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【書評】産まなくても、産めなくても(甘糟りり子)

小説「産まなくても、産めなくても」(甘糟りり子)


作品について

出産、妊活、不妊治療にまつわる短編小説7本からなる作品。
7本目「マタニティ・コントロール」のみ、医療技術が発達した近未来が舞台となっているが、
その他6本は、現代の日本が舞台。

仕事中心で生きていた女性が、「卵子凍結」を行うお話。
生理が止まるほどのアスリートが結婚を申し込まれ、子供を持つことについて考えるお話。
妊活中に知り合い、仲良くなる女友達のお話。
「男性不妊」に向き合う年の差婚夫婦のお話。
「女性に優しい職場」を作ろうとする、子供に関心のない女性社長とその社員のお話。
度重なる流産の末、「特別養子縁組」の選択肢を考え始める夫婦と、望まない妊娠をする女性のお話。
医療を含め、あらゆる技術が進化した未来の日本での「妊娠」のお話。


感想

どのお話も、主人公の方々の生涯の、一部分だけが切り取られていて
「この後、どうなったのだろう」とか、
「これが自分だったら、どう選ぶだろう」とか、
「これが身近な人に起きたら、自分はどうするだろう」と、
色々と考えさせられる作品でした。

現代が舞台の作品は、 もちろん小説なのでフィクションではあるものの、
「誰かの実話」が組み合わさったお話なんだろうな、と。
自分のすぐ側で、こういった状況と向き合っていて、それを声に出せずに抱え込んでいる人は大勢いるのかもしれない、と思いました。

あくまで小説の描写ではありますが、
医師が「卵巣は最も老化が早い臓器」という発言があったのが印象的。

また、妊活中に判断を迫られた主人公が、
お友達に「どっちにしても、それがあなたの最高の選択よ」と言われていたのも
深く印象に残りました。

妊活に限らず、人生のあらゆる局面で、こういう考え方が出来る人間でありたい。

近くで不妊治療をしている友人もいるので、普段以上に「自分ごと」として読んだ小説でした。短編小説が7本。サクサク読める文体ながらも、自分に問いかけ続ける作品でした。


行動目標

ビジネス書のみならず、こういった小説も、もっと読んでいきたい。

解説をされていた作家のはあちゅうさんが、
「小説はビジネス書と違って、答えを教えてくれる読み物ではない」
が、とてもしっくり来ました。

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