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BUMP OF CHICKENを超久しぶりに聴き返すやつ(『aurora arc』だけ初聴き)


誤字脱字を一部修正しました。

てにをは全般

『THE LIVING DEAD』の1.Openingの項
修正前:key=A
修正後:key=E
コード進行


はじめに


結束バンドの『結束バンド』を聴いて以来、いわゆる「邦ロック」(諸悪の根源、規範なき規範、忍び寄るイデオロギー) を改めて聴こうという気運が高まりました (とか言ってカナダのバンドにうつつを抜かしているんですが)。

そこで差し当たってまず己のルーツ、スタンスを確かめないと…と思い立って、今はもうとんと聴かなくなった、しかし確実に俺の音楽の趣味に根を張っている、「邦ロック」におけるドグマの1つ足るあのバンド…。

BUMP OF CHIKENを全部聴き返そう!
そんでもって改めてここで感想をぶちまけよう!!
というやつです。


見出しのヒデちゃんおもっくそ被っててごめん…(全員きれいに収まった画がなかった…)。

注意
文章下手&横道に逸れた話ばっかりするんで、めっちゃ長文になります (3.7万字ほどあります)。ので、全部きっちり読みたいという奇特な方は休み休みお読みください。



俺とBUMPと


ちょっとそのまえに俺とBUMPの思い出話させてくれや (長いので飛ばしていい)。

BUMP OF CHICKENってすごいバンドですよね。
もうなんだかんだ27年続いてて (メンバーの脱退や入れ替えもなく)、それでいまだに新しいファンを獲得していってて、多分ファン層の新陳代謝が1番活発なバンドなんじゃないでしょうか。

彼らが活動を開始した当初からリアルタイムに青春を送った世代はいま30代後半くらいか、それこそ藤くんらと同い年とは思うんですが、それよりもっと下の世代からもめちゃくちゃでかい支持を受けてますよね。

なんか学校の発表会かなんかで「この曲は僕らが生まれる前に作られました」つって、『天体観測』が歌われたっていう恐怖のツイートがバズってた記憶があるんですが、今の10代の子が「BUMP好き!」って言ってても何も不思議ではないですね (『天体観測』が20年以上前だという事実はきっちり恐ろしいです。いうて俺もそのころ3歳とかですが)。

逆にうちの親 (55、60のオカンとオトン) とかもBUMPふつーに聴くんで、あなたのBUMPはどこから?と聞かれたら、老若男女問わず色んな入り口があるかと思います。それくらいの普遍性を彼らは獲得している。

なんかこう「かつての人気バンド」みたいな枠では捉えられてないですよね?
リアルタイムに今も新作を待たれているバンドというか、誰にとっても「俺らの世代のバンド」みたいな。


じゃあお前のBUMPはどこからなんだよと?
よくぞ聞いてくれました!

俺のBUMPは中学2年 (ドンピシャな時期!!!)、同じ部活のやつに休憩中薦められたのがきっかけです。

その頃の俺って典型的な「洋楽好きな俺かっけー!」期だったんです。
小5のころにオトンがBON JOVIのベストアルバムを買ってくれたんですね。

CDショップもなけりゃあ、ディスクガイドを売ってるような書店もない、PCもろくに触れんので、テレビからの情報が全ての田舎坊主にとってこれはまさに青天の霹靂。

この2枚組の1発目に流れる大名曲『Livin' On a Prayer』の、ヴォッヴォゥオ ッ ♪ ヴォッヴォゥオッ ♪ っていう、Richie Samboraのトーキングモジュレーターを通したスキャットが流れた瞬間の「なんだこれは!?!?」って衝撃 (Richie、素晴らしいギタリストなのになんか舐められてんのマジでムカつく)。

そっから小学校卒業するまでこの2枚組しか聴いてなかった。
これガチです。勉強するときも、ゲームするときも、漫画読むときも、マジで俺の生活のBGM全部BON JOVI。
CDラジカセの挿入口ガバガバになるまで聴きました。

そもそもオトンは典型的なMichael JacksonとかBruce Springsteenとかの80年代のド王道米ポップスを好む人間で、カーステレオから流れてくる曲を幼かった俺は何もわからず聴いてて、無意識に80年代サウンドを刷り込まれてたんですよ (邦楽だとサザン、ミスチル)。よくある話です。
あのちょっとダサいシンセサウンドと、大仰なリバーブ、昨今はリバイバルで再評価みたいなことされたりしますが、俺はそもそもそういう音が根っから好きなんですね (もちろん良し悪しはありますが)。

まぁのちに俺と怨憎会苦 (相思相愛の憎しみverを調べた) の関係だった、同郷のガキ大将もBON JOVI好きなことが判明してちょっと冷めたり、さらにのちのちに「産業ロック」というカテゴライズで一部から鼻で笑われていることを知り、「音楽好き」が若干嫌いになったり、最近のJonの老け具合がかなり心配になったりして、複雑な思いを抱いているバンドです。


そんなBON JOVI小僧が中学にあがってハマったのがLINKIN PARK。
これは元を辿るとBON JOVIよりも根深いかもしれない。

ちびっこの時に、ばあちゃんがかわいい初孫にちょっとでも「文化」に触れさせてやろうと気を効かして、チャリンコのチャイルドシートに俺を乗っけて、1時間に1本のバス停まで行き、そのバスで地元を吸収合併して同じ市内扱いしてきやがる市の中心地にある映画館 (何件かあったがとっくに潰れて今はシネコン1強) にちょくちょく連れてってくれたんです (なので超おばあちゃんっ子)。

そん時に見さしてくれた映画の1つに、あの爆発とデカいケツの女と軍隊出したらええと思ってる映画監督、Michael Bayの『トランスフォーマー』があったんですが、それの主題歌がLIKIN PARKの『What I’ve Done』だったのです。

中学生俺はそれを思い出し、『トランスフォーマー』つながりでLINKIN PARKの存在を特定し、『What I’ve Done』が収録されている『Minutes to Midnight』を貯めた小遣いで購入。


それまで聴いたことのないディストーションサウンドに大興奮。
Chesterのボーカルにぶっ飛んだことはもちろんなんですが、Mike Shinodaのラップとのコラボレーションに全てがひっくり返るような衝撃を受けました。
もうそっからはLINKIN三昧で勉強するときも、ゲームするときも、漫画読むときも、以下略。

もうその頃のイキリっぷりたらなくて、全然音楽聴いてるわけでもないのに「まぁ、他の奴らが聴いてるような音楽は俺には合わないかな…」って、ほんと誰でもあるんすよねこれ。

英語の授業でJoan Baezを聴く (歌詞訳したり、歌ったり) やつがあったんですけど、その授業終わりに先生に「ええ曲ですね、これ」って話しかけて、「〇〇(本名)くんは、どんなん聴くん?」って聞かれて、「あー…オルタナティブ・ロックぅ…ですかねぇ」って、もうほんまこれなんなん。

これものちに、「前2枚の方が良かったよね」とか (気持ちはわかる)、「結局セルアウトするんだ…」みたいなことを、俺の好きなアルバムに言われてるのを知って、また「音楽好き」が嫌いになったり、Chesterの自殺が重なったりして、以降の音源は聴けず…とまたまた複雑な思いを抱いているバンドです。


と、ここまで前置きしてようやくBUMPの話。

まぁお察しのとおり中学の俺は、「J-POP?ああね (笑) 」を地でいくもの知らぬクソガキだったため、BUMP OF CHIKENを勧められた時は「ばんぷおぶちきん?なんその変な名前www」って感じで (ぶん殴りてえ) 取り合わなかったんですが、そいつがいちいち勧めてくるもんだから、「分かったじゃあ聴いてみるわ」いうて、家族共有のPCでYouTubeを開き、そいつに勧められた曲名を検索したんです。

そこで聴いたのが『三人のおじさん』

これマジで盛ってなくて (信憑性が下がる出だし)、そいつがやたらとニヤニヤしながら「『三人のおじさん』聴いてや」って言ってきて、だから俺はそんなダサい名前の曲 (もといダサい名前のバンド) なんて聴くかいなってなってたんです。

だってこっちは今の今までLINKIN PARKですよ?

それにLINKINは先輩にも聴いてる人がいて、そっちでワイワイ盛り上がってたのに、急に別にそんな仲良くもないやつに「ばんぷおぶちきん?」の『三人のおじさん』って勧められてすんなり聴きます?(LINKIN PARKも別にそんなかっこいい名前ではない。LINCOLN PARKがダメだったからって理由でしかない)

まぁ渋々そいつを再生して聴いたら、ご存じの通り隠しトラックのネタ曲なんですよ。
ヒデちゃんとヒロの調子ハズレのボーカルと、カッスカスの口笛と、たまに混ざってくるめっちゃ上手い藤くんの歌声。これなに?って感じっすよね。
面白いっちゃ面白いけど、そんなニヤニヤ勧めるもんか?とはなりました。男子中学生らしいけども。

翌日「聴いたで。あれなに?おふざけバンドやん」と答えると、そいつはまた別の曲を勧めてきて、「じゃあ〇〇と□□も聴いてや (任意の隠しトラックをどうぞ)」と。まぁ曲名からしてふざけてんなとはなりつつも、それらも聴いて「ああ、こういうネタ系のバンドなんかな?」と認識を固めようとしていたそのとき。

違法アップロードされた曲 (でっかくMP3の静止画) ばかりの最中、なんか公式っぽい動画のサムネが目に止まり、「あれ?ちゃんと動画あるわ」とそいつを再生した時に全てが始まりました。

それが『カルマ』だったんですね。

そこで俺の中でパズルのピースがハマったんです。

ちょうど深夜アニメを見始めた時期でもありまして、『テイルズ オブ ジ アビス』のCMで『カルマ』が流れてて、そこで「この曲かっこええなぁ」って思ってたんですよ。
そこにきてこの出会い、「お前かい!!!!!」って叫びました。
と、同時にBUMPを勧めてきたやつの策略にまんまとハマったことに気づいたわけです。翌日、そいつに「おい!めっちゃかっこいいやんけ!!」とキレながら握手を交わしました。

そこからはBUMP三昧で以下略。

そしてBUMP繋がりで色々な「邦ロック」あるいは「ロキノン系」と雑に括られるバンド群を知っていくわけです。

ただBUMPをしっかり聴いていたのは高校2年くらいまでのこと。

高校からギターを始めてそっから別方面のミュージシャンや音楽にハマり始め、BUMPも音楽性を変え出したこともあって、以降フェードアウト。でも『Butterflies』まではちゃんとアルバム買ってたんです。サブスクに出始めてからはもうほとんど売っちゃいましたが…。
もちろんBUMPでコピーした曲はそれなりにあります。だってBUMPに憧れてギター始めたんだもん。

ちなみにライブには1度も行ったことはないです。
そもそもライブがそんなに好きではない (田舎住みで縁も薄い) ので、ミュージシャンのライブで行ったことあるのは片手で数えられる程度です。
部屋でゆっくりじっくり聴きたいですし、今はオンラインライブや映像媒体も充実してるので、あくまでパフォーマンスを鑑賞するだけであればそれで十分って感じですね。




