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一年ぶりの既婚者パーティー

3話 ハイライト

その中で印象に残っている2人組の男性がいた。

15名の男女はそれぞれ3名ずつ5つのグループに
振り分けられている。
女性はスタッフに指定された席につき、
終了までその席で過ごす。

男性は3名1組で30分おきに
女性の向かい席にお盆に乗せた食事を持ちながら
移動して食事する。

彼らは2巡目のグループだった。

彼らが移動してきた時、
一人の男が椅子取りゲームのように
いの一番に真ん中に座っているさちこの前に
席を陣取った。
男は席に着くと
「俺、ここ。いいでしょ?」
と隣の相方にボソッと合図していた。

その一瞬を見逃さなかったさちこは
彼が自分を気に入ったので強引に自分の前に
座ったのではないかと思った。

前に座った男がさちこの目を真っ直ぐ見て言った。

「今日は友達に誘われて
3人でくるはずだったですけど
その誘った奴が来れなくなって2人で来たんです。」
「そうなんですか。」

その男は他のお疲れ感満載の男達とは違って
物おじすることなく
すごい目力でハキハキ話しかけてきた。

まさに可もなく不可もなく、
えなり君タイプの友達としては良いかな、
という恋愛対象外のタイプだった。

「お仕事何系ですか?」
「不動産系です。」
「売買されてるんですか?」
「主には管理です。」
「へえ。すごいですね。」

(不動産か、残念。ないな。)

さちこはこれまでの活動で
不動産関係の仕事をしている男と
自分は性格が合わない、
ということがよくわかっていた。

「大阪出身?」
「あれ?バレてる?笑」
「大阪弁出てるよ。笑」
「出てないはずやけど。笑」
「出てる出てる。俺大阪の人好き。」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます。」
「じゃあ野球はどこが好き?」
「特にない。笑」
「えー、俺阪神ファンなんですよ。
阪神ファンって言ってくれるかと思って。」
「野球そんな興味ないんで。笑
まあそれ期待されて聞かれてるのは
めっちゃわかりましたけど。笑
あえてのね。笑」
「面白いね。さすがだわ。もっと話したい。」

あっという間に5分前になり
司会者のアナウンスが入る。

「あと5分で席替えとなりますので
連絡先の交換は時間内にお願いいたします。」
「あらもうそんな時間?!」
「あっという間でしたね。」
「ライン教えてください。」
「いいですよ。はい。」

さちこはスマホでラインのQRコード画面を
彼に見せた。
彼が登録し終わると相方の男も話しかけてきた。

「俺も交換してください。」
「いいですよ。はい。」

その男はすごく背が高かった。
女性は座ったままであるから
男性の背丈は分かりにくいが、
彼は移動してくる時に目立つほどに
背が高そうだった。

おまけに顔は濃いタイプのイケメンで
笑うと母性をくすぐるような可愛らしい印象で
好感は持っていた。
ただ着ていた茶色のリネンのシャツが
異常なほどに皺だらけだったし、
向かいの男が積極的に話しかけていたので
彼とはほとんど直接話せなかった。

「すみません。なんかうまくいかなかった。
もう一回いいですか?」
「はい、どうぞ。」

(大して会話していなかったのに
そんなに私とライン交換したいのか?)

彼のえらく積極的な態度に驚いた。

「すみません。ライン苦手で。。。
どうやったらいいのか。。。」

彼の困っている姿になんとも母性本能をくすぐられ
さちこは咄嗟に親切心を出してしまった。

「まず、ここ押して。。。そうそう。
で、次にここ押して。。。」
「うん、うん。。。」
「そうそう、そしたらほら、これでオッケー。
これでメッセージ送れるよ。」
「ほんとに?これでいいの?」
「うん。」
「ありがとう。」

彼は嬉しそうに席を立ち、
向かい席に座っていた男は
名残惜しそうに席を立った。

さちこの向かい席に座っていた男と彼は友人だが
女性の好みのタイプが全く異なると言っていたので
背の高い彼は自分が好みでラインを聞いてきた
のではなく
ライン登録の仕方を教えてもらいたかっただけ
なのかと思っていた。

それでも後にも先にも
一番楽しくみんなで盛り上がったのは
このグループの時だけであった。


4話に続く。。。

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