身動き一つ取れなくなっていた。

「息が、出来ないっ!!」

「俺は納得しねえぞ。そんな汚ねえやり方。」

(あの仮面野郎の能力か!!)

ペテンが近づいてくる。仮面に隠れていてもわかるくらい怒りをあらわにしていた。

「なんならここで今。お前を殺してもいいんだぜ?」

「ぐっ...あっ...」

首がどんどん絞まっていく。

「兄貴!もうそのくらいにしとけ!!」

「...」

一気に力が緩まる。キャラはそのまま雪の上に倒れた。

「俺は試練に俺以外を狙ってはいけないってルールは設定してねえ...その穴をついた、こいつの勝ちだよ。」

「お前が言うなら、俺は何も言うまいさ。」

ペテンはもう一度キャラの方を向くとこう聞いた。

「お前は、誰だ?」

キャラは一瞬言葉に詰まったが、こう答えた。

「私は私。ただそれだけだ。」

「...そうか。」

ペテンはしばらく俯くと、顔を上げてこう言った。

「言っとくけど俺はお前を許してはいねえからよ。俺の所に来るまでせいぜいリタイアしないことだな。」

そう言うとペテンは一瞬にして視界から消えてしまった。後には雪の上の靴跡だけが残っていた。

「それじゃあ私はこれで出番も終わりかな。」

キャラはそう言うとフリスクの体から出ていった。残されたフリスクは雪の上に倒れたままだ。

「おい、お前大丈夫か...?」

「デルタさんこそ肩...」

「俺は大丈夫だから。さ、家に戻ろう。」

デルタは自分の背中にフリスクをおぶさると、家に帰っていった。

「試練合格おめでとう。フリスク。」

       (続く)






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