自問自答_試着の旅 第16回「香りもアイデンティティ」

「コーディネートごとに香水を変えるのも良いんですよ」

スカーフの試着でルイヴィトンの店員さんに言われた。

いろんなスカーフを試着させてもらって、3つのアイテムで悩んでいると告げると、3つの違う香りが吹き付けられたムエットを渡された時のことだった。

こちらの柄をお召しになるなら、こちらのフレグランスはいかがですか」と、香水も含むトータルコーデを勧められたのは初めてのことで良く覚えている。

ムエットに鼻を近づけた瞬間、未知の感覚に鳥肌が立った。

それは良い香りだったからではなく、香りもコーディネートなんだと理解できたからである。
感銘を受けるってこういうことだと分かった。

私は自問自答ファッションを通して、内面と外見を出来るだけ一致させることを目指している。

それなら、私の内面に似合う匂いを纏っていた方が、嗅覚から受け取れる情報も利用できることになるじゃないか。

結局、そのスカーフも香水も購入には至らなかったが、絶対に制服が出来たら、それに合う香水も探そうと心に決めた。

そしてその数ヶ月後、自問自答ファッション2年目に突入して早々に、1コーデ分の制服を完成させることが出来、私の香水探しの旅がスタートすることになった。

元々香水はたまに嗅ぎに行っていたが、探す方針などは何もなかったので、単純に好きな香り、苦手な香りの方向性だけ掴んでいた。

この大好きな制服に合う香水、
私のコンセプトの人物が纏っていそうな香り、
私の内面に合う香り、
とはいえ纏うのが嫌にならない苦手でない香り………

と自問自答を続け、ドラッグストアからハイブランドのお店まで様々な香水を嗅いで回って理解したのは、私には苦手な香りが多すぎるということだった。

制服コンセプト私の内面、といった3つの要素に合う香水はおおよそ一致している。

・スパイシーさがある
・オーガニックな自然(森や海など)の匂いではない
・スッキリとしていて後味少なめ

好きな友人たちとの会合を途中で抜けるか、解散して、冬の夜明けにネオン街から煙草を吹かして帰路に着く。
寒さで鼻がツンとして、吐く息が煙なのか見分けがつかない寒さの中、肩をすくめて若干濡れた地面を歩くようなイメージ。

コンセプトである「ドラマティックで自由を愛する孤独の達人」は、そういうシーンが合う人物像だ。
作り上げた制服もそういうのが似合う。

私の内面としても、自分のペースで好きなだけ友人や自分との時間を楽しみ、自由という寂しさを愛したいと思っている。

こういう人物から花や果物の匂いがするのは違う気がするし、クリーンな石鹸やお茶の匂いがするのも違うように思う。
好きな香りはどちらかというとこういうタイプだが。

スパイスやレザー、甘さがあってもエキゾチックな感じが合うと考えていた。
でも、何度嗅いでもこういう匂いは苦手だった。

ただでさえ香水はこれまでも持っていたが使い切ったことがない。
つける習慣が身に付かなかったくらいには、あまり身近ではない存在だ。

苦手な匂いを積極的に纏う気にはならない。
他人より自分の方がその匂いを嗅ぐ機会が多いのだから。

香水は、あきやさんのいう3種の神器でいうと「アクセサリー」に類すると個人的に思う。
アイデンティティ」を象徴する要素だ。

アイデンティティとは、自身を「自分」であると感じる概念だ。

それに当てはまりそうな匂いが苦手となると、好みの香りから私らしいものを探すしかない。

改めて好きな匂いを嗅いでは構成要素や、バックになるストーリーを確認する試着が始まった。

ジャスミンの香りは好きだが、「官能」というワードがセットになることが多くて、ノンセク(ロマンティックアセクシャル)の私には合わない。

オレンジブロッサムの香りは好きだが、入っている香水は私にしては甘過ぎるように感じる。魔性の女に甘い罠にはかけられたいが、私自身は甘さで他人を惑わせたい訳ではない。

金木犀の香りは好きだが、香りの自己主張が強過ぎるし、私が10月生まれで、祖父にとって初孫だった私のために庭に金木犀の木を植えてくれたという思い出はあるものの、その木が花をつけたところに遭遇することは無かったので微妙だ。

石鹸の香りは好きだが、生活感が私のコンセプトとは微妙にすれ違っているように思う。先程のイメージの帰路についたものの、本当に家に帰ったのか分からない、どこかへ失踪したのではないかと一抹の不安を残す方が合っている。

桃やフィグの香りは好きだが、果物のジューシーな甘さは私のイメージとかけ離れている。何より食べ物のとして美味しそうな香りは、他人から期待されたくない私にとって相反する概念に思う。

