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#67 ともだちをつくろう

公園の御砂場で一人、男の子が夢中で砂山を作り、トンネルを掘っている。周りには同じくらいのこどもたちはいない。夢中で製作しているのだろう。

彼は今、幸せなのかもしれない。

だが仮に、このお砂場に友人がいて一緒に砂山を作り、トンネルを両方向から掘っていたのなら、それもまた楽しいだろう。

ひとりで遊ぶことも、ふたりで遊ぶことも、どちらも一長一短がある。どちらが正しいわけでも間違いなわけでもない。芸術は時として孤独な作業だ。そのため、誰かと共有してできないこともある。だが逆にひとりではできないことも大勢で行うことで可能になることもある。

祭りや歴史的建造物などをみればわかるように、多数の個の集合体が生み出す成果や芸術はひとりでは叶わない。わたしたちは、自分一人で生きていけると考える。

しかし、実のところ何一つひとりで賄えるものなどない。生まれるときには病院で医師や看護師の力を借り、成長するために両親やコミニティーの力を借り、成人しても衣食住すべてにおいて、一定の見知らぬ他者の力を借りている。

別の見方をすれば、何気ない行動や発言・仕事にいたってもわたしたちは、誰かの力になっていることになる。これは素晴らしいことだ。どこかで孤独を感じている人も孤独ではなく、自分だけが有能だと思っている人物も人の手を借りずには生きられない。

そこで、よりよいカタチでの友達つくりを提案したい。

だが、幼少・学生時代ならまだしも、社会人になってから友人をつくることは意外と難しい。そこで1980年にベストセラーになった「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」から知恵を借りよう。


1.「やあ、君はポケモンが好きなの?僕も好きなんだよ」

あなたが遊びたいと思っているおもちゃで遊んでいる子がいる。その子のところに行って、自己紹介をしよう。誰でも自分と似ている子を友だちに選ぶものだ。

この原則は、大人の社会でも通用する。調査によれば、人は自分と似た名前の人に好感を持つという。自分のイニシャルと同じ字が入っているからという理由でブランドを好きになったりする。知り合いの誕生日は、自分の誕生日と近いほど記憶に残りやすい。

誰もが経験があると思うが、好きなことを共有できる喜びは絆を深める。有能な営業マンは顧客の好みを探り、さりげなく好感を持たれるように仕向けるという。

また、顧客個人に趣味や好きな物が少ない場合、その範囲を広げ奥様やこどもの好きな物をリサーチし、家族の中で顧客がより愛されるように仕向ける。

嫌いなものが同じ場合も絆は深まる。調査によると、不幸や不満を共有することは親近感を深める。古くから「敵の敵は友」ということわざがある。

まず周りを見渡し自分と似た人を探してみよう。


2 ほかの子の話をよく聴いて、励ます

幼稚園のほかの子たちと自分のどこかが似ているかを見つけたいなら、その子たちに質問をして話に耳を傾けよう。そうすればきっと、彼らと共通のものを見つけられるだろう。

じっくり話を聴くことは、人との絆を結ぶうえで大切なことだ。わたしたちの多くは話し上手であっても聴き上手ではない。そのため、聴き上手な人は、多くの人に必要とされやすく、その性格上友だちが多い。

神経科学者のダイアナ・タミルによれば、人間の脳は自分のことを話すことで、食べ物やお金よりも強く快楽中枢が刺激されるという。

つまり、自分のことばかり話すことは自分の快楽にはなるが、聴いている人にはあまり快楽にはならい。逆に、より多く相手に話をさせることにより、相手の快楽中枢を刺激し、相手から好感を得ることは可能だ。

ニューヨーク州立大学の心理学教授アーサー・アーロンの研究では、誰かにその人自身のことを尋ねると、一生の友情に匹敵する絆を、驚くほど短時間で結べることが証明された。

また、FBIの行動分析官は、初対面で相手と話すときに最も重要なこととして「自分の判断は差し挟まずに、相手の考えや意見を知ろうとすること」と述べている。

つまり、ともだちつくりに重要なのは自分の話をするスキルよりも、相手の話を引き出すスキルなのだ。いくら話が上手でも相手の話を引き出さなければ理解することは難しい。また、互いの共通点を見つける最適解は相手が好きなもの、または嫌いなものを知ることに尽きる。

ポーカーでいえば自分の手札を晒すことなく相手の手札を見るようなもので、結果的にこの方法が勝率が高くなるのだ。

共通の好きが見つかったのなら褒めることが大事だ。人はセックスやお金以上に誉め言葉を好むことが調査でも示されている。しかし、媚びへつらうような賛辞は人を不快にする。そのため、本当に心に浮かんだ好意的な言葉をいうことが大事だ。

実際に調査でも「有能だが不快な人」より「気の利かないやさしい人」と働きたい人が多いという。


3 ギバーになって、おやつを分け合う

一見ギバー(与える人)になると損をするように感じる人もいるだろう。しかし、多くを与えたものが多くを手にする仕組みが社会には存在する。

あくまでも善意な社会が前提になるが、つながっている誰かを幸せしようとすると、自分にも幸せが戻ってくる。しかもここにはタイムラグが存在し、より多くの幸せが戻ってくる。

打算的に行うことは良くないが、因果応報の法則は人間社会にはあり、隣人を愛せない人は隣人から愛されないように、友だちを愛せないものは友達から愛されないのである。

人が遺伝子の影響を受けるように、何の努力もなしに打ちとける人もいれば、努力なしには関係が上手くいかない人もいる。それでも、自分から相手を嫌うことを避ければ一定の距離を保ち互いに良い関係は築くことができる。

有能なバーテンダーは、人を頭ごなしに決めつけず、不快な行動や発言する客に寄り添い関係を良好に築くという。偏った考えやレッテル貼りは百害あって一利なしなのである。

先に述べた通り、共通の好きや嫌いを見つけ、相手を上手に褒め、多くを与え、力になることで良好な関係は築くことができる

言われてみれば簡単なことだと感じると思う。しかし、どれも細かなテクニックが必要で、忍耐も人間性も必要になる。わたしたちは、生きるうえで常にフィードバックを行っている。つまり、アウトプットしなければフィードバックはなく成果は得られない。

だから、インプットを増やすよりも人間活動はアウトプットを多くした方が結果が出やすいのだ。これは、常に流動的で初期値の異なる状況で選択をしなくてはならないためだ。

そのため、多くのアウトプットを行い、データを蓄積し、多様なケースに対応できるシステムが人間関係にも必要なのである。

つまり「習うより慣れろ」なのでしょう。


おわり


参考文献「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ ロバート・フルガム著」

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no.67 2021.5.21


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