独断と偏見。アルバムの完成度&好感度ランキング


さて、いよいよ本題です。

まず本稿は現時点でリリースされている全アルバムを取り上げ 、1曲1曲の感想を述べていこうという、お前それ何文字費やすつもりだよ (この時点で5千字近く、バカ) っていう試みなんですが、その前にアルバム単位のランキングのほうを先にやっておきます。

これ以降 (今までも) 、無駄に長い文章が連なるので、「結局お前はどのアルバムが良いんじゃい!」って方のための項になります。

完成度&好感度とあるように、完成度ランキングでは俺の好みを抜きにしたアルバムの「出来の良さ」に依拠したランク付け、好感度ランキングでは出来の良さに関わらず「俺が好きだから」に依拠したランク付けを行います。

と、ここで「ちょっと待て」と。
「好感度の方ならいざ知らず、完成度の方となれば【好き/嫌い】と【良し/悪し】を切り分けなければいけないが、お前にそんなバイアス抜きの評価ができるんかいな」と疑問に思う方もいるでしょう。

もちろん、俺もそんな客観的評価を完璧にできるとは思ってはいませんし、【好き/嫌い】と【良し/悪し】はどうしてもオーバーラップするものでしょう。
そういう「切り分け」行為自体が、一種のバイアスに支えられているのも従順承知です。

ということで、まず完成度ランキングに関して俺の評価基準を先に開陳したいと思います。
その基準という名のバイアスに基づいて評価してるんだなこいつは、と思っていただければ大丈夫です。



以下俺の完成度ランキングの評価基準とその理由


  1. 単純に巧いかどうか。

    こう言った「ロック」と括られる音楽は、演奏技術や歌唱の巧拙よりもいわゆる初期衝動やパッション、あるいは思想性の部分をもって評価されがちですし、そう言ったムーブメントが支えてきた音楽だということも理解しています。しかし、商業シーンに出された時点で、いちプロダクトとしての完成度を抜きにして評価はできませんし、それを無視するのはフェアではないと思っています。



  2. 耳馴染みの良さは担保されているか

    これは賛否分かれるかと思いますが、単に突飛なことをしているだけだったり、そこに明確な意図を感じない限り、前衛的なパフォーマンスは自己満足と評価します。
    これは基準1にも準拠しますが、「ロック」は大衆のための音楽でもあり、そういった大勢のフィードバックによって支えられているものでもあるので、独りよがりなものを「これを解らない奴はバカ」といって褒めそやすことはできません。
    「産業ロック」という言葉の裏にある浅はかなエリート意識を俺は唾棄しています。

    またレコーディングの精度もここに含むことにします。



  3. コンセプト/一貫性に殉じているか

    これはかなり曖昧模糊とした基準ではありますが、バラバラな方向を向いた曲を無理やりひとまとめにしたようなアルバムの評価は低いです (ベスト盤などは入り口としては最適ですが、まとまった作品として評価するのは難しいと思う次第です)。

    ガチガチのコンセプトアルバムしか評価しない、というわけではなく仮にバラバラな音楽性であっても曲順を工夫したり、形式からの逸脱を試みようとしているものは評価します。
    それ以外は基本形式重視です。



  4. 歌詞について

    基本考慮しません。完全に好き/嫌いの領域です。
    というのも俺は文学的な読み取り能力に欠けており、婉曲的な表現などはほとんどスルーしてしまうタチなのでまず意味内容について適切に判断ができません。
    韻律についても「この歌詞口がモゴモゴして歌いづらいな」くらいのことしか思わないので、またこれもスルーです。
    昔の俺はそれこそ「歌詞で聴く」タイプではありましたが、今やめっきり曲/サウンド重視です。小学生レベルの文章力で書かれた歌詞であろうと曲が良ければ聴きます。



さて、異論もございましょうし、「お前それ思いつきだろ」とお思いの方もいらっしゃるでしょうが (返す言葉もありません)、この基準に基づいた完成度ランキングを発表したいと思います。
おい!!それだとこのアルバムはもっと上だろうが!!などのツッコミお待ちしております。


取り上げるアルバムは全てメジャーリリース準拠。カップリング集、ベスト盤は除く。


では完成度ランキングです、どうぞ。

BUMP OF CHICKEN アルバム完成度ランキング


1位『COSMONAUT』

2位『orbital period』

3位『ユグドラシル』

4位『RAY』

5位 『jupiter』

6位『butterflies』

7位『aurora arc』

8位『THE LIVING DEAD』

9位『FLAME VAIN+1』



続いて好感度ランキング

BUMP OF CHICKEN アルバム好感度ランキング


1位『orbital period』

2位『COSMONAUT』

3位『jupiter』

4位 『ユグドラシル』

5位『THE LIVING DEAD』

6位『FLAME VAIN+1』

7位『RAY』

8位『Butterflies』

9位『aurora arc』


以上となります!!

当然ながら、めちゃくちゃ悩みました。
好感度ランキングは割とすんなりいったのですが、やはり完成度ランキングですよね…。

俺の評価基準に照らし合わせると、好きでも下位に位置付けなければならないアルバムがどうしてもあって、歯軋りしながらランクインさせました。

2つのランキングの差を見比べることで、そのあたり伝わってくるのではないでしょうか?
特に好感度ランキングから漏れ出る俺の癖と怨念が…。

さてこのランキングで「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」となった方は、これ以降読み進めても時間を無駄にされるだけなのでブラウザバック推奨です。
お付き合いいただきありがとうございました。




各盤感想


さて、こっからがガチ本番です (主に字数の面で)。

ランキング付けは終わりましたので、各アルバムの感想をだーっとやっていきます。

完成度ランキングの理由はきちんと述べるつもりですが、あんまそればっかだとつまらんので個人的なBUMPに対する思いもガンガン詰め込んでいこうと思います。

なんせ本当に久しぶりにちゃんと聴いたので感慨深さがえげつない。昔聞いた時より変わった部分もあるなぁって思ったのでその辺のことも語りたい!

感想はリリース順に記述していきます。
完成度と好感度、それぞれの順位も作品タイトルに補足しますので、それを踏まえながらお読みください。

そのアルバム全体の感想+各曲ごとの感想となります。

アルバムのYouTube再生リストも貼っつけとくので、聴きながらでも読み流してくだされば。

注意

コード進行などへの言及がありますが、前提としてBUMP OF CHICKENの曲はほぼ全てハーフダウンチューニング (ギターのレギュラーチューニングの各弦を半音下げたもの) で演奏されており、時折変則チューニングが使用される以外は基本そうなっていると思ってください。

レギュラー:E・A・D・G・B・E  (ミ・ラ・レ・ソ・シ・ミ)
ハーフダウン:E♭・A♭・D♭・G♭・B♭・E♭  

本稿でのコードの表記はレギュラーチューニングでのものになりますが、俺がその方が書きやすいからという理由以外にありません (全部に♭付けるのだるい)。

例えば、【 G - D - Cadd9 - … 】という進行が書かれていたとして、実際の曲で鳴っているのは【 G♭ - D♭ - C♭add9 - …】となります。


『FLAME VAIN+1』完成度9位/好感度6位


久しぶりの率直な感想を。

藤くん声ガッラガラで草。

常時風邪ひいてんのかなってくらい声のコンディションが悪い (実際風邪ひいた状態でレコーディングしてるし)。

発声も充分じゃないから楽器の音に埋もれるし、地声そのままで歌ってるようなところは、リズム隊と帯域がかぶりすぎて注意しないと聴き取れねえ!!

シンプルに楽器の音がデカすぎる。音量バランスは完全に崩壊している (シューゲイザー的アプローチだとか、ローファイ志向だったとしてもバランスミスっとる)。

単なるエンジニアリングの問題だけではなく、演奏が下手だからまぁ強弱もクソもなくガシガシ弾いててすっごいゴチャゴチャ。  
これは完成度の面でどうしても評価を落とさざるを得ない。


でも久々に聴いたら好きなんだわこれが。

ボソボソ歌ってると思ったら急に声張り上げるし、リードギターは1音1音取り出すともうヘナヘナだったりする。でもね、これ聴いてるとめちゃくちゃギター弾きたくなるんですよ。

バッキングはメロコアっぽくパワーコードとかオクターブでガシガシやってるけど、リードのフレーズからは藤くんのルーツであるカントリーの香りもして、下地はずっとこのままなんだなと思いました。

そういやこれの隠しトラックって『ガラスのブルース』を0:00から巻き戻さないと聴けなかったはず。
タイミングミスるとまた0:00に戻っちゃうからけっこうシビアだった記憶。サブスクだと聴けないのがちょっと惜しい。やばいわ、思い出が蘇る蘇る…。



1. ガラスのブルース


神曲。

イントロから激アツすぎる。
藤くんのソングライティングの才能を窺わせる原石のような曲。
割と長い曲なのに最後まで聴かせる展開作りは流石すぎる。そらこの段階で1人だけレコード会社から声かかりますわ。

あ゛ぁ゛ん゛ ぼぉくぅはいつぅンも゛ぉ〜 ぜぇえいぃっぱい゛ぃ〜 う゛ぅたをうたうぅ〜

これよこれ!!



2. くだらない唄


照れ隠し曲名。

ちょいちょいチョーキングが狙った音まで上がりきってない (チューニングちゃんとせぇ)。

このアルバム全体のメッセージって「大人になりたくない」だと思うんですけど、こういうストレートな駄々こいてる歌詞を書いてたのって本当にこの辺までですよね。



3. アルエ


マジでキモすぎて最高。

まぁこの曲の逸話なんて何億回擦られてんねんって話なんで、掘り下げませんけどほんまキモい。これくらい曝け出してるといっそ清々しいですよね。変に距離保ったポーズを取るより潔く感じます。

ちなみに俺は“惣流”・アスカ・ラングレー派なので、この曲で特にエキサイトすることはないです。



4. リトルブレイバー


出だし声ちっさ!!!

で、ドラムがデカすぎて負けてるし。
イヤホン推奨です。

まぁ全体通したこの気だるげな歌い方は時代ってやつですね。
インディーズでリリースされた頃はRadioHeadとかあの辺の勢力が強かったわけだし。



5. ノーヒットノーラン


出だし声ちっさ!!!2ツー

どないした藤原ぁ!腹から声出さんけぇ腹からぁ!!(野球部顧問)

すごいわ、俺のスピーカーの設定にもよるんかも知らんがお経か?って思うくらいブツブツ歌う。リマスタリングされてマシになったとはいえ、これもイヤホンで聴いた方がまだ快適かも。



6. とっておきの唄


これ好き。
この歯の浮くようなラブソング。
『スノースマイル』の歌詞解釈にキレてたやつと同一人物か?

