【美術】写実主義とクールベ
5日目は写実主義とギュスターヴクールベについて。
私は天使を見たことがない。もし見せてくれるなら、描いてみせよう-クールベ
ルネサンス以降、イタリアの後塵を拝していたフランスが美術史の表舞台に躍り出ます。ナポレオン3世の第二帝政末期になると、パリは180万人規模の大都市になります。産業革命も完成に近づき、一気に近代化が進みブルジョワジーが増える反面、人間関係の歪みや売春婦の増加など、人間の「陰」の部分もより顕著に見られるようになります。
そのような時代を捉えたのが、クールベをはじめとする写実主義の画家たちです。それまでの古典主義は理想化された世界や人間を描くものでしたが、クールベらは現実の人間や社会を極めて客観的に描こうとしました。したがって、描かれるのは神話の神でも英雄でもなく、その時代を生きた労働者や農民、市民の現実です。
有名なこちらは『世界の起源』という作品です。描かれた女性は女神でも神話の人物でもありません。純粋な「美しさ」ではなく、見たままの「生々しさ」を描いたのです。
すなわち、「芸術=美しいもの」という固定観念を破壊したのです。
タイトルのキャッチャーさと画面のインパクトの強さはありますが、クールベは純粋に至高と考えてこの作品を描いたのかというと、正直疑問です。彼はこの作品を、エロティックな絵画のコレクターから依頼されて個人的に描いており、まさしくポルノとして楽しむ目的で描かれたと思われます。
もっとも、目に見えるものしか描かないという彼の態度は以降の芸術に大きな影響を与えていくことになります。
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