双騎出陣の解像度を上げるためのメモ

 8/29よりミュージカル『刀剣乱舞』 髭切膝丸 双騎出陣 2020 ~SOGA~がスタートしますね! やったー!!! わたしは感染症対策を万全にして現地で観劇する予定です。やったー!!! お席は二階の最奥ですけれども!

 この記事では、双騎の解像度を上げるために集めた情報をまとめたり、気が付いたことをメモしたり、感想を書きなぐったりしています。
 わたしは円盤を見てからはまった出遅れ組でして、必死で情報をかき集めました。映像を見ながら書いた部分もあるので(というかほとんど見ながら書いたかも)、うめき声混じりですがご容赦くださいませ。

双騎出陣とは?

 ミュージカル刀剣乱舞より、髭切膝丸の源氏兄弟が二振りのみで出陣する舞台です。

 それまでの刀ミュは、元主と対面してしまったり、仲間とぶつかったり……というシナリオだったのですが、双騎は少々毛色が違います。日本三大仇討のひとつとされる「曽我物語」を髭切と膝丸が演じる、劇中劇的な作品になっています。「曽我物語」は実際に起こった事件をもとにした作品で、兄弟である十郎と五郎が、およそ十八年の時を経て、父の仇である工藤祐経を討つというストーリーです。双騎ではオリジナル要素も多々ありますが、大筋はこれと同じです。

 構成は他の刀ミュ作品同様、一部が芝居パート、二部がライブパートとなっています。

 この記事で扱っているのはほとんど芝居パートです。
 曲目ごとに区切って書いていきます。お付き合いいただけると嬉しいです。

登場人物

曽我十郎祐成(幼名:一万):髭切(三浦宏規さん)
曽我五郎時致(幼名:筥王):膝丸(高野洸さん)
工藤祐経:丸川敬之さん
瞽女、母、別当:加納幸和さん

さて、ここから本編について語っていきますよ!
履修済の方向け・ネタバレ満載となっております!

導入部

 雷雨の中、瞽女が登場します。

ご‐ぜ【瞽=女】
《「盲御前(めくらごぜ)」の略》鼓を打ったり三味線を弾いたりなどして、歌をうたい、門付(かどづ)けをする盲目の女芸人。民謡・俗謡のほか説経系の語り物を弾き語りする。
 ─デジタル大辞林(weblio国語辞典)より

 加納さんは様々に役を演じ分けていらっしゃいますが、瞽女のときは常に目を瞑っておられますね。
 この瞽女は楽器を持ってはいませんが、彼女が語る場面ではいつも三味線の音が入ります。「曽我物語」が今のように歌舞伎などで上演されるようになる以前は、この瞽女などによって語り継がれてきたのだそうです。

 そして兄弟の登場。
 仮面を着けて登場する演出、とても良きですよね!!
 ボロ服に御札……あれはなんの御札だろう……? よく見ると髭切・膝丸って書いてあります。セリフでもこの二振りの名前は一切出てこないのに、なぜここで……? 考察ポイントですね(わたしにはよくわからない)。
 暗くて判然としませんが、このボロ服、ダンサーさんのお衣装と似ている気がする。なぜなんでしょう……? 名前の御札がついてないので、ダンサーさんのほうは名もなき付喪神……だったりするのかな。
 [追記]再演の配信を観たところ、はっきりと同じお衣装でした。ちなみに「コロス衣装」と呼ぶのだそうです。コロスって何?と思いましたが、合唱の「コーラス」と同じ言葉のよう。

コロス【(ギリシャ)choros】
古代ギリシャ劇の合唱隊。劇の状況を説明するなど、進行上大きな役割を果たす。
 ─デジタル大辞林(weblio国語辞典)より

 そして、ボロ服を取ると一万・筥王の水干衣装に。牛若丸が着てそうなイメージ奴だ。水干は動きやすいため子供服として用いられていたらしいです。 
 ピンクの色味と首元の紐の色、袴を括る位置、後ろの生地の形?がちょっと異なってますね。袖口のラインも色が違いますね、髭膝カラーだ😊 腰元のカラフルな意匠もそれぞれ違いますね。私にはあの意匠がなんなのかさっぱりわかりませんでしたが、↓のツイートが大変参考になりました!

(この方の双騎に関するモーメントがありまして、非常に興味深くて面白いです。大好きで何度も見に行ってしまう……。→「双騎出陣2019関連の豆知識・考察など」)

 振付も独特で素敵ですよね、ふたりのアンサンブルでひとつの踊りになるというか。Dazzleさんは複数人で魅せる振付をしますね。良き……🙏🙏
 そして演者さん二人の基礎になってるジャンルの違いがもうここで表れていて最高です。同じ振付なのに印象がぜんぜん違う……!