節々に現れるスライドとダブルストップを多用したカントリーライクなフレーズ。
レゲエっぽいリズムもちょいちょい挟んで割と賑やかな曲。


でもやっぱガチャガチャしてんのは否めない。
このへんは当時の技術や予算に制約受けるもんだから仕方ないとはいえね。



7. ナイフ


藤原ぁ!風邪ひいてんねやったら保健室いけぇ!(担任)

咳入ったけどかっこいいから良いかって、よくよく考えると別にかっこよくない。

英詞のとこふざけてんのかってくらいだるっだる。



8. バトルクライ


これめちゃくちゃ好き。

当時は自分を励ますために聴いてましたよ。

しゃろぉばろぉくらぁ〜いぇ〜



『THE LIVING DEAD』完成度8位/好感度5位


明確に物語調の歌詞を書く方向に舵を切ったアルバム。
コンセプチュアルなアルバムを作ろうという意識が出始めましたね。
ただ歌詞の世界観に合わせた曲作りではあるものの、1stに比べそこまで明確なサウンドの変化はなく、『FLAME VAIN』その2くらいに収まってるのは否めない。
あと音響面の改善もそこそこなのも辛い。

でもこの頃の歌い方は割と好きです。ちょっと高音に挑戦してみたり、歌い方を模索してる感じが可愛くて。



1. Opening


藤くんの弾き語り最高。

やっぱこの頃は藤くんのポテンシャルで持ってたところありますね。アイデアも技術も頭ひとつ抜けてる。問題はそれにバンド全体がついていけてない所にあってぇ… (有識者)。

これ久々聴くにあたってコピーしたら、1音下げチューニングじゃない?(フォームはkey=Gで、実際はkey=F)。開放弦の音が明らかに低い。だからこんなズンズンした音なんですねぇ。

でもAメロの【 GonB - GonA - GonE 】ってなに?(1・2弦の3フレットは押さえっぱなしのやつ)
ベースラインはkey=Eのブルース進行を意識して、でも基本はkey=Gってこと?

絶対本人は勘でやってるので、あまり理屈こねても仕方ないけど。

※追記
聴き直したらこれフツーに【 GonB - A7sus4 - Em7 】でした (恥)。
Gの響きに引っ張られすぎた…。ベースだけ動かしてるもんとばかり…。



2. グングニル


もういよいよこれをリメイクして『ワンピース』のOPに充てようぜ。

ベースラインがごっつ動く。チャマがなにげに忙しいバンド。



3. ベストピクチャー


すんません、 初めて聴いたとき「これ要る?」って思ってました。

でも久々聴くと沁みる。
Bメロのボーカルがめちゃ埋もれてんのは相変わらず。



4. 続・くだらない唄


かなり好きな曲。
露骨にマイナーキーの暗い曲って実はBUMPには珍しいと思う。

そして飛び抜けて声が低い、低いよ!

ギターソロ、『Stairway to Heaven』意識しまくっとる。



5. ランプ


これが発展して『メロディーフラッグ』になったんじゃないかと思うんですが、どうでしょう?

フレーズの端々、メロディーの端々から感じる『メロディーフラッグ』の萌芽。
歌詞も「目印」とか「自分の中にあるもの」をテーマにしてるし。



6. K


神曲of神曲。

FLASHでこれ知った人で嫌いな人いるんですかね?
あんなん孤独を尊ぶくせに寂しがりな厨二心に刺さらんわけないもんな。

きっちり起承転結があって曲名がオチになっている、そんな物語調のリリックがここでもう完成してるんですねぇ。

ドラムがめっちゃ走ってるとこあって、ちょっとフィルが詰まり気味になってるんですけどそれも味ですね。

この辺りでコーラス隊を使ったアレンジが顔出してくるのも興味深い。やはり進化の途中ですね。



7. リリィ


これもFLASHでめちゃくちゃ聴いた記憶。

自己否定する僕、それをまるごと肯定してくれる君。スーパーのろけソング。

藤くんリリックあるあるの、同じモチーフを異なる視点で描写する対比表現も出てくる。
「スポットライトの下」↔︎「低いステージの上」



8. Ever lasting lie


Acoustic Verのアレンジも好き。

クソ長間奏、初めて聴いた時はだるいなーって思ってたんですが、ギターを弾く今となっては「え?この間はやりたい放題していいの?」って感じです。
でもかったるいのも事実ですね。



9. グロリアスレボリューション


滑舌どないした。

勢いで突っ切ろうとするの好きですよ。
これもベースがアホほど動く。



10. Ending


「大丈夫!」って言い切ってから、「そりゃ僕だってねぇ」って愚痴るバランス感覚。

こうやって人をたらし込んでいくんですね、悪い男!



『jupiter』完成度5位/好感度3位


初めて買ったアルバム。
そりゃあ『天体観測』聴きたいし。

人によってはこれが不動の1位だろうし、ここがBUMPの終着駅になった人もいるのではなかろうか。俺はここから乗りましたが。

初めて再生したのはオトンのエリシオンのカーステレオ。
店で買ったその帰り道で待ちきれず再生。田舎と街の間の距離で全部聴けるんじゃ。

しかしこれは再生機器の問題だとは思うんだけど、こっちは藤くんの声が聴きたいのに全然ボーカルが聴こえなくて、イントロがクソ長い曲なのか?と思ったら、声張り上げた瞬間にもうAメロ終わったくらいだったことに気づいて、 ビックリした思い出。

あと、隠しトラックがあんなに空トラックをまたいで、しかも曲前の無音状態が長いなんて知らなかったんで、いつまで経っても始まらない中ずっと車内で待ってました (オトンももちろん知らんので、息子がもう再生が終わったはずのCDを無音で聴いてるのを不思議がっていた)。

『天体観測』1強の寄せ集めと言われそうですが、突如ビッグセールスをつかんだバンドの動乱が反映されたカオスを、綱渡ギリギリのバランスで仕上げた秀作だと俺は思います。

まだバンドとしての完成度は未熟で、でも藤原基央の才能が無際限に溢れ出すもんだから、それをどのラインまで抑え込んで形にするか?そういう課題が見え隠れする1枚ですね。



1. Stage of the ground


イントロが神すぎる。
ここでBUMPの1つの「型」みたいなものができましたね。
オープニングアクトを飾る曲を作るメソッドといいますか。

ブライトなサウンドに先導させて、リズムセクションがぬるっと入ってくる。ドンシャリな作りをものにしたという手応えを感じます。

この「飛ぼぉ⤴︎としたぁって羽なんかない⤴︎って」のしゃくりあげる部分だけが当時カーステからは聴こえてたんですよ。もうちょい強弱どうにならんかったか…。



2. 天体観測


まぁ今更何か言及する必要もない名曲なんですけど、これが良くも悪くも彼らの行先を決定づけた気はします。それこそRadioheadの『Creep』のようにコールされまくる代物になってしまうわけで、逆張りでライブで演らないなんてこともやらかしたわけですし。

ちなみに俺は、爆売れした曲をミュージシャン本人や玄人ファンがうんざりしているからといって、「敢えて演らない」みたいなスタンス、全然かっこいいと思いません。クソダサいです。

そういう尖った時期があってもいいとは思いますが、いい歳こいてんだったらみっともねぇイヤイヤをやめて、その曲で好きになってくれた新しいファンにもしっかり応えたれよ、と思います。
さすがにBUMPも今じゃ「一緒に歌ってくれよな!」って言ってくれるんですから、素晴らしいことです

話逸れた。

改めて聴くと荒っぽいんですよね、これ。
ソングライティングがずば抜けてるから誤魔化せているんですけど、やっぱギターかなりうるさいですね。ギターをアホほど重ねたんでしたっけ?
歪み超えて割れまくっとる。

でもこれが好きなんですわ…、これに憧れてギター始めたんですわ…アコギスタートなんですけど。

でもやろうと思えばアコギでも弾けますからこれのリードギター。

てか俺はエレキの曲を無理やりアコギで再現するっていう力技でギターを習得していったので (山崎まさよしは天啓でした)、どっちから始めても割とできる範囲は被ってるよって思うタイプです。アコギにだってピックアップつけてディストーションかましたらええねん!! (Zakk Wylde並感)
冗談はさておきアコギから入ると、エレキ押さえやすすぎて楽に感じるのは確かです。

また話逸れた。

そういうわけで、俺はこの荒っぽいサウンドが好きなんで、どんなに綺麗に整えられて完成度が高くなったといっても2022年版は好きじゃありません!! (老害)

なんですかあの綺麗なオゥイェへェアハァンは!

オ゛ゥ゛イ゛ェ゛へェ゛ア゛ハァ゛ン゛ンン

なの!!
母音にぜんぶ濁点がつくの!!!



3. 『Title of mine』


出だし声ちっさ!!!3スリー

これこれ、カーステレオで急に声聴こえ出してびっくりしたやつ。
「すぅずめぇ⤴︎」のとこでやっと聴こえたんですよ。

この曲の堂々巡り感やばいですね。曲としても歌詞としても。Cメロからラスサビまでのヤケクソな盛り上げがかなり痛々しい。

藤くん完全に精神疲労してて、こんなにバイオリズムが反映された曲もないです。
『jupiter』の躁鬱感の「鬱」の部分を一手に引き受けてる。

初めて聴いた時はなんでこんな苦しそうなんだとなって、一時期この曲だけ飛ばして聴いてました。こっちも引っ張られてしまいそうになるのでね。



4. キャッチボール


藤くんリリックあるある、メンバーとの思い出まんま乗っけるやつ。

アレンジがすごいシンプルで、3曲目のあとにこれでなんか拍子抜けした記憶があります。

「カーブのような愚痴」はなんとなく分かるけど、「消える魔球のような優しさ」ってなんだ?
あとになって気付く優しさみたいなこと?でも「消える魔球」は時間差が云々より、単に物理的に視認できないってのが肝だから、単にまどろっこしい優しさってことか?ツンデレのこと言ってんのか。



5. ハルジオン


カッコよすぎ。

ライブのAメロをわざと走らせて疾走感を出すアレンジ、あれめちゃくちゃ良いです。

これがセットリストの真ん中にどしっと構えてるの素晴らしい采配だと思います。

余談ですが ハルジオン 歌詞 とかで検索すると、YOASOBIがヒットするのなんか時代を感じます。



6. ベンチとコーヒー


出だし声ちっさ!!!4フォー

いやぁちょっと冗長すぎますね。
日記風に綴った曲だとはいえ、もう少し展開に起伏が欲しかった。

ハトが集まってきた下り要る?



7. メロディーフラッグ


マジで好きな曲。

初めて聴いたときは、まあまあやねって思ってたんですけど、コピーしたらめちゃくちゃええ曲やんけ!!ってびっくりしました。

楽器やってるやつのちょっとした役得です。
最初なんか微妙やなと思っても構造が理解できてないだけで、コピーしてみたらそれが分かるっていう。これはむしろ感性の補助輪のようなもので、楽器やってなくても聴いたら理解できる耳を持ってる方がすごいです。

リフが良いですよね。
藤くんのアルペジオのセンスが抜群に出てると思います。

LRにギター振って対位法っぽく (あくまでぽく) アプローチするのをこのあたりからやってるんだ、ってなりました。

この時点でのBUMPの曲で、完成度は群を抜いてます。『天体観測』より上なんじゃないですか?