柑橘系の香り、特にベルガモットが好きだが、弾けるような爽やかさは私が持ち合わせていないものだ。勢いで猪突猛進するタイプだが、その裏にはどちらかというと陰寄りの欲望と打算がある。
あと、皮の苦味に振った香りは好きではない。



……………

…………………困った😩

本当に困った。どうしよう。

他にどんな系統があるかと、奇抜な香りも探し求めたが、奇抜なものは純粋に好きになれず、結構困った。

とりあえず全種は嗅いだことないブランドも巡ってみるかと、開店凸を繰り返して出会ったのが、マルジェラのレプリカシリーズの「オン ア デート」だった。

夏の終わりの夕べ、プロバンスのブドウ畑に落ちる夕日を見下ろしながら2人だけの幻想的な時間を過ごすロマンチックなデートから着想を得た新しいスリルを感じる香りが特徴のオードトワレ“Replica On A Date”。太陽の光をたっぷりと浴び熟したブドウの爽やかで病みつきになる果実の香りと、繊細でありながらしっかりと感じられるワイルドローズの香りが魅力です。デートの思い出や恋に落ちた時の思い出など、極めてプライベートで大切な人生の瞬間を感じさせる香りとなります。

マルジェラ公式サイトより引用


まず香りを嗅いだ時に、ロゼ、白ワインを彷彿とさせるアルコール入りのブドウが印象深くて、「うっっっっわ、最高!!!!」と直感的に思った。

というのも、私はお酒の中で白ワインが好きだ。
それもフルーティで飲みやすい、初心者向きのワインが大好きだ。

全然、ワインの深い知識に興味はなく、好きなワインを見つければそればっかり飲んでいる。

そのワインに似た香りがするのがこの香水だった。

肌に乗せてもその点は変わらずだったが、残念なことに吹きつけた部分の皮膚が赤くなってしまい、生まれて初めてだったが恐らく肌に合わないということに気がつき断念。

しかも、ラストがパウダリーで私の好みとも途中から外れてしまうことが分かった。

しかし、ここでハッキリと分かる。

好き」でかつ、「私らしい」と私が思える匂い。

フルーティな白ワイン(シャンパンでも可)の匂いだ!!!!!!!!!!

先述の通りフルーティ、ジューシーは私のイメージからかけ離れてはいるが、私を知る人ならこういった白ワインを好きなことは知っているはずなので、好きなアルコールの匂いをさせていることに違和感は抱かないはず。

あきやさんが地盤を敷いたJJGの集合知を頼り、こいぬちゃんさんから教えていただいたのがこちら。
(こいぬちゃんさん、本当にありがとうございました😭)

SHOLAYEREDのノンアルコールパフューム「シャンパン」という香りだった。

店頭に嗅ぎに行ったところ、ドンピシャ好きなワインの匂いで震えた。

しかし、その時に勧められた同シリーズの「ペアマスカット」もとっても好きな匂いで、マスカットを感じるためめちゃくちゃアリだった。

とても決めきれず、この2つの香りに迷って最終的に3回嗅ぎに行くことになる。

シャンパンの方が華やかなブドウがパーーーっと広がる、裏表のない直感的な香りだ。軽さもあって季節を選ばず通年使える。

対するペアマスカットはお菓子のような甘さが比較的強めで春夏向きだ。初来店の時はこちらの方が好きな匂いかもしれないと思ったが、何かにとても似ている匂いだと思った。

自分では「何か」に辿り着けず、帰ってきて母にムエットを嗅がせたところ「良いホテルを謳った値段の柔軟剤の匂い」だと言われ、とても腑に落ちた。

好きな匂いのはずなのに決めきれなかったのは、恐らく石鹸の匂いで引っかかっていた「生活感」を覚えていたからだろう。

コンセプト「孤独の達人」は自分の好きなワインの香りを纏っている方が似合う。

そして、女友達と一生楽しく過ごしてやろうという気概を持って、今後の人生を歩もうとしているのだから、人生楽しそうに感じられる人に思われるのは、どちらかというとぱーっと華やかさを感じる方が良い。


ということで「シャンパン」を購入しました。

ルームスプレーや服にも使えるとのことで、ボディースプレーの方も購入済み✌️

制服だけでは孤独の要素が強かったものの、そこに白ワインで楽しそうにしている感じが加わって制服を『完成』をさせることが出来ました〜〜〜〜🥳

好きな香りというだけで妥協して探していたら今までの二の舞になっていたとしか思えないので、やってて良かった自問自答式!

香りが飛びやすいので、お手洗いのたびにシュッシュできる楽しさよ。最高✌️✌️✌️

1アイテムずつお迎えする時も嬉しさ爆発💥って感じだったのに、制服完成してからの方が嬉しいかもしれない。世界がぐっと広がって明るくなった感じ。

このやっと完成した制服を、数年かけて愛していきたいと思います!!!!!!!!

大事に味わうぞ〜〜〜〜!!!!!!!!!!