 歌舞伎において、五郎は荒事、十郎は和事で表現されるそうです。荒事は荒々しく男性的、和事は柔らかく女性的なのだそう(詳しくないから「だそう」とか「らしい」とかばっかりになっちゃいますね……😭)。
 演者さんの得意分野の違いがこの荒事・和事の違いにも通じていて、なんとも言えないハーモニー………。これはたいへんエモいですよ。

『いちまんとはこおう』

 中身成人男性とは思えぬ可愛さですよね……すごい……可愛い……(語彙力喪失)。

 歌詞の「ててふふてふてふ」は蝶だけど、「ちろりとりんりん」は千鳥…?
 ふたりの衣装には蝶と千鳥モチーフがついていますが、歌舞伎の衣装でも五郎には蝶、十郎には千鳥が用いられるそう。原作(真名本のほう?)にも蝶と千鳥の柄を身に着けていたという記述がある、らしいです。というか、その記述を元に歌舞伎の衣装ができているみたい。かつて歌舞伎では『曽我物』というジャンルができるほど人気で、蝶といえば五郎、千鳥といえば十郎。それくらいド定番の柄のよう。
 ふたりの肩付近にある赤と白の文様も歌舞伎衣装からきてますね。二部衣装でもこの赤と白は用いられてます。

『遠き雁が音Ⅰ』

 歌詞にある「十三日目の月」、つまり十三夜月って三日月と逆の形なんですよね。「つはもの」で髭切が三日月を見上げて「見えない部分も月なのかな」と言う場面がありますが、このときに見えてた部分が見えなくなって、見えなかった部分が見えてる状態が十三夜月。三日月宗近となにか関係があるのでしょうか🤔 もしくはそうじゃなくて「三日月宗近は今回関わってないよ」という意味? 刀ミュ君は三日月宗近匂わせを何度もやっているので気になってしまいますね……。
 [追記]三日月の逆は正しくは「十七夜月」だとご指摘いただきました!失礼しました~!あれ……じゃあ三日月宗近関係ない……?🤔

 そして雁の描写が出てきますね。雁が日本に渡ってくるのは秋ですし、舞台のススキには穂がついている。これも秋ですね。

 ……………………………………………………………………は〜〜、ちっちうえ🌸の周りをぐるぐるするいちはこちゃん可愛すぎます……んんん…ちっちうえ🌸

 さて、このあと所領争いの中でちっちうえ🌸が工藤祐経に射殺されますが、この争いの原因、いちはこちゃんのお祖父ちゃんなんですよね……。この舞台、「工藤」「河津」「曽我」といろんな苗字が出てくるのでややこしいですが、ここで出てくる工藤と河津は同じ一族と考えていい……のかな。いちはこちゃんのお祖父ちゃんが河津氏の祖らしいので。
 祐経の衣装には工藤の家紋である「庵木瓜」があしらわれていますね(ところでこのボロボロの舞台セットは庵か……?)。[追記]「破れ寺」というらしい。

 射殺された父上のもとに駆け寄る一万、帯刀しています……!子ども用なので短い(副音声情報)!! 『いちまんとはこおう』『遠き雁が音Ⅰ』では刀を差していなかったので、少し成長したのかな。筥王はここでもまだ差していません。冒頭からこの場面までで一年くらい経過している気がします。

『もう一度 もう二度と』

 ダンサーさん方の連携が見事だなあ。父上の面影を探すようにちょこまかしている筥王ちゃんが切ない……。

 ダンサーさんに導かれて去っていく父上。舞台右上から退場していきます。

 そして曽我家に入る兄弟ですが、新しい父上を前にお兄ちゃんの背中に隠れているのがあまりにも愛おしい……。そしてなおも泣きわめく筥王ですが、「ちちうえが悲しむぞ!」とお兄ちゃんに涙を拭われた途端に笑顔になるの、尊すぎませんかね……。お兄ちゃんのほうは「無念を晴らす」と心に決め、表情が凛々しくなってそれはもうかっこいいです。

『遠き雁が音Ⅱ』

 『遠き雁が音Ⅰ』と同じ様にいちはこちゃんが並んで座って歌う所がありますが、Ⅰと違って後ろには両親がいません。母上は生きてるのに。いなくなったのは父上だけなのに、両親ふたり共いない。母上と兄弟で想いが違うからでしょうか……。