8. ベル


藤くん、あなた疲れてるのよ…。

人間不信極まれりって感じでマジでしんどそう。

でもこの曲すごく落ち着きますね。
人の愚痴なんて聞いてて気持ちいいものではないですけど、こういう弱みをさらけ出せてしまうあたりに、ずるい男感が出まくってます。ヒモの才能がある。あるいはヒモ飼いにさせる才能がある。



9. ダイヤモンド


Key=G (実際はG♭) すっきゃねぇ、あんた。

BUMP好きでギター弾いててこのコードリフをコピーしなかった人いないでしょうが、やっぱ良いもんですね。

自分をとにかく励まそう励まそうって言うのが伝わってきます。
割と藤くんはリスナーに語りかけて来るタイプではありますけど、よく聴くと自己完結的な曲も多いですね。でもこっちが勝手に言われてるような気分にさせられるんですよね。これがカリスマってやつか。



10. ダンデライオン


藤くんの趣味が出まくってる。
『jupiter』の躁鬱の「躁」の部分。

ブルーグラス色の濃いギターとビート。
たぶんチキンピッキングとかはしてなくて、フツーにピック弾きとは思うんですが、藤くんのギタープレイを存分に聴けるのが単純に嬉しい。

でもこれをラストに持ってくる采配はどうなんでしょう?
ちょっとヤケクソ感は拭えませんね。『ダイヤモンド』の余韻もくそもない。



『ユグドラシル』完成度3位/好感度4位


これを最高傑作として、これ以降のBUMPは認めん!!!という方は少なくないと思います。

言うまでもなくすごいアルバムです。

収録曲の面々が強過ぎます。
少年スポーツ漫画にありがちな、主人公校のエースレベルが普通で構成されてる全国常連の強豪校並みのクソつよメンツ (例えが回りくどい!)

藤原基央の詩世界がいよいよもって多層的に展開し始め、新しいサウンドの構築にも超意欲的、そしてバンドメンバーがようやく藤原基央に食らいついてきた (ヒロはまぁ…)。

完成度は3位にランクインさせました (「1位だろ!!」って方もお気持ちは分かります)。

好感度は4位というちょっと微妙な立ち位置。

これはアルバムを聴いた順番にも寄るとは思うんですが、この『ユグドラシル』に漂う異様な緊張感にちょっと疲れてしまう部分がありまして。藤原基央の才能が暴走しているのをどうにかこうにか形に留めようする緊張感といいますか。

俺は音楽でヒリヒリする体験にあまり乗り気ではなくて、普通にキャッチーな曲で和みたいタチなんですよ。この『ユグドラシル』はギラギラしたものをそのままぶつけてる要素が多分にあって、こっちからは近寄りがたいって感じてしまうのがどうにもネックです。



1. asgard


いきなり近寄りがたい。
初めて聴いたバカ中学生は「あすがーど?」って読んでました。

DADGADチューニングのアコギインスト入れてくるの壁作ってんなぁって感じ。

そんでまた上手いし。



2. オンリー ロンリー グローリー


藤原クン…ジブン、才能の塊や。

実質オープニングアクトとして最強すぎる。

初めてこれ流れ出した時の「うおお!?」っていう、驚きと感動。
久しく忘れていました。

この曲、藤原メソッドが詰まりに詰まってますね。
手の届く範囲が広がったことで、試したいことをどんどんぶち込んだのでしょう。

ややっこしいバッキングのストロークパターン。
リズムキープが地味にむずいベース。
ドラムも適度なフィルで盛り上げるバランスを弁えています。
総じてバンドの力量が上がってますね。


顕著なのは使用するコードの変化。

これはいずれ『ゼロ』への布石にもなるのですが、まずは

【 C△7sus4 】( I△7sus4 )

というこれ以降の藤くん御用達となるコード。

そして

【 D/F♯】( II/♯IV )      

というこれまた藤くん御用達となるコード。使用頻度はこちらの方が高いかも。


『ユグドラシル』以前の曲は割とスレートにトライアドを使用してて、ベースラインを滑らかにするためにオンコードを使用してたくらいだったんです (あとadd9)。

しかし (※)「C (のメジャートライアド) は偽善者っぽい」という、藤原基央の謎センスによってその内声部分に改革がもたらされました。

その結果が【 C△7sus4 】なのです。

Key=Cに帰結をもたらすコードにサブドミナントの風味が足され、なんともアンニュイな響きへと大変身。「オンリー“グローリー”」の部分で【 C - C△7sus4】と進行します。

(※)
長3度の音がマジで気に入らねぇんだろうなと思います。
おなじみの【 G 】も5弦2fミュートして、2弦3f押さえますし。

パワーコードみたいに完全5度の補強された響きは欲しいけど、3度が入って性格が決まるのがイヤなのかも。藤くんのセンスに照らし合わせると、メジャートライアドが偽善者なら、マイナートライアドはダークヒーローかな?

【D/F♯】についても。

『ユグドラシル』以前のBUMPでは、【 D/F# 】はkey=GにおけるVコード【 D 】の3度 (F♯) をベースにしたオンコードとして使われていて、使用例は【 G - D/F♯ - Em 】 といった感じ。
これはあくまでkey=Gの範疇でサウンドするんです。

しかしkey=Cにおける【 D/F♯ 】は、本来key=CのIIコード【 Dm 】が担う役割を思っくそぶち壊してくる。

要はkey=Gへの転調を予感させたりといった使われ方をするんですが (あとセカンダリードミナント)、この曲では【 F - D/F♯ - G 】といった上行する際の経過音、あるいは【C/G - D/F♯ - F 】の下行する際の経過音として使われています。

『ユグドラシル』以降、半音ずつ移動するベースラインを作るための借用和音として【 D/F♯ 】が使われまくります。

これはJ-POP、アニソンでもよく使われる手法で (あるいは大先輩Mr.Children 桜井和寿もよく使う)、藤くんは多分手探りでやってるとは思うんですが、こういうやり方を導入することで、メロディーの選択肢がぐんと増えました。

なので『ユグドラシル』以降の曲は歌の難易度が上がっています。
カラオケで前3枚の曲を歌った後に、『オンリー ロンリー グローリー』歌ってみてください。

地味にBメロの【 Am - G/A - Am - D/A 】や、サビの2回し目で並行調のkey=Amに切り替えるのも『ゼロ』の原型を匂わせます。

とにかく藤原基央が取り入れたアイデアがこの『ユグドラシル』で炸裂しまくり、新たな「BUMP OF CHICKENと言えばコレ」を形作っていることが分かります。



3. 乗車権


めちゃくちゃかっこいい。
このソリッドな凍てつくサウンド。緊張感がえげつない。

どことなく漂う『OK Computer』。あれも緊張感のあるアルバムですしね。

【 Asus2 - Asus2(♯5) 】という、とんでもねぇ緊張感の進行。
こういうトライトーンの使い方も、この『ユグドラシル』からですね。

ちなみに結束バンドで大好きな『あのバンド』という曲を初めて聴いた時、この『乗車権』のフレーバーを感じました。くそかっけぇ曲からくそかっけぇ曲の面影を感じる時がいっちゃん熱い。



4. ギルド


こねくり回して作ったんだなってすぐに分かるアレンジ。

ギターの音作り好き。BUMPのクリーントーンで引っぱる曲は『ギルド』が1番好きかも。

ここでも藤原メソッド。Aメロの【 D/C 】(V/IV) スタート。
リディアンサウンドの憂いを帯びた明るさがこの歌の世界観を決定づける出だし。

人間=労働というまぁ辛気臭い曲ですね。
金属音のサンプリングが物悲しく響くわけだ。

歌詞もそれまでの応援ソングというよりは、現状を受け入れない奴への説教臭さみたいなものもあって、これ聴く時期によっては「うるせぇ!」ってなると思います。てか俺がそうだったんで。

汚れたって受け止めろ
世界は自分のモンだ
構わないから その姿で
生きるべきなんだよ

これが優しく響くか、それとも突き放されたように響くか。
どちらも混ざった状態を歌いたいんだろうとは思います。

それも全て気が狂う程
まともな日常

この言い回しすごくBUMPっぽい。



5. embrace


こういうゆったりバラード割と珍しいですよね。
『Ever lasting lie』と『ベル』くらいか?

これ聴いてる時ナウシカが「怖くない」て言ってるの思い出すんですが割とあるあるですか?

これがある意味『ユグドラシル』の息継ぎポイントでしょうね。

珍しくレギュラーチューニング。順張りか?



6. sailing day


ベースがグリッグリでございます。
実は『ワンピース』ほとんど見てないので、BUMPと『ワンピ』にあまり関連性を見出せないのがネックなんですよね。

この曲も別にタイアップの曲っていう気分ではない。
ただ浮いてるようには感じますね。



7. 同じドアをくぐれたら


温度差で風邪ひくわ!

これなんですよ、『ユグドラシル』を3位に留めた理由。

これBUMPの弱点だと思うんですけど、曲順がちと乱雑ですよね。

なだらかに上り続けるかあるいは下り続ける、それか中盤に山をつくってゆったり下って終わらせる、それともずっと同じペースを維持する、とにかく滑らかな流れを作ってほしいんですが、こういう極端に凸凹した緩急はちょっと頂けない。
サウナ!水風呂!の反復横跳びやめてくれ。

でもこれのアウトロにマンドリン入ってくるじゃないですか。
次の『車輪の唄』へのタメみたいになってるから、やっぱ『sailing day』の位置が悪い。『embrace』→ これ → 『車輪の唄』でゆるい上り坂作った方が良いって。『sailing day』挟んだら車体が跳ねますって。



8.『車輪の唄』


ほんと良い曲。

藤くんのカントリー趣味がめちゃくちゃポップに馴染んだ好例ですね。

テレテテ テーテ テーレッテー ってマンドリン入ってきたらもう世界に引きずりこまれる。

軽快なリズム運びでサビに突入すると、Ebowでニュイーンと引き伸ばしたギターのロングトーンが良い対比になってます。



9. スノースマイル


別にラブソングでもいいだろ。

いや、「君のいない道」を1人で歩いていく、って情景を伝えやすくするために、敢えて恋人同士の表現にしたってのは分かりますけど、別にストレートに在りし日の恋の思い出に浸る歌ってことでもいいじゃん。

今は大逆張り時代なのでなんでも額面通りに受け取らず、「大多数がこう言ってるけど、実はこうで〜」みたいなのが溢れまくってますが、別に素直に受け取ったっていいでしょ (逆張りの逆張り)。

初めてこれ聴いた時に、ポケットに手ぇ入れてくる理想の恋人像を思い浮かべたことないんか?そっちで頭いっぱいになったことないんか?

