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新型コロナ治療薬に対する「特例承認」について

新型コロナウイルス感染症へのレムデシビルの「特例承認」手続き開始のニュースが入ってきました。
「早ければ1週間程度での承認を目指す。」 とのことです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200502/k10012415401000.html

新型コロナウイルス感染症は治療薬として承認されている薬剤がない中、現在多くの患者さんが苦しんでいます。現在いくつかの未承認の薬剤が「研究用」の名目で使用されている中、一刻をあらそう治療薬の医療現場への導入が重要ですので、早期の承認が求められます。(尚「未承認」とは発売されていない、新型コロナウイルス感染症治療を適応症として有していないことを示します。)

今回、医薬品の早期承認の仕組みについて纏めてみました。

医薬品の開発・承認(販売)のプロセスについて

通常医薬品は
① 基礎研究(薬物候補物質の同定:2-3年)
② 非臨床試験(動物実験による有効性・安全性の検討:3-5年)
③ 臨床試験(人での有効性・安全性の検討:「治験」とよばれ、第Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ相の3つのステップに分かれます。:3-7年) 
④ 申請→承認(1年弱かかります)
 以上のプロセスを踏みます。候補物質探索から承認まで15年前後かかります。

ステップ①から治療薬を製薬するのは非常に先の長い話であり、今苦しんでいる人に薬を届けることができません。そこで現在他の疾患で使用されている使用されている(開発されている)薬剤の中から実は新型コロナウイルス感染症に有効性があるものを見つける方が早く医療現場に届けることができます。そのような薬剤の臨床試験の一部省略による期間短縮、そして申請から承認のステップ(通常1年かかる)をできるだけ早く行うのが今回の「特例承認」になります。

尚、④の申請から承認までにかかる期間としては通常11.8ヶ月、医療上必要性の高い未承認・適応外薬で8.7ヶ月となっています。この期間をレムデシビルでは1週間程度に短縮したいと国は言っているようです。特に緊急性の高い疾患ですので一刻も早い承認が求められます。

現在治療薬候補となっているのが、アビガン、レムデシビル、オルベスコ他です。これらの候補薬は既に存在する薬剤であり更には既に海外を含めて有効性や安全性データも出てきているため、その評価(有効性・安全性はどうかという点)と申請・承認までのプロセスをいかに短期間で行うのかということになります。

薬機法における「特例承認」について


薬機法における「特例承認」について解説します。
「特例承認」については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法、薬機法)に下記のように要件が定められています。
① 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。
② その用途に関し、外国(医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で我が国と同等の水準にあると認められる医薬品の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列することが認められている医薬品であること。                 (薬機法第14条の3より抜粋)


通常医薬品承認は、有効性・安全性・品質の確保含めて念には念を入れて評価した上で行われますが、新型コロナウイルス感染症のような承認された治療薬がない状況で候補薬が有る場合、通常のプロセスを簡略化して承認を急ぎ医療現場に薬を届けるシステムが特例承認になります。この制度の特徴はすでに外国で承認されている(使用実績がある)薬剤ということが条件になります。


余談ですが、別途、先駆け審査優先制度というものもあり、こちらは日本発の薬剤で海外でも発売実績のないものを短期間で承認・販売するプロセスです。世界中の保健衛生の向上と日本の技術を早期に海外に普及させる目的があります。
その要件ですが、
① 治療薬の画期性    ② 対象疾患の重篤性    ③ 対象疾患に係る極めて高い有効性
④ 世界に先駆けて日本で早期開発発売する意思
以上のような要件を医薬品メーカーが持って申請する場合に適用されます。


以上、日本の医薬品承認の迅速化に関する制度として「特例承認」を中心について纏めてみました。
新型コロナウイルス感染症治療薬は慎重に時間をかけて承認していれば救える命も救えなくなりますので一刻も早い医療現場への適用が期待されます。まずレムデシビルが承認されるようですが、アビガンやオルベスコ等有効性が期待される薬剤もあり、実際各国でのデータも出てきているものの多々有ります。個人的には、有効性を示すデータも多い日本国産のアビガンも少なくともレムデシビルと同時に承認されるべきと思います。制度やデータ、ポジションの違い等はありますが、この非常事態に国が本気になればすぐに承認できると思われます。
いずれにしても、超緊急性が求められる疾患に対しては、迅速に有効性が期待できる薬剤がもれなく医療現場でスムースに使えるようになってほしいものです。

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