『ひたむきな花〜寄り添うべきは…』

 筥王が手持っている花、これは竜胆ですね。歌詞に「だれの悲しみに寄り添うの」とありますが、竜胆の花言葉に「悲しんでいるあなたを愛する」というのがある。なんか似てる。
 『遠き雁が音Ⅰ』の直前で筥王が母上に手渡している花、あれも竜胆でしょうか。同じ花に見えますね🤔
 竜胆は源氏の家紋にもなっている花。髭切と膝丸の刀紋にも取り入れられている花!!
 ちなみに雁や穂のついたススキと同じで、竜胆の季節も秋です。

 しかしここ! 振り付け!! すばらしい!! いちはこちゃんの心を写す影のようなダンサーさんとのアンサンブル!! 最高です!!
 一万の肩に乗る手がだんだん増えていくのが、彼の決意がどんどん確固たるものに変化していく様のよう。
 そして子どものお稽古なので腰が落ちてない、拙い、かわいい!!

『ひたむきな花〜寄り添う心〜』

 初心者すぎる筥王に稽古をつける一万お兄ちゃん、頼もしくて素敵。
 ここのお稽古、みほとせ再演を見て知りましたが、吾兵と大倶利伽羅の稽古と動きが同じなんですね……なぜ……? わたしにはわからない、わからない……。

 「兄上はきっと知らないでしょう」「お前はきっと知らないだろう」こういう関係好きすぎて、何度聞いても震えてしまいます……!
 「しゃんと立つ背中を〜」でくるっと回転するお兄ちゃんに、「おおお……!」という顔で尊敬のまなざしを向ける筥王が可愛すぎる〜〜!!

 拙すぎる筥王ちゃんの動きの表現、すごいですよね。もっと先のシーンまで見るとわかりますが、この動きもどんどん成長して立派になっていくんですよね。こんなにへたくそだったのに……😊
 短いお芝居の中でもぱっと見てわかるくらいの変化をつけられるって、表現力がすごい。というかこの曲中でも木刀の扱いがどんどんうまくなってるんですよね……!!

 曲が終わって母上に跪くところでも動きが拙いんだな〜〜かわいいな〜〜〜。

 「必ず父上の仇をとりましょう!」と約束した直後に引き離されてしまうの、切なすぎます……。実際には時間の経過があるのでしょうけど。

『私が語るべきことⅡ』

 箱根権現で修業(??)する筥王の場面から、水干衣装ではなくなりますね。
 このとき何歳くらいだろう? 10歳とかですかね……?
 眉毛もぴっとなって凛々しいお顔に! 成長した~!!
 この場面、役者さんの表情の豊かさがいかんなく発揮されていて最高ですね。かわいい~~~~~。
 このおばかな筥王を膝丸が演じているのかと思うと愛おしくてたまりません。かわいい!!
 別当がまた良い味を出していて最高です。無邪気な筥王に対してあのたいそう迷惑がっているお顔。最高ですね。

『あやなす音』

 この曲目、芝居パートの見せ場のひとつだと思います。

 一万が立派な青年になって登場するのがたまりませんね。凛々しい、美しい。声が太くなってビブラートもかけていて、大人の歌い方になってますね!

 筥王が膝丸ではない刀を差しているのはこの曲の間だけ。よく見ると、黒の鞘に銀の柄巻。一万が白の鞘に金の柄巻なので、対のカラーリングになっています。

 この場面の見どころは何といっても衣装や髪形の変化ですよね。最高です。早替え、見ごたえもありますし美しいし……素晴らしいです。直垂の裾が伸びると元服したなあって感じがしますね。

 傘で隠れながら上ハモしてる弟は強い(強い?)ですし兄者のロングトーンは綺麗すぎ。美しく変化する見た目に気をとられていると、歌のうまさで殴られます。もっと殴っていいのよ。

 お団子ほどきですがあまりにも芸術的ではないですか!?
 簪をぐっと握る場面、配信版だと筥王、円盤だと一万なんですよね。カメラの違いありがとうございます。

 そして兄弟の再会! これもたいへん美しい場面ですね!
 再会の瞬間、ちょっと幼少期に戻ってぴょんぴょんしながら「久しぶりじゃの〜! あにうえ〜!🌸」からの「いやっ……兄者。キリッ」があまりにもかわいい……愛おしい……。

