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新座市

『秋雨に 濡れて化かされ 狐様』
(新座市 武野神社)

台風の雨の間を見て、家を出る。保谷駅の北口から初めてバスに乗り、駅から一番遠い場所で降りて散歩した。
人気のない神社に入り込む。
聖なる空間に相応しいような澄んだ空気の中、次のチャンスを狙ってかぽつぽつと雨が垂れていた。
泥濘の先に、白狐の群れを見て、階段を登り近づこうと思うが、
たどり着いたとたん、雨が強くなり、後に戻れなくなりはしないか。
これが化かされたということかもしれない。

最後の力を振り絞り蝉が泣き叫ぶ中、泥のぬめりに足を取られながら、
姿なき蚊に足を刺された。
神社に願いを捧げる人の名前を見ながら、自然に生きるということは、
持ちつ持たれつであり、ちょっとした不愉快な痛みを伴うものだと思った。

そこで、少し化かされるぐらいの不思議があると、人生としたらちょうど良いのかもしれない。

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