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教科書まとめから理解と考察を進める:001_Essential細胞生物学(第2章)

教科書を読み進め,手持ちの知識を組み合わせて考察してみよう!という動機の企画です.題材はEssential細胞生物学です.

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1.内容のピックアップ

ー細胞は何からできている?

第2章は「細胞の化学成分」の題で,「細胞が何からできているか?」にミクロな視点から順に答えていく章になっています.最初に構成要素として原子・分子に触れた後,原子が集まる仕組み=結合の種類について,共有結合・イオン結合・水素結合の3つを取り上げます.化学の視点から考えると,細胞内は①液体で②水が多く含まれるという2点が特徴的です.この環境が,至るところで水素結合ができては消え,イオン結合が解けてイオンが単独で漂うという真空中では見られない状態を作り出します.次に,細胞で使われる分子の構成単位が4つ示されます.それは脂肪酸アミノ酸ヌクレオチドです.それぞれに特有の分子構造がありますが,重要な点はそれぞれ数珠つなぎに分子を長くしていくことができ,高分子と呼ばれるより大きな分子を作ることができる点です.高分子化することで糖→多糖,脂肪酸→脂肪,アミノ酸→たんぱく質,ヌクレオチド→RNAと呼ばれるようになり,よく耳にする細胞内の部材になります.巨大分子は熱を持っていない状態では折りたたまれて特有の形状になることが多く,立体的な形状が特定の分子との反応を選択的に起こすことが可能になります.

2.興味を持ったポイント

・細胞の活動を成立させる化学反応は,液相だから成立している
気相の反応では第3者の分子が周りにいないので,分子同士の結合の組み換えをどうやって行うかを考えることが多いです.しかし液相では他の分子が周りに豊富にある中で反応が起きるため,気相とは別の反応機構が成立している点は個人的には興味深かったです.

・ヌクレオチドの機能の多さ
ヌクレオチドは今回初めて耳にした単語でした.DNAのGCATの記号をみても何のことだ!と思っていた部分がようやく氷解しました.

・高分子同士の反応は,立体的な構造で選択性を出す
「複数あるものの内から選択的に反応させる」というのは半導体製造の界隈でひとつのトピックになっており,興味深い部分でした.これに関しては考察の部分で後述したいと思います.

・共有結合以外の結合の重要性
特に電気的な相互作用・結合が重要で,分子内・分子間の極性が細胞内の特徴的な活動に効いているという点は興味深いと思いました.

3.考察

近年半導体製造の分野で重要な課題のひとつとして,「微細化を推し進めるために,新しいプロセスを確立する」というものがあります.CPU・メモリなど一般に半導体と呼ばれているものは「小さくすればするほど安く・高性能になっていく(=トレードオフがない!)」という指針が示されて以降,50年以上の長きにわたり小さくする=微細化の一途を辿っています.最近では10nmプロセスノードを用いた半導体デバイスがスマートフォンやPCなどの一般的なハードウェアに搭載されるようになってきています.
微細化のトレンドは,製造プロセスの観点から見ると「より位置ずれのないプロセス」というニーズとなっています.この最たるものとして「反応させたい箇所にだけ反応させてデバイスを形成する」というプロセスが提案されつつあります(Ex. Area Selective Deposition,ASD).
ASDは2018年段階でまだ決定的な手法が世に発表されていない状態で,ここ数年で重要な技術を各社・研究機関がこぞって発表するのではないかと思われます.その中で有機‐無機の複合体を活用した薄膜形成プロセスや液相プロセスは有力なアプローチのひとつのように思えます.

4.雑感

第2章は化学をベースにした話となっており,私にとっては比較的理解が進めやすい章でした.「DNAのGCAT」の意味がようやく分かり,少しすっきりできました.そして個別がどう反応するかというミクロな視点に加えて,それぞれがどういう相性で反応するかという情報的な視点の方も重要になってくると思われます.

(May 6, 2018)

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