そりゃ作り手側にも意図があって、それを汲み取ることも大事だとは思いますが、素直に感じたことを無闇に否定する必要もないでしょう。
「親子の歌だ」という解釈もあって、めちゃくちゃ良いじゃんそれってなりました。ラストで子供は巣立っていないっていうのが、切なくも嬉しいっていうね。

藤くんのフィンガーピッキング好きすぎる。

なにより展開の作り方が本当に上手いんですよね。
ゆったりバラードですけど、間延びはしないし、きっちり余韻は残す。
ソングライティングの卓越が著しい。

「すのぉすまぁいる」のコーラス、上と下どっち歌うかで友達と揉めたかった。俺は下がいい。



10. レム


Twitterで炎上しそう。

藤くんの説教ソング (自己批判含む) の代表格なんじゃないでしょうか。

俺はミュージシャンの99%がSNSで暴走するような人間だと思っているので、藤くんがTwitterやってなくて良かったと心から思います (藤くんは暴走するような人間じゃないかもしれないけど、がっかりする可能性だって無きにしも非ずでしょう)。Twitterやるのは本人の自由だし、そこの選択にもちろん口出しはできないですが、ヘラって暴走してたりするのを見るとまぁミュートしますよね。
誤解されると嫌なんですが、俺はクリエイターはその有名度合いを問わず、Twitterでもなんでもガンガン発言して良いと思ってます。もし気に食わないこと言ってたらブロックするなりすればいいですし、変なこと言ったらだいたい大勢からぶっ叩かれるんだし「おあいこ」ですよ。

なんか口では「自由にさせろ!」って言いながら秩序ガチガチを望んでいる意味不明な人間が多いTwitterだと、そういう“発言力”のスカウター審査みたいなので、「お前は発言していい。お前はダメ」みたいなのが多いですよね。自分も好き勝手言って、他人も好き勝手言って、それで衝突が起こるのは必然ですのでそれで良いと思います。まぁ病んでも知らんけど。

そして仮に暴走したとしてもそのミュージシャンが作った曲が良いことに変わりはない。優れた能力を持った人間が、人格まで優れているなんて、手放しに信じるのはどうかと思う次第です。人格が最悪だった場合のことを擁護したいわけではなく、むしろどんなに優れた能力を持っていたからといって、その人の内面を勝手に想像して盲信するなかれ、という自分への警句です。

個人的に歌詞に引っ張られすぎるのは良くないと思っています。
これを言っちゃおしまいですが、言葉だけならどうとでも言えますからね。言ってることに当人の性根が常時反映されてるわけではないんでね。「愛してる」って言いながら殴ることもできるわけですから。

チャマの不倫報道の時とか「ああ、まあそんなもんよな」って感じでした。ちなみにクリエイターがどこぞで不倫してようがクソほどどうでもいい。作品を作ってくれさえすればこっちはいいのでね。プライベートな部分で何してようがこっちになんも影響ないし。
「作品」だけがクリエイターと消費者との接点ですよ。それもめちゃくちゃ儚くて薄弱な接点。今まさに「大好き!一生ファンです!」ってなってる「それ」だって、5年後には見向きもしてないかもしれないですし、それで良いと思います。

話めっちゃ逸れた。

これ一時期マジで嫌いな曲でした。
「うるさいわ、そんなんこっちかて分かっとんねん!!!」
っていう。

狂ったふりが板について
拍手モンです 自己防衛
それ流行ってるわけ?
孤独主義
甘ったれの間で大ブレイク

シニカルに説教くさい。

意味はないとかごまかすなよ
汗まみれでよくもまぁ
爪先まで理論武装
何と張り合ってるんだか
誰と戦ってるんだか

レスバしてます?

でもTwitterってこんなんばっか。
自分は渦中にはいないって顔して、相手がムキになったら勝ちを繰り返してる。
膨大なユーザーを一括りにあるカテゴリへと纏めることなんて出来ないから、対立軸もコロコロ変わる。だから味方を背中から撃ったり、敵を賞賛してしまったりする (いいね/RTで気軽に意見を拡散増幅できるからそうなる)。

俺は素直にブチギレてたほうが潔くていいなって思いますが、レスバする人ってめちゃくちゃ余裕かましてますよね (常時ブチギレまくってたらそれはそれで怖いですが)。

俺もそれに呑まれてしまってたので、さすがにヤバいと思って一度垢消しました。今はアニメの情報を収集する装置です。音楽関係は調べません (アニメ関係も大概ノイズがうざいですが、音楽関係はもっとネチャネチャしてて嫌いです)。

また話それた。

現実と名付けてみた妄想
その中で借り物競走
走り疲れたアンタと
改めて話がしたい
心から話してみたい

一時期は嫌いすぎてこのアルバム自体聴くのを避けていたんですが、いつかに聴き直した際に、ラストの歌詞がスッと入ってきて別に張り合うことでもないなってなりました。
間奏で掻きむしるような、どこか泣き声にも聴こえるギターが入ってきて、これは自分のことも歌ってるんだと思ったんですよね。

これひょっとしてDV彼氏のやり方か?



11.  fire sign


和む。

『レム』でちょっと空気冷えちゃったところに、「はいはい、ちょっと失礼しますよ〜」って敢えて空気を読まず入ってくるムードメーカーみたいなやつ。

こういう雰囲気の切り替え、あるいは小休止をするのに最適な曲だなと思います。アップテンポ、スローテンポ、似た曲ばかり続くと疲れるのでリフレッシュにちょうど良いんですよ、こういうミディアムテンポの曲は。通しで聴く際のバイオリズムに俺はかなり敏感です。
「完璧なアルバム」って、聴く人がどんな体調だろうが、気分だろうが聴かせられるものだと思っています (そんなものはないことは承知の上で)。
かなり身体的に音楽を受容してます (テンポやタイム感重視かも)。

『sailing day』の唐突な切り替えはダメです。
もうワンクッション挟むなりしたら良かったんですが。



12. 太陽


『ユグドラシル』で1番好きな曲。
『太陽』って曲名でこんな暗いことあるかよ。

リフで一気に掴まれました。
ルートと開放を交互に鳴らすだけのシンプルなやつ。

ディレイのフレーズがめちゃくちゃ良いですよねこれ。
BUMPの曲って結構楽器隊が忙しいんですけど、この曲のシンプルなアレンジには堂々たるものがありますよね。こんなこともできるのか!?って当時はびっくりした記憶。

間奏のコーラスセクションも超良くて、この辺り次作の『orbital period』に至るまでの蓄積を思わせます。ここの【 G - C/G - D/G 】のペダルポイントがええんじゃ。ベースがしっかり仕事してるの好き。



13. ロストマン


文句なしの大名曲。

みんな大好き、桜井和寿も大好き、『ロストマン』。

実は聴き始めた頃はそんなに刺さってなくて「いうほどか?」と思ってました。『太陽』まで聴いて満足した感じ。

これって実質ラストの曲じゃないですか。
ただでさえ濃密な『ユグドラシル』を紆余曲折乗り越えて、こんな壮大な曲聴かされたらキャパオーバーしてしまいますよ。
数回通して聴いてちょっと余裕ができ始めてから、この曲すごすぎるって気づきましたね。

久しぶりに聴いたら、劇場オリジナルアニメのエンディングで流れてきそうな雰囲気出まくってる。エンドロールでこれ聴かされたら、本編がそこそこの出来だったとしても「いいアニメだった…」って騙されそうです。
念の為ですが新海誠ではないですね。
なんだろう、キャラはセルルック強めの塗りで、撮影処理も簡素で、横長幅を意識したレイアウトで…細田守?



14. midgard


お疲れ様でした。って感じです。



『orbital period』完成度2位/好感度1位

怒涛の17曲。
2枚目に買ったアルバム。

『ユグドラシル』から本作まではBUMPが最も進化した期間だと思います。演奏技術も、ソングライティングも、アレンジも、明らかにそれまでとは一線を画す仕上がり。
藤原基央のワンマンバンド…そんな殻を完全に破ったのがこの『orbital period』ではないでしょうか。

藤原基央の才能がもう完全に天元突破していて、バンドもそれに追いついたので、ようやく理想に叶う制作ができる喜びに満ちている。
ただ反面、若干暴走気味でもあって、リスナーを置いてけぼりにしてしまっている部分も否めない。
しかし各曲の完成度は申し分なく、どの曲も名作。
完成度は2位。

好感度は1位。まぁ『ユグドラシル』飛ばして2枚目に聴いたからってのもある。好きな曲はこっちの方が圧倒的に多い。

初回盤の絵本ブックレット、いつの間にかなくしちゃった…。



1. voyager


世界観作るの上手過ぎる。

1〜4弦のアルペジオを各弦を分割して録り、1本のギターとして再現するというクソまどろっこしいことをしているわけですが、やはりただ弾くよりも音の分離がはっきりするし (各弦のパン振りも自由)、各弦のサスティンを高い自由度でコントロールできるというのはでかい。
普通に1本で弾いた方が楽なのはそうなんですが、この空間の広がりはこれじゃないと出せませんね。

こっから藤くん声めっちゃ変わりましたね。
透き通った現在の歌い方にも通ずるものがある。

歌詞がカタカナで書かれてて読みづらかった記憶。



2. 星の鳥


『メーデー』への繋ぎとはいえ、ここで「今までとは違うサウンドをお届けしますよ〜」と宣言するためにもこれは必要です。

がっつりシンセ入ってきて、「お前変わっちまったな…」って言われる覚悟決まってます。



3. メーデー


はい神曲。

誰やお前ら!?ってくらいバンドとしての練度が上がりまくっている。
初めて聴いた時はマジでぶち上がりましたよ。

『ギルド』の時よりボーカルのダブルも馴染んでますね。



4. 才脳人応援歌


藤原クン…ジブン、才能の塊や2ツー

これここに置くのヤバ過ぎる。
ここに置いてもお釣りが来るくらい後に控えてるメンツもヤバ過ぎる。

才能まみれのお前がそれ歌うんか…って感じなんですが、でも掴まれますね。
「俺ら=才脳人=凡人のための唄」でありながら、「自分のために歌われた唄などない」と突き放し、「問題無いでしょう」と結ぶこのシビアさ。
諦観しているようでもがいてもいる。そんなアンビバレンツな空気を『ギルド』あたりから藤くんは詞に強く込めている気がします。
と、こんな風に詩情を読みこもうとしても、センス皆無なのでボロが出る前にやめるとして。

この曲はやはりギターがめちゃくちゃかっこいい。ヒロ!!すごいじゃん!!!
ギターが忙しいBUMPですが、この曲のバランス感覚は素晴らしいですよ。詰め込み過ぎずテクニカル。これが1番難しいし出来たら気持ちええんじゃ。

ドラムもタイトで耳触りが良い。
ベースも暴れ気味だったのがすっかり曲に奉仕する丁寧なライン。



5. プラネタリウム


藤くん小宇宙シリーズ (内面世界を宇宙と関連させるやつ)。

すごくフラットな歌詞ですよね。
閉じこもった精神を歌ってるのにそれを否定も肯定もしない。
カウンセラーみたいなことし始めたんかな。

アコギを前面に出してきて大変嬉しい限り。

C#m7 ♯IVm7(♭5)(♭5)】の使いかたが『スノースマイル』と一緒。
次の小節の【 Cadd9IVadd9 】に半音ベースで繋がるように配置する進行。これも藤くんよくやりますね。リハモしようとかそんな意図はなく勘でやってるはず。どことなくaikoの香り。



6.supernova


藤くん当たり前のこと実感するシリーズ (生理現象、出会いと別れ、生と死)。

あのBUMPがシンガロング向きの曲を作った!ってだけでもびっくりなのに、この曲の完成度ったらすごい。藤くんはBeatlesだとPaulが好きなのね!ってなった曲。

アコギのバッキングがメインで、リードギターは添えるだけ。
めちゃくちゃ良い塩梅です。

コーラスワークも完成度が上がってて、ソウルフルな仕上がり。

『Evar lasting lie』の時のような冗長さはなくなり、ちょうど良い起伏の付け方をものにした印象です。間延びしないバラードって難しいですもんね。



7. ハンマーソングと痛みの塔


珍しくレギュラーチューニング。順張りか?

寓話の世界観を全面に押し出しつつ、サウンドはかなり挑戦的。

この『orbital period』で試していることの一つに、歌と伴奏の入りをずらすって言うやり方がありますね。
『才脳人応援歌』もそれで変拍子っぽく見せかけている。

これは仮説ですが、藤くんはずっと「認識のズレ」を裏テーマに歌詞を書いていて、それをずっとサウンドの方に反映したかったんだけど、発想も技量も追いついていなかった。しかしこの『orbital period』ではできることが増えて、それを試すことができたのではないでしょうか?



