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教科書まとめから理解と考察を進める:001_Essential細胞生物学(第1章)

教科書を読み進め,手持ちの知識を組み合わせて考察してみよう!という動機の企画です.題材はEssential細胞生物学です.

書き手概要と目的←本記事→第2章

0.この教科書を選んだ背景

最近,ニュースなど全ての人に広く届ける趣旨の情報発信で生物学系の研究成果を取り上げているのを多く見かけました.逆に言えば,(私がよく興味を持つ)エレクトロニクスの研究はここまで見かけないな...とも不意に感じました.この所感について簡単に調べたところ,2009年から2014年の間で日本の論文数増加を担ったのは臨床医学の分野がほとんどを占めるようです[参考:科学研究のベンチマーキング 2017].一方で,私は生物学系の学習が中学以来進展がなく,ニュースの基本的な用語も研究分野の盛り上がりがどこに焦点があるのかもあまり解っていない状態です.そこで,ほとんどゼロから生物学を学んでみようと思い立ったのが今回の教科書選びの動機となりました.

1.内容のピックアップ

第1章は「細胞:生命の基本単位」の題で,細胞の構成と機能の基本的な部分の解説がなされています.まず「生きているもの=生体」の定義は,細胞から成り立っていることだと述べます.生体をつくる細胞には多様な大きさ・形が見られる一方で,かなりの共通する部分があることに触れます.最たる例として細胞の増殖機構を挙げ,「全ての遺伝情報をDNAに記載し,RNAがDNAから都度適切な情報部位を読み出し,タンパク質を生成するというシステム(セントラルドグマ)は全ての生体に共通である」と示されます.驚くほどの細胞の共通性から,現存する細胞は全て同じ祖先細胞から進化したものと考えられます.このことから,細胞に関する実験はよく酵母・ハエ・マウスなどのモデル生物に対して行われ,ヒトも含めた全ての生物に対する影響を類推します.細胞生物学の進展の歴史にも触れられており,顕微鏡の発展と切り離すことができないと述べられています.最後に生体それぞれのゲノム数を比較しており,ヒトのゲノムの遺伝子数は30,000個ほどであると記されています.

2.興味を持ったポイント

・生体=細胞とシンプルに定義できるってすごい
生物の授業でやったことかもしれませんが,この事実は昂るものがあると思いました.各論から共通項を見つけるのが科学の醍醐味のひとつと思っているのですが,実は生物って細胞単位でみると共通性の塊だったという.

・細胞内の分業制の話
途中細胞内で分業されているという話が出てきますが,その分かれ方が機能別に分かれているというものでプログラミング等で出てくるオブジェクト指向の仕組みを想起しました.I/Oと機能が外に向けて明らかであれば,中身の部分は融合しなくてもシステムが組めるし,その方がより大きなシステムになり得るということの示唆を感じました.

・観察技術の進展との関係性
途中に顕微鏡の発展と細胞生物学の発展の関係性と歴史について述べられていますが,「道具が発展すると,学問が発展する」というのはこれまでの歴史で何度も起きている事象で,これからも起きるのではないかと思われます.

・ゲノムが持つデータ量の少なさ
ヒトのゲノムが持つ情報はそもそもデジタルで,単純に数え上げれば700 MB程度とのことです.ここから多様性が生まれる不思議さと,数値的に解ける可能性を感じる数字だと思いました.

3.考察

・道具の発展と学問へ影響を考えてみる
道具の発展にはスペックの向上と民主化のふたつがあると捉えています.スペックの向上に関しては,加速器や望遠鏡など個人ではあまり自由に使えないレベルの投資が必要になっている一方で,民主化に関してはメイカーズムーブメントの流れを汲んで急速に進んでいるのではないかと感じます.メイカーズムーブメントの特徴は,導入が比較的安価であることとオープンソースに基づく拡張性にあると考えています.ハードウェアを含むプロジェクトがGitHubなどで立ち上がりつつあるようなのですが,今後オープンソースベースの実験装置・実験装置の改造をサクッとオープンソースでといった中から新しい知見が生まれそうな気がしました.

4.雑感

第1章は概論だったので,あまり読解に詰まることなく読み進められました.専門用語はすぐ頭からこぼれていってしまいましたが..細胞の再生産プロセスは誤り率がどれくらいで,その原因はどこにあるのか(それは工業プロセスに比べてどの程度なのか)等,細胞の持つスペックが気になってきました.2章からは本編に入りそうなので,読み進める中で理解が深まればよいなと思います.

(May 2, 2018)

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