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読書ログ「がらくた」江國香織

江國香織の小説を読むのは1冊目。知人から、どういう話を書くのかを聞いて、とても読みたくなったので、何冊か気になるものを買って置いてある。

この小説を読んで良かった。でも、読み終わった今、少し腹が立っている。なんで腹が立っているのが、書き出してみる。イライラが移らないように注意してもらえたら。

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登場人物の気持ち悪いところ

メインで登場するのは、4人。サブも入れて印象に残る女性は4人出てくるが、私が気持ち悪いと薄っすら引く部分がそれぞれあった。理解できる部分もそれぞれあったけれど。

柊子の夫、原を取り囲んで、最終的には柊子含め、4人の女性が原と関係を持っている事が書かれており、それぞれ、自分以外の女と関係を持っている事を知った上で、夫妻との交友関係が成り立っている。

そもそも柊子という妻いる。3人の女はそれをもちろん知っているし、原も柊子に愛人がいる事を公開しているし、柊子と原と愛人で仲良く飲みに行ったりもしている。そこにギスギスや、取り繕いはないけれど、それも気持ち悪い。素直な嫌だと言う気持ちを麻痺させて、自分の求める物(原といる事で得られるメリット、快楽や充実)を優先させてる感じ。それは、器用でお互いに魅力ある、一定以上の人達にしか出来ない事だけれど。

気持ち悪い大人の中で唯一、高校生のミミ。高校生と行っても、父と二人で海外旅行に行って一人で、浜辺でビキニでパラソル立ててくつろぐような、高校では孤高で、一人で教室の後ろのロッカーの上でサンドイッチを食べるような、クラスの子が誰一人見ていない洋画の日本語訳のニュアンスを評論するような、ずっとイヤホンをして洋楽を聴いているような子。

ミミの母親は離婚しており、恋人がいる時は家事をしっかり隅々までこなし、恋人がいない時は萎て「クタクタ」だけが残る。カフェで、母が口をつけたコップに紅がついたのをみて、ミミは母が柊子のように綺麗ではない事に静かに嫌気が差す。

原の妻、柊子。美術に関する翻訳の仕事をしている。原が他の女と関係を持つのは、泣くほど嫌なのに、原の好きな自分はそうではないからと、振る舞う。他の男と寝たり、旅行をして物理的に距離を取ろうとするが、原はそれを優しく微笑んで「ぜひ」と気にしない。結局は、距離をとる事で余計に夫を恋しく思う。はまってる人。でも、「きっと後悔はしてないわ。この悲しみも含めて愛してるから」と言うと思う。私がその場にいたのなら、本人が幸せならそれでいいわ、何を行っても聞かないだろうしと諦める。


浮気をお互いに許す夫婦

原と柊子夫妻の関係は、不安定に見えて安定していて、夫妻が誰かと食事をする際は、必ず机の下で柊子の膝に原の手が置かれる。多分それは、食事の相手に見られても良いもので、食事の相手が例え愛人でも同じ。愛人も手が置かれている事を知っていると思う。他人の前で、お互いの愛情表現を恥ずかし気なく、自然にするのが、唯一原が、柊子にだけしている事な気がする。それは、原が柊子のために柊子の前でしている愛人への牽制と、それでも原と関係をもちたいと言う女を選別する原にとってもメリットのある行為に思えた。


大人になるとジャムを作りがち

ジャムを作るのが好きな柊子。原と3人で食事中、ミミにも手作りのミラベルのジャムをプレゼントする。

原:「一年じゅう、何からのジャムがある。まあ、市販品よりうまいからいいんだけど、どういうんだろうね、あれは」

柊子:「とっておけるもの」「果物は、ほっておけば痛んだり腐ったりするでしょう?でもジャムにすればとっておける。味も香りも濃くなるし。色も濃くなってきれいだしね」

ミミ:私は、果物はは生のままの方が好きだ。そう思ったけれど、言わずにおいた。

もしかしたら、柊子もミミくらいの時は、生のままの果物が好きだったのかもしれないなと思った。私も、この話で言えば柊子派。歳をとると、新鮮で変化の早いものより、安定して好きな時に便利な方が好きになるのはなんでだろう。上京する前は、どちらかと言えばミミ派だったかもしれない。


原の悪食に腹がたつ

ミミは、後半原と二人で会うようになり、楽しく二人でデートをしていた途中、入った店に柊子が待っていたのを見て、拗ねる。

「馬鹿にされた気持ちがするわ」

原が、柊子のために柊子の前でしている愛人への牽制を感じ取って、機嫌を悪くし、柊子に対しての返答も素っ気なくなる。


ミミと原は、最後ホテルで関係をもつ。事後。

原:「退屈したら、電話をくれればいい」

ミミ:「かけると思う?」「絶対かけない」「柊子さんとはちがうもの」


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柊子とミミの出会いの章。柊子と母の桐子。ミミとパパ。お互いに海外のリゾートで旅行に来ており、柊子はビーチでくつろぐミミにどうしてか目がいってしまう。

桐子:「嫉妬でしょうよ。それは」

柊子:「嫉妬?だってまだ子供じゃないの、ばかばかしい」

桐子:「だからこそでしょ。子供と大人の中間で、あんたが失ったものと手に入れたものを両方持っていて。いましかないっていう種類の生命力があるから」

最後、ミミが原に抱かれた後、「絶対かけない」「柊子さんとはちがうもの」と言ったシーン。とてもスカッとした。

ミミは、柊子の分身的存在で、分岐だったように思う。きっとミミは、柊子のように原の手中に収まらない。この小説に出て来た気持ち悪い大人のようにはならない。夫の帰りを、ラップしたご飯の前で待つような女にもならない。

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