 錫杖と刀の殺陣、かっこよすぎませんか?
 「行くぞ兄者!」と言いながら錫杖を地面にトンッてやるのが、BGMのただひたむきに〜のタイミングと合っていてとても好きです。というかこの殺陣、ずっとBGMとタイミングが合っている。舞かな?
 兄者は殺陣しながらくるくるしますが、さすが軸が安定していて全然ブレなくて美しい。ポニテのひらみも相まって美しい……。

 そしてふたりは別当のもとへ。
 青年期の立ち姿、座り方、何から何まで美しい!
 礼をする際の手なのですが、兄者がパーで弟がグーなんですよね(地面に拳を付いて頭を下げるときは兄者もグーですが)。
 細かい違いですが、髭膝にも曽我兄弟にもこの違いが似合っていて大好きポイントです。

『巣立ちの舞』

 『巣立ちの舞』、世界で一番美しい舞ですよね!!(※個人の見解です)
 芝居パートの見せ場、その二ですね。円盤の全景映像、本当にありがとうございます。

 母上の元を訪れる兄弟。
 衣装は裃(かみしも)に。
 裃というのは仕事着らしいので、つまり現代で言うところのスーツになるのかな?
 ピンクの子ども着できゃぴきゃぴしていた我が子が、立派な青年に成長してスーツ姿で今生の暇乞いに来る…………つ、辛………。
 [追記]仕事着というよりは武士の正装かな。歌舞伎や能でも身に着けることがあるようですが、舞台衣装を意識したものというよりふたりの決意の表れである、という解釈をしたい。

 この裃、プリーツがついてるので舞ったときのひらみが至高です。素晴らしい。
 そしていつもの二部衣装の如く兄者のほうが若干長いです。ポニーテールとプリーツのひらみがあまりにも美しい。カラーも髭膝のジャケットと同じ色でよいですね。

 兄者の舞パートが長いのは、兄者のほうが長く母上にお世話になっていたからかな。
 兄者から弟に入れ替わるときの動きのスムーズさが何度見ても好きです。

 赤い打掛(?)を纏った母が舞うときの兄弟の歌、「果たすべき悲願…」の箇所、音が! 低い! 一部二部合わせた中でも最低音ではないですか? こんなに低いところ他にありましたっけ? 亡き夫を思い出し赤い打掛(?)で舞う母に合わせて歌うのが、こんなに低い音とは……男性みを突きつけてくる……うう、立派な青年になりました……。
 からの、この低い音からの、高音!!!! あ、あ、兄者〜〜!!!! 「舞をひとさし…」の上ハモ!!! なんて爆発力なの!!!!! 美しい!! 美しい!!!!

 舞が終わった後「仇討ち、立派に努めて参られよ」と泣く母を前に、弟がちょっと幼少期に戻ったようなしぐさと表情を見せるんですよね……この日の五郎と母上っていつぶりに再会したんでしょうか……。十郎の「お元気で」も辛すぎませんか? 何度見ても泣けます……。

仇討ち決行

 (他は曲目ごとに分けて書いていますが、大きなセクションですので、仇討ちの場面は独立させようと思います)

 ついに仇討ち当日、建久4年5月28日夜へ──

 兄弟が登場時に詠む「ちはやぶる~」「あまくだり~」という句は本来討ち入り前に箱根権現で詠んだもの。「明日は仇に逢ふ瀬結ばん」なんて言っているので「明日? 明日なの??」ってなっちゃいますが、それはそれとしてここで詠んじゃう演出はかっこよくて好きです。

 冒頭でも書きましたが、歌舞伎において十郎は「和事」、五郎は「荒事」で表現されるそう。
 和事は女性的で柔らかく、荒事は男性的で荒々しいという感じ。化粧でもこの違いが表現されています。
 ↓こういうの。
 http://enmokudb.kabuki.ne.jp/phraseology/3313(ちなみに和事荒事
 殺陣も五郎のほうが荒々しくて重心も低く、十郎は美しくてジャンプに高さがあって軽やかですね。

 あんなにかわいくてへたくそだった筥ちゃんがさあ……こんなに荒々しい戦い方するようになっちゃってさあ……腕もこんなに立派に(感涙)。
 暴れまわるポニテが美しい~~~!
 射られる兄→気遣う弟を矢が刺さったままの肩で振り払う→兄「われら兄弟の悲願ぞ!!」→弟「……わかった。(振り向きざま)死ぬなよ」→兄「(ポニテファサッ)……ああ!」
 この流れ好きすぎます!! からの兄者の殺陣~~!! 美しくも鬼気迫る殺陣~~~!!!
 肩甲骨取れなくてよかったね……!(副音声ネタ)