8. 時空かくれんぼ


藤くん何言ってるか分かんないよシリーズ。

マジで初めて聴いた時から今の今まで何言ってんのか全然分かんねぇ。多分、自意識のことを歌ってじゃないかとは思うんですけど。
過去に追われてる人の歌だとしたらなんかディアボロみたいだ。二重人格っぽい描写あるし。
過去と今と未来をどの立ち位置から見るか?みたいな言い回しこの辺りからですね。

ハチロク (6/8拍子) の曲って、これが初めてじゃないですか?
これも入りずらすから歌う時むずいんですよね。



9. かさぶたぶたぶ


「NHK みんなのうた」にでも提供するんか?(フラグ)

隠しトラックからレギュラーメンバーへ昇格した曲とあってめちゃくちゃ牧歌的。ほっこりして良い曲ですよね。
でもちょっと扱いに困ってませんか?

キャンキャンって鳴らしてるギターがのちの『モーターサイクル』のサイレン音を模したフレーズを想起させます。

どうでもいい情報ですがうちのオカンはこれが好きです。



10. 花の名


これのMV意味分からん。

ピアノの低音をボーンと鳴らして、パッドがにゅーんと鳴り続けるイントロ。ギター以外の音階楽器や電子楽器も積極的に取り入れているのが『orbital period』ですが、この『花の名』は1番スケール感を上手く演出できていると思います。

イントロはもちろんコピーしました。
【 A/C♯ 】のとこ地味にストレッチするからだるいんですよね。

どうでもいい情報2ツーですがうちのオトンはこれが好きです。



11. ひとりごと


藤くん禅問答シリーズ。
こんな話振ってくるやつヤバイだろ。

逆再生のフレーズをふんだんに盛り込んで煙に巻くように見せて、ずーっと8分でギターが刻み続ける。そして単音が1、3拍を刻むんですが、ビートが4つ目で入ってきてボーカルと揃うとこれが裏返る。こういうパズルみたいなことさらっとするようになるんですよね。お前、何者だ?



12. 飴玉の唄


藤くん何言ってるか分かんないよシリーズ2ツー

マジでこれも何言ってのんか全然分からんのですが、めちゃくちゃ壮大なことは伝わる不思議な曲。
「飴玉」が何かのメタファーなのか、「君」と「神様」の対応が何を意味しているのかとか、考え出すとキリがないですが、正直そんなことはどうでもよくて、このサウンドの圧倒的スケール感と、それと相反する静謐さが無茶苦茶刺さります。

これも『ロストマン』同様、最初はいまいちハマらなかったんですが (何言ってんのか分かんないし)、回数聴くともう病みつきになってしまい、本作でも1、2位を争うくらい好きになりました。



13. 星の鳥 reprise


小休止。

あるかないかで言えばあったほうがいいと思う。
ちょっと畳みかけすぎると疲れるので。



14. カルマ


神曲。

なんでこんなかっこいい曲作れるんだってくらいかっこいい。

イントロ、オクターブガシガシやってるだけなのになんでこんなに熱いのか?
解:オクターブをガシガシやるのは熱いから。

『テイルズ オブ ジ アビス』はゲームもアニメも通ってませんが、タイアップ曲としても収録曲としてもここに置くのはベストだと思います。



15. arrows


当時は正直あまり刺さらなかったんですが、弟にこれのイントロ弾いてくれと頼まれコピーしたら「ええ曲や」となった『メロディーフラッグ』と同じパターン。裏から入るし、Aメロのフィンガーピッキングがちょい変則的でまぁまぁむずい。

BUMPの中でもピアノサウンドが1番綺麗な曲かもしれない。



16. 涙のふるさと


実質ラストに相応しいポップソング。

「出発」と「帰還」が同じ点で結ばれるというのが藤くんらしい世界観。

涙の一人称は「僕」で、語りかけてるやつの一人称は「俺」なのがなんか良い。



17. flyby


もしかしなくてもこれが1番好き。
この『orbital period』を通しで聴くからこそ、この曲は最大の輝きを放ち、また本作をより一層輝かせるのだと言って間違い無いでしょう。
本作に循環するテーマを見事に締めくくった最強のアンセムです。



『COSMONAUT』完成度1位/好感度2位


『orbital period』と完成度、好感度ともに1位にするか非常に悩んだアルバム。
ぶっちゃけ同率みたいなもんですが、強いて言えば完成度はこちらに軍配が上がるし、好感度は『orbital period』だなと (『flyby』の締めくくりがあまりにも好きなので)。

バンドアンサンブル、ソングライティング、アレンジ、共に最強の仕上がり。
もはや『ユグドラシル』までの不安定さの面影はありません。

前作では少々暴走しがちだった部分を完全に制御し、作りたい曲を作りたいように作る、それが完璧にこなせるようになった1枚。

『ドラゴンボール』で例えると、『orbital period』がスーパーサイヤ人なりたてで、『COSMONAUT』はセルゲームで常時スーパーサイヤ人で居られる状態。



1. 三ツ星カルテット


はい先生!!俺、これの藤くんアルペジオちゃんと弾けます!!
スコアのミスにも惑わされないように、ちゃんと音源と本人の映像とを照らし合わせて弾いてます!!

完全に感想から逸れるんですけど、「〜出会えばいい」のあとのクラップしてからジャカジャカってとこ、藤くんは開放弦も一緒に鳴らしてますよね?
5、6弦はミュートしてますけど、3、4弦は開放入ってません?3弦は確実に入ってると思う。あんま自信ないので教えて、耳のいい人!!

MVの2:05あたり。ここ1弦6f(C)、2弦5f(G)で3、4弦開放、5、6弦ミュートのはず。

オープンCに2カポのチューニング (なのでオープンD)。
イントロが6/4拍子、歌入ってから5/4拍子、急に何やってんだマジで。
GGTのライブ盤見た時、これのクラップお客さんにやらせようとしてたのマジで鬼畜だと思いました。

アンサンブルの練度が桁違い。
本作はリズム隊がえげつない仕事をこなしています。



2. R.I.P.


もう良い曲しかないから、良い曲ですねで終わってしまうんですけど、この歌ってる情景には似つかわしく無いドライブサウンドを唐突にぶち込んできて、こうも上手く調和させることができるのはさすがとしか言いようがないですね。
ギターソロを低音弦中心にズンズンさせるのって、かなり世界観を塗りつぶしてしまいそうと思うんですが、全然そう感じさせない。子供時代の情景を懐古しながら、過ぎて行く時間の速さを見事に表現している。

Bメロの【 A - A/G - D/F♯ - Gm/B♭ 】のくだりめっちゃ好き。
【 Gm 】を同主短調から借りてきて、ベースがF#からB♭に長3度で跳躍しつつ、次の【 Dadd9/A 】に半音で着地する流れ。IVmの使い方はこの時期のBUMPの特徴でもありますね。



M3. ウェザーリポート


学校のチャイムを崩したリフがノスタルジーを誘う1曲。傘をモチーフに人と人との境界線を歌う曲でもある。

スネアの主張が強めのビートメイクにギャップ萌えを感じる。



4. 分別奮闘記


藤くんの趣味詰め込シリーズ。
アイリッシュ音楽はゲームのサントラから影響されているのだとは思いますが (ゲーム好きだし) 結構あけすけに詰め込んだのはこれが初では?
『ユグドラシル』のインストや、『ハンマーソング』にも覗かせてはいましたが、これは完全に振り切った感じですね。



5. モーターサイクル


『ギルド』2.0だと思う。
シニカルさと諦観から励ましを導き出す曲。
 『ギルド』がかなり抽象から答えを導くのに対し、『モーターサイクル』は具体的なエピソードから問いかけをしてくるイメージ。

これ、バッキングリフ弾きながら歌うのめっちゃむずくね…?
 
てか全体的にバンドアンサンブルが複雑で、これライブで演るの大変だろうなと思う (演ったことあるんですかね?)。



6. 透明飛行船


こちらは『才脳人応援歌』2.0。

これも『才脳人応援歌』が抽象に対し、『透明飛行船』は具体。
 
Bメロでリードギターがテクりだすのも『才脳人』っぽい。

優しさの真似事のエゴでも
出会えたら無くさないように

これ耳が痛い。
善意の押し売りが鬱陶しいのは事実でも、じゃあ受け取る側は選り好みしてばかりでもいいんか?っていうね。
その辺のバランスミスるとまぁ孤独にはなるよね。



7. 魔法の料理 〜僕から君へ〜


「みんなのうた」フラグ回収。
 
曲名にこんな 「〜ほにゃらら〜」みたいな、サブタイトルつけてるのこれだけじゃない?
『シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜』みたいな (ミスチルこのタイトリングめっちゃやる)。

フィンガーピッキングとコード進行から”藤原基央”をビンビンに感じる。

スライドで4弦5fまでいって、3弦の開放とユニゾンさせる (経過の4fの半音ぶつかりを醸しつつ) とことか、めっちゃ藤くん。

イントロ・サビに共通の
【 C - C/B♭ - F/A - Fm/A♭ - C/G - D/F♯ - Dm/F - G/F 】 
の進行は、この時期の藤くんの定番。
Ⅰ →♭Ⅶ スタートのベースクリシェとか、最後の【 V/IV 】で IVを保持し続けたりとか、とにかくこの時期はゆるーい流れを作りたい気分なんでしょう。次へ次へと強く展開する進行を避けている印象。

なんか挟みたくなった、Jacob Collier御大の【 V/IV 】(その他色々) について喋ってるインタビュー。



8. HAPPY


藤原流ブルースロック。

なんか昔のBUMPはそれこそ松岡修造ばりに「あきらめんなよ!!」って感じだったんですけど、この辺りからそういう情熱的なメッセージと持ち前のシニカルさが中和されて、大人目線というか、「まぁそんなもんだし気にすんなよ」みたいな気分になってますね。

どうせいつか終わるたびを
僕と一緒に歌おう

諦観がありつつも、不貞腐れているわけでもない感じ。
メッセージ性の観点で、この辺りのBUMPと昔のBUMPにはかなり隔たりがあるように思います。「丸くなった」というのはともすればネガティブにも捉えられそうですが、そういう変化を追うのも面白いと思いますね。



9. 66号線


めっちゃ良い曲。

「BUMP OF CHIKEN」そのものをテーマにした、リスナーへの直球のメッセージソングって感じですね。

Key=Aで2capo (フォームはkey=G) ということでBUMPにしてはマジで珍しいKey選択。 1、2弦3f押さえのお馴染みのサウンドが、踏切の警報音のように等間隔に刻まれる。

あなたを無くしても僕は生きていく
それでも信じていてくれますか

これBUMP→リスナーって構図で捉えることもできるけど、逆もまた然りだなって思って、むしろこの歌詞のおかげで好きなミュージシャンを、好き“だった“ミュージシャンにすることに抵抗なくなりましたね。
気が向いたらまた聴けば良いだけですからね、今回のように。



10. セントエルモの火


ドラムがバカテクすぎる。

総じてテクニカルになったアルバムですが、この曲は頭ひとつ抜けてる印象。なんか難しすぎてライブではやらないらしいですね。



11. angel fall


これめちゃくちゃ好き。
本格的にゴスペル要素を取り入れて、めちゃくちゃコーラスワークでドライブしていく。ブラックミュージックとはあまり接点のなかったBUMPですけど、それはあくまでアウトプットの面だけであって、インプットの部分で無視してるわけないよね、っていう当たり前の気づきがありました。

Aメロの出だし、低すぎて歌えねぇ!!



