15時半
これほどのことは、この世にはないと思った。
たくさん一緒にいた。
短い期間に詰め込むように。
ふたりで楽しくいるとき、全て信じてた。
間違っているなんて全く思わなかった。私たちだけが合っていた。
この時間はよくいっしょにお買いものに行ってたなあ。
知らない人ばかりの東京で、私たちはお互いだけを頼りにしていた。
手をつないで歩いた。あたためるためではなかった。
外に舞う、知らない人たちのほこりが私たちを隠してくれた。
逃げたかった。あなたといっしょに。
白い靄でかすんだ空気はお風呂場にいるようで、声が響く。
「小さい声でしゃべりたい」っていうのはそういうことだよね。
冬の15時半は陽が傾きはじめる。
朝から何をするでもなく部屋でただふたりで過ごした。
歌ったり、クイズをやったり、寝たり、メールを返したりして過ごした。
そろそろ動くか~という感じで着替えはじめて、「それだと寒くない?」と言ったりした。今日のお夕飯を作るための、幸せなお買いもの。
いつもちょうどぴったり、2人分のごはんを用意した。