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【読書メモ】「下流の宴」(林真理子さん)

「下流の宴」

ざっくり概要

医者の家系であり、有名大学を出て企業勤めをしている旦那がいる主婦が主人公。自分たちは「やや上流ランク」に所属しており、それより「下」の生活を送る人々とは接点はない、あっても一時的なもので、永続する関係ではない、という考え方の持ち主。ところが、有名中高一貫校に進学した息子が高校を中退し、フリーターとなり、主人公の目線でいうところの「接点がない世界」に息子が入ってしまった。それをなんとか抜けさせてあげたい。そういった状況から物語がスタートする。

感想

読めば読むほど、タイトルの「下流」という言葉がどんどん意味をもち、沈み込んでいくような感覚を味わった。400ページほどある結構分厚い小説だが、一気に読んでしまった。(3、4時間ほど)

社会階層によって、同じ地域に住み同じ言語を話していても、交わることのないグループ同士、というのは存在すると思う。それを、努力することで所属する階層を変えることが出来るという希望と、「何も新しいことはせずに現状維持をしている」によって相対的に下の階層に行くという悲しみが描かれている、そんな印象を受けた。

階層の上下関係は、この主人公のようにはっきりと上下の区別をつけるかどうかは、人それぞれ意見が分かれるとは思う。階層が分かれていて、基本的には流動性が低く、パラレルワールドのようにすぐそばに存在するけど行き来が出来ない、という考え方は非常に印象的。

特に、登場人物の一人が努力を積み上げる過程で、サポートをしてくれる人がたくさん集まり、本人の姿勢も変わっていくという描写と、別の登場人物が「何も新しいことはせずに現状維持をしている」ことにより、歳を重ねるにつれ相対的に本人の価値がどんどんと下がっていくように描かれている部分が、夢中になって読んでしまった。

また、まるで一発逆転を果たしたかのような登場人物が、それなりの立場になってしまう出来事も印象的。本人の持っている「器」以上のものを受け取ることは出来ないのだなぁと、改めて。


印象に強く残ったセリフ

「もっと楽しくうまくやっていけるかもしれないじゃん。そっちの先ってさ、私たち一度も見たことがないよ。だったらさ、一生に一度くらいは、頑張ってあっちの方に行ってもいいかもしれないじゃん。」

→今の自分にはけっこう響いた。自分の知らない世界を、見てみたいなと改めて思った。


「人のやること見て、励ますなんて、マラソンの沿道で旗ふってるだけの人だよ。自分で走らなきゃ、何の価値もない。」

→こちらもとても響いた。自分は、ちゃんと走っているか。それとも、沿道どころかネットニュースで見ているだけの観客か。


自分へのメモ

無意識のうちに、自分も「何もしない現状維持」を選んでいる部分はあるなと思い焦った。少しでもいいから、何か行動をして前進をしなくては。それが「現状維持」の最低限。そして進化したければ、それ相応の対価を支払う義務があるな、と

また、自分が望むものを手に入れたとして、それを維持できる「器」が自分にあるか。突発的にチャンスでも何でも、たまたま手に入れることはあるだろうけど、その後にそれを維持できる、許容量の大きな「器」であるべく、常に切磋琢磨を正しい方向ですることが大事だな、と改めて感じた。


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