12. 宇宙飛行士への手紙


これほんま名曲。
『COSMONAUT』で1番好き。
全体的に複雑化した本作の中ではかなりシンプルで、ど直球にメロディーが響く素晴らしい構成です。

サビで 【 Am7(11) - G/B - Cadd9 】×2の上行した後に、【 A7/C♯ - Cm6 - G/B - B♭m6 】で下行すんの好きすぎる。

今、過去、未来、をそれぞれの位置から相対化するの『モーターサイクル』でもやってましたけど、「過ぎていくもの」と「循環するもの」がこの辺の藤くんの大きなテーマなのかもしれませんね。



13. イノセント


藤くん説教ソング。

オタクのこと言ってんのか?
まぁ耳に痛いことを言いまくってくるわけですが、「君がどんな人でもいい」って言ってくるのがまたずるい。『レム』と同じ手口。



14. beautiful glider


はい先生!!これのアルペジオ難しすぎて手出してません!!
タイムキープすんのむず過ぎる。
てかそもそもオープンBにするのめんどくさい。

やりたいこと全部やったれってのが出まくってる、『COSMONAUT』の裏番長みたいな曲。



『RAY』完成度4位/好感度7位

さて、この辺りから怨パートが始まります。
この辺りのBUMPも好き、ここからBUMP知って好きになった、という方はマジでご注意ください。かなりボロカス言うと思うので。

まず最初に断っておくと、俺はこの『RAY』がアルバムとしては嫌いです。リリース当時も色々と言われていた本作ですが、俺は当時はさほど抵抗なく聴けていた方でした。でも当時のシーンを冷静に振り返りながらこの『RAY』を聴くと、めちゃくちゃ中途半端な1作だなと思いました。うっすらそれを感じ取っていたから、この辺りからBUMP離れが始まったのだと今となっては思います。

さて、俺がこの『RAY』を完成度4位にしたのも、好感度7位にしたのも原因は1つに集約されます。あろうことか表題曲となっている『ray』が俺の中でマジで駄作だからです
 
惜しいことに『ray』以外の曲はどれも名曲なのですが、『ray』があるせいで完成度は4位に留まるし、好感度は7位に落ちました。
『RAY』と名を冠したアルバムで、よりにもよって『ray』が足を引っ張っている。そんな歪な姿をしたのが本作です。

ひとつ言うと、俺はこの『ray』が好き!って言ってる人とはもちろん噛み合いませんが、「お前もバンドサウンドに戻って欲しいクチだな!わかるぞ!」って人とも噛み合いません。

細かいことは『ray』の項でねっちりやります。



1. WILL


すみません、普通にこれ飛ばします。
もうこの辺りから怪しい雰囲気が出ている。

思えばここで『ray』の体たらくを直感すべきであった。



2. 虹を待つ人


マジでここで止めとくべきでした。
このバランスでずっといくもんだと思ってたのが、俺の先見のなさをまざまざと思い知らされる。

いやこれ自体はかなり良い曲だと思います。
アップテンポな曲調にシンセ混ぜるのは『orbital period』でもやってたことだし、それの発展だと思えば頷ける。



3. ray

ほんまにボロカス言うんでマジで好きな人注意してください。
なんなら飛ばしたほうがいいです (すんなり飛ばせる文量ではないけども)。

まず一言。

ダサい!!!

マジでどうした!?
頭からケツまで何から何までダサい。

もうイントロの時点で受け付けない。
煌びやかなシンセで デデ デデ デデ デデって、打ち込み初心者か!?『orbital period』では上手くやってたでしょ!?なんでそれがこれに!?!?

リードシンセのメロもギターで作ってる時より迷いがあるし、キメに無難に合わせたみたいで聴いてられない。
80sのダサい部分、アクの部分だけを引き継いだみたいな野暮ったさ。これがリバイバルとか意識してやってんだったら、まぁその意図は汲めようもんですが、これ曲的にもアルバム的にも心機一転して新しいことにチャレンジしようっていう試みでしょう?じゃあ、全然新しくないです。おじさんが流行りに何とかついていこうとする痛々しさすらある。

ここでちょっと当時のシーンを見渡してみましょう。
同時代で、そして(※)「ロキノン系」と雑に括られていたバンド群のなかで、こういうエレクトロポップの方向性を模索していたロックバンドが2組あります。

まず1組目はサカナクション
そして2組目はGalileo Galileiです。

(※)
俺は故意に「ロキノン系」という雑な括りの“雑さ”にあやかって、知名度のある2組のバンドを引いてきました。そこの乱暴さについては認めます。

しかし、「これはあくまでBUMP OF CHICKENのディスコグラフィなのだから、他バンドとの比較検討をするべきではなく、あくまでBUMPのヒストリーの一部として評価するべき」という類の意見については容認できません。

なぜなら同時代のクリエイターというのは否が応でも影響され合うものですし、そのシーンにおける立ち位置というものをある種戦略的に取っていくのも「生き残り」に必須だと思うからです (セルアウトすら俺は戦略性として評価します)。BUMPもその例にもれず、1人として他の影響なく独立したクリエイターなど存在しないというのが俺の立場です。

アルバム『RAY』がリリースされたのが2014年。

その時点でサカナクションはすでに6枚ものアルバムを重ねながら、クラブミュージックを当時のマスに向けて浸透させるには? (“マジョリティの中のマイノリティ”) というテーマのもと、試行錯誤を続けていたわけです。
『ネイティブダンサー』ですら2009年ですよ!?


そしてインディー寄りのシーンでは、Galileo Galileiが『PORTAL』や『Baby, It's Cold Outside』なんかを出して、それこそ80sから当時までの欧米シーンとの融合を計ろうとしてたわけで。
名曲『リジー』が2012年です。

 

そんで2014年に、山口一郎に「BUMPイデオロギー」とまで言わしめた邦ロックのイデオローグたるBUMP OF CHIKENが出してきたのは『ray』。

これでええんか?

勘違いしてほしくないのはアルバム全体の感想でも述べたように、俺はこの「方向性」自体を否定してるわけではないんですよ。
むしろ積極的に進めていいとすら思っている。問題はその方針転換が振り切ってなくて中途半端なところにあるんですよ。
バンドサウンドを捨て去るなら思い切り捨て去ってくれ!!
それこそギターは置くぐらいの勢いでやってくれ!!

新しいことをやっているようで、俺から見ると昔の像にしがみついているようにさえ見えてしまう。バンドサウンドにとりあえずピコピコサウンドを乗っけただけ。そういう食い合わせも考えずに美味いもん同士をくっつけたらええやろ、みたいな発想にすら見える。

極め付けが初音ミクとのコラボレーションですよ。

ボカロシーンには明るくないですが、さすがに俺もボカロの隆盛とかぶる世代の人間ですから、有名どころの動きくらいは多少知ってます。
2014年はハチ (米津玄師) などは遠に退いていて、n-buna、Orangestar などの後発組が席巻していた。
そこで求められていたサウンドともこの『ray』は噛み合わない。
藤くんとミクでデュエットしてましたけどあれも全然馴染んでない。いっそのこと楽曲提供という形で「初音ミクの曲」を作ったほうが良かった。
「オタクに媚びた」とか言われてましたけど、いや古参への目配せばっかりですよこれ。バンドサウンドに未練たらたらですもん。「行儀の良いアニソン」にすらなってない。そして日本の「行儀の良いアニソン」はこの『ray』より遥かに質が高いです。

結局これ以降別にボカロシーンとの接続もなく、それでも影響力はでかいから台風みたいに荒らすだけ荒らして過ぎ去っていく。何もかもが中途半端。

とりあえず俺の『ray』への呪詛はこの辺りで終わりにしておきます。

あくまでサウンド面への言及に留めましたが、それは俺の評価基準に沿っているだけで、歌詞やメッセージ性の部分でこの曲を好意的に捉えている方がいることは否定しません。伊達に5600万回も再生されませんから、優れたものがあるのは確かです (売れてるから駄作だと言いたいわけではないことは強調しておきます。売れてるものには何かしら良いところがあります)。

ただこの曲 (サウンド) がかっこいいと言う意見とはもうバチバチに対立する構えです。バンドサウンドに戻ってほしいよねって意見とも対立します。BUMPはもっとかっこいいものを作れるし、新しいものを意欲的に取り入れてきたバンドでもあるからです。



4. サザンクロス


ほら、めちゃくちゃかっこいい。
こういう曲作れるんですよ、『ray』だけは何かの気の迷いであってほしい。



5. ラストワン


やったことないリズムに挑戦した感じ。
ただ、ちょっとサビが弱いかな…。



6. morning glow


これ大好き。
イントロのリフめちゃくちゃかっこいい。
『Norwaygian Wood』を思わせるミクソリディアンのメロディーライン。BUMPお得意のkey=Gの開放的なサウンドがめちゃくちゃ映える名曲です。



7. ゼロ


神曲of神曲。
BUMPの全曲の中でも5本の指に入るくらい好き。

これがあるから『RAY』の評価下げたくないんですよ。
『オンリーロンリーグローリー』の項でも述べたように、この曲には藤くんのメロディーセンス、コードワークの粋がつまっています。

サウンドの構築もまた素晴らしい。
壮大なバラードではありますが決して重すぎず (ウドゥの軽妙なサウンドが一役買っている)、キャッチーなメロディーと祈るような歌唱のバランスが絶妙です。

イントロのアルペジオ、初心者時代にめちゃくちゃ練習したの思い出す。

【 C - C△7sus4 - G/B - Am7 Am7/G -F - C/E -F - Gsus4 G 】
サビのこの流れが好きすぎる。カノン進行のちょい変則バージョン。

んでCメロの
【 B♭6(9) - F/A - Fm/A♭ - C/G - D/F♯ G/F - C/E Fm - C/G Am7 - F  Gsu4 G 】
からのハーモニカって流れがマジで神がかっている。

ラスサビで並行調Amを意識して【 Am - F/A -G/B - C … 】
ってやるとこもマジで最高。

この『ゼロ』だけで誇張抜きに夜通し語れるんですけど (各セクション、楽器構成、サウンドメイク)、それをここに書き起こすともう字数がエグいことになるので渋々割愛。



8. トーチ


この曲、『FLAME VAIN+1』でやり切れなかったことを取り返したんじゃないかって気がするんですが、どうでしょう?
シンプルな8ビートで真っ直ぐな曲を今の完成度でやりたかったのではないかと。



9. Smile


実はシングルリリースの弾き語り版の方が好き。

これはちょっと冗長なアレンジと言わざるを得ない。ライブ版の藤くんのギターソロはかっこいいんだけどね。



10. firefly


かっこよすぎるでしょうよ。

夢追い人ではなく夢諦めた人への応援歌。
 
昔のBUMPとは正反対のメッセージ性ですけど、『ユグドラシル』あたりから積み上げてきたBUMPらしさの延長にあるとは思いますね。ただ『才脳人応援歌』あたりのシニカルさは緩和された印象。

今更ですけどBUMPのグロッケンの使い方いいですよね。
程よいキラキラ感。これくらいが良いと思います。



11. white note


ライブ演出で音ゲーやってんの笑った。
そんな教育番組みたいなことやり始めたんかってなりました。



12. 友達の唄


「唄」シリーズの最高傑作では?

BUMPでは超珍しい短3度上 (key=A → C 、実際はA♭ → C♭) の転調。そういや『飴玉の唄』もkey=D → F だから、『orbital period』からは「唄」系では転調するとか決めてんのかな ? (早計)

ストリングスのアレンジがっつりなのは『魔法の料理』以来ですけど、こっちはホーンセクションまであってなかなか豪華。

映画主題歌なことも手伝って、ちょっと大仰すぎやしないかと思わなくもないですが、1、2曲くらいこんなんあっても良いと思います。


13. (please) forgive


めっちゃリバーブ効いてるけど、これが一番80sを意識してんじゃない?
 
良い曲だけどこのアルバムからは完全に浮いてる。



14. グッドラック


これと『友達の唄』の両A面シングル感すごい。

C、F、Gのスリーコードをいじくってどこまで広がりを作れるかに挑んだのでしょう。【 C G/D -  C/E F - C/G D/F♯ - F Gsus4 G 】のように、合間合間にオンコードを挟みつつベースラインを上げたり下げたりするやつ。

この曲あたりからBUMPってAメロ、Bメロ、サビの構成に明確な起伏を敢えてつけないようにしてますね。過去にもそういう曲はありましたが、それは技術不足で結果そうなった面が強い。ですが『グッドラック』の頭からケツまで流れるような作りは完全に意図的だと思います。



『Butterflies』完成度6位/好感度8位

はい、 完成度、好感度ともに下位であることからも分かるように、このアルバムにもポジティブな感想は持てません。
『RAY』から2年後のリリースということで、『RAY』以上にエレクトロポップ要素が強くなってるわけですが、まぁそれを『RAY』の時にやれよ!という曲が多すぎる。

あとバンドサウンド寄りの曲も中途半端にあるのも足を引っ張っている。
改めて聴いて思ったのはこの『Butterflies』と『RAY』からそれぞれバンドサウンド、エレクトロポップの曲をそれぞれ仕分けしてまとめた方が統一感ありませんか?

後出しじゃんけんも甚だしい言い草ですが、どうせなら前後2枚を合わせたくらいの制作期間 (ただでさえリリースペース遅かったのに) をとって、バンドサウンドアルバム、エレクトロポップアルバムで2枚同時リリースとかしたら良かったのでは?

あともう一つ問題として、このあたりからタイアップの要請に応えまくったせいで、統一感を欠く寄せ集め感が出始めているのがネック。

タイアップそれ自体が悪いというわけではなく、するならするなりでリストを工夫してほしい。

 


1. GO


はい、キラキラサウンド。

いや良い曲ですけど、これ『RAY』でやってよ。



2. Hello,world!!


『血界戦線』は3期ないんですかね…。

ちょっと『カルマ』の二番煎じ感があるんですよね。『カルマ』より完成度は高いし、展開も全然違うんですけど。

一聴して曲調に差異が認められない曲を作り出したのがこの辺りからだと思います。ずーっと『orbital period』を引きずってる感。そこに『RAY』でのアプローチが拍車をかけている。



3. Butterfly


なんでバンドサウンドと打ち込みを交互に挟むんだ。

そしてなんだこのとってつけたようなディスコサウンドは。
『EZ DO DANCE』やりたいんか?

なんか4つ打ちトラップすりゃええんじゃって雑さがある。



4. 流星群


サウナ!水風呂!反復横跳び再び。

『Butterflies』はタイアップの合間合間に挟む曲の立ち位置が全然ハマってなくて、1曲ごとに違うアルバムかけたんか?と思います。



5. 宝石になった日


これすごく良い曲。

リズムギターは全部カットして、ギターサウンドは極力排除する姿勢。
これを『RAY』の時にやってくれ。
もう基本的に「『RAY』の時にやれ」がこのアルバムへの所感です。



6. コロニー


映画のリリースと逆の曲順にした意味is何?

これ聴いた後に『パレード』始まるの意味わからん。
こういうのはそのタイアップ先のコンテンツを想起しながら聴いたりするもんだから、変に順番をいじったら余韻もクソもないでしょ。



7. パレード


ヘンテコプログレ (プログレはヘンテコだろ!)。

マジでこの曲順なんなん?



8. 大我慢大会


もう何がやりたいんですか!?

サビでガレージロックっぽくなるのは結構好き。



9. 孤独の合唱


良い曲。
でもこれはじに追いやられてるでしょ。



10. You were here


がっつりメッセージソングですけど、ライブ行ったことないので特別響くものでもないです。

ただリズムセクションの作り方は1番かっこいいと思う。



11. ファイター


『3月のライオン』は好きだし、この曲も良いOPだなぁとは思ってましたけど、もうここに置いといたれって感じがすごい。
『You were here』でオチはついてるから、ボーナストラックみたいになってる。



『aurora arc』完成度7位/好感度9位

やっと辿り着いた!最新リリース!!

そして完成度7位!好感度最下位!!

まあ異論はたくさんありましょうがまずこれですよ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Aurora_arc

正気かよ?

全14曲中12曲タイアップ。
しかも1曲目はインストだから、実質このアルバムに書き下ろされた曲は1曲だけ。統一感もクソもない寄せ集めアルバム。

そんでもって悲しいのが、どの曲もめっちゃ完成度高いし良い曲ではあることなんですよ。
でもほとんどの曲聴いたことあるっていう。タイアップ先のコンテンツ全部知ってるわけじゃないですが、アニメ好きなんで全然耳に入ってくるし、CMでバンバン聴くんですよこっちは。

本当に誤解されたくないので念押ししますが、俺はこのアルバムを「商業主義に魂を売った」とか「こんなのはロックじゃない」とかそういうポエティックな批判をしたいわけじゃないんです (マジで"その手"の連中とは距離を取りたい)。

むしろ商業主義を徹底してほしいんですよ。
要はタイアップがこんだけ重なって、スケジューリングも困難で、新曲を詰め込んだアルバムが作れないってんなら、「タイアップ集」みたいな形でコンピレーションアルバム出せば?ってことです。

そんでそいつに稼いでもらってる間に、ちゃんと「オリジナルアルバム」を作ってほしい。

俺が不満なのはこれが「オリジナルアルバム」としてBUMPのキャリアにカウントされていることであって、決してタイアップすんのやめろ!とか言ってるわけではないんです。

今までのアルバムだってタイアップはあった。でもそれはアルバムに占める割合が小さくて、曲順の工夫で1枚通して聴かせられるようになってたからですよ。『ゼロ』は名曲だし大好きです。

このアルバムを高く評価するのは無理です。
1曲ごとの完成度は高いので、それでギリギリ7位。
でも好感度はダダ下がりです。なんでこうなっちゃったんだ。



1. aurora arc


このインストは世界観の提示なんでしょうけど、これでまとまりを出そうとしたんですかね…。



2. 月虹


『からくりサーカス』、原作読んでないけどアニメがめっちゃ駆け足だったのは分かる。

これほんまめちゃくちゃかっこいい。

ベースがえげつない。マジで全リリースの中でもトップレベルにかっこいい。

構成もめちゃくちゃ良いです。
2番の展開の付け方も好き。



3. Aurora


チャマ不在の時期ですよね。
だからなんだよって感じですが。

この曲のどこサビなん?感すごいですよね。
いやきっちりABサビ形式じゃなきゃダメ!!って言いたいわけではなく、なんかそれをサビにしたいの?流れで聴かせたいの?って右往左往させる感じというか。

実験的とか挑戦的とかそういう言い方もできるんでしょうけど、なんか単に気持ちよくないのは否定できませんね。



4. 記念撮影


これはFutureBass意識してんのかな?

なんかようやく電子音楽をそれなりに扱えるようになった感じはあります。
でもとにかく思うのは「聴いたことあるなこれ」っていう…。
初めて聴くアルバムのはずなのにね…。



5. ジャングルジム


初めて聴いたこれ!!

藤くんの弾き語りやん。

でもなぜここに?めちゃくちゃ合間埋める感じですけど…。



6. リボン


CMでめっちゃ聴いたことある!っていう。

僕らを結ぶリボンは 解けないわけじゃない
結んできたんだ

そうね、「繋いだ手は離せるよ」ですもんね。



7. シリウス


『重心機パンドーラ』はこれ聴くために視聴して、おもんなすぎて1話切りしました。

イントロのギター、流石に手癖で作りすぎでは?
『カルマ』と『Hello,world!!』の合いの子みたいな。



8. アリア


オーオーってやってたら良いやろみたいなとこないか?
でも好きですこの曲。

イントロのベースの入り方最高。
8分の細かい刻みで引っ張るの実直でかっこいい。



9. 話がしたいよ


映画は見てませんが、宣伝でめっちゃ聴きました。
テレビでも歌ってましたね。

知らんバンドの曲を歌ってる感がすごい。
多分聴き慣れてないからというのもあるけど、key=B♭で今までBUMPが選択してこなかった音域で歌ってるからだとは思う。

なんで年取ってからの方が声高いんだ…?



10. アンサー


『3月のライオン』でさんざん聴いた。



11. 望遠のマーチ


この曲好き。

なんかもうこういうシンプルなコード進行でダーッと行くスタイルに振り切ったら良いのでは?
アルバム全曲3コード!!8ビート!!ルート弾き!!みたいな。



12. Spica


すみません、これよりも良いFutureBassはいっぱいあります。
てかこれそもそもFutureBassか?

スクラッチ雑に入れすぎ。



13. 新世界


BUMPはラブソング(恋愛に限らない愛情) を普通に歌ってきたと思ってるので、「ベイビーアイラブユーだぜ」でびっくりすることはないです。もっとど直球の“ラブ”を歌ってるやつがなんぼでもある。

これ自体はめちゃくちゃ良い曲です。



14. 流れ星の正体


メロディーの外し方 (調性からの逃れ方) を模索したのでしょうが、冗長になって訴求力を失っては本末転倒と思います。




おわりに


さすがに後半はボロカス言い過ぎた!!
しかし正直な気持ちなのでそこは一切後悔しません。

ごちゃごちゃと言いたい放題しましたが、やはり改めて聴いても本当にすごいバンドだなということを数えきれないほど思い知らされますし、そしてなんだかんだBUMP大好きな自分に何度も気付かされました。

この記事書くために改めて何曲かコピーし直して弾いて歌って、めちゃくちゃ楽しかったし、BUMPやっぱすげぇわって感心させられっぱなしでした。

今回評価が芳しくなった曲も数年後とかに聴いたら変わったりするでしょうし、実際昔はピンときてなかったけど今聴くとめちゃくちゃ刺さるわって曲はいくつもあったので、「仲直り」ができることを楽しみにしておきます。

最後に、ここまでこんな長ったらしい乱文にお付き合いいただいた方への感謝と、そして今なお第一線で音楽を作り続けている素晴らしいバンドであり、俺の人生の切り離せない一部であるBUMP OF CHICKENに感謝を!

ありがとうございました!!


お茶濁しはこちら。


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