 兄が刺される瞬間、配信版だと映っていませんが、円盤だと十郎のお顔が……がっつり映っていて……見ているほうが死にそうになります……。

 兄弟によって討たれた祐経は、舞台右上の扉から消えていきます。父上が亡くなった時と同じ場所からの退場ですね。

 五郎が切られてぼろぼろで膝をついてしまったとき、十郎がぐっと襟首をつかんで無理やり立たせますが、祐経を討ち果たした後十郎がふらついたとき、五郎が肩口をぐっと掴んで支えようとするんですよね。そうやって同じことするんだから……。

『再びの雁が音』

 兄は「空耳だろうか?」と歌い、弟は「空耳ではない」と断定的に歌う。
 雁が飛ぶのは秋ですが、仇討ちの日は旧暦の5月28日。2019年でいうと6月30日。全然秋じゃない。雁の季節じゃない。

 ではあの鳴き声は?
 ここは考察ポイントのひとつだと思うのですが、私の解釈だと「幼少期に兄弟が家族を重ねて見ていた雁のほうもまた自分の家族を一万・筥王に重ねて見ていた。その雁が曽我兄弟を迎えに来た」んじゃないかなあと思っています。あくまで個人の解釈です。
 幻聴なのかなとも思いましたが、そうすると弟が「空耳ではない」って断定しているのが気になるので……本物の生きてる雁の声ではないだろうけど幻聴でもないとしたら、お迎えかなあ、と。
 だとしたら、二部の女形はこのときお迎えに来た雁だったりして。
 「巣立ちの舞」で「あの雁の子らがいま…」と歌うときの母上が羽ばたくような動きをしていて、二部の女形と同じ動きなんですよね。あの女形は雁なのではないでしょうか……?

 ところで「あやなす音」の「手を取り合えばもう一度聞こえるだろうか」ってこのシーンの伏線だったり……しませんよね……? 倒れ伏す兄、支える弟、弟の手を握る兄……。

 兄弟が息絶えると雨の音が聞こえ始めますが、討ち入りの日はずっと雨だったそう。

 そしてエンディングへ。
 瞽女が「さて、それも今となっては詮無き事」と言いますが、「今」とはいったいいつでどの時系列なんでしょうか?

 瞽女の語りの途中でカラカラした音が入りますが、これ、みほとせ再演でも使われてた音ですよね。たぶん風車の音。「風は季節を巡らせる、令和の世まで…」ということでしょうか。

瞽女は何者なのか?

 冒頭では「何年も何百年も忘れてはおりませぬ」という台詞があります。
 『私が語るべきことⅠ』では「彼らとともに語り継ぐ、それが私の役割でございます」とも言っています。

 「彼ら」とは髭切・膝丸を指しているのか?
 この瞽女は、悠久の時を超える刀剣男士のように、人間とは異なる存在なのか?

 それとも、もしや、もしや……虎御前なのでしょうか……?
 虎御前というのは曽我十郎の妾であり、彼女が曽我兄弟の話を後世に伝えたとされています。
 「御前(ごぜん)」という言葉は「瞽女(ごぜ)」に通じているそうです(※ウィキ情報)。

 仇討ち決行日に雨が降っていたことから、旧暦5月28日に降る雨を「曽我の雨」「虎が涙」と呼ぶそうです。この作品の終わりと始まりって雷雨で繋がっていて、この雷雨は明らかに虎が涙。
 虎が雨の中登場する瞽女……うーん、虎御前なのでは……?
 うーん……このあたりの疑問は「この出陣における髭切・膝丸の任務とはなんだったのか」論争に繋がるような気がします……が、はっきりとはわかりませんね!!

余談1

 ところで曽我兄弟の衣装には、髭切:車輪、膝丸:扇と同じデザインが取り入れられています。
 これ、元になっているのは、大山祇神社さんにある頼朝・義経が奉納した鎧(赤糸威鎧と紫綾威鎧)だと思われるのですよね。

 兄者、頼朝由来のデザイン身に着けて頼朝の家臣を討ったの……??
 どういうことなの……??

余談2

 メインヴィジュアルに使用されているデザインがずっと疑問なので、わかる方がいたらぜひ教えてほしいです。

 五郎の「蝶」、十郎の「千鳥」、「梅」、「菊」、それからにょろにょろしたやつ(にょろにょろ?)が「竜胆」でしょうか。もしくは唐草?
 髭切のある北野天満宮さんの紋が梅、膝丸のある大覚寺さんの紋が菊、一般的に源氏の家紋は竜胆で、髭切膝丸の刀紋にも竜胆は使用されている。
 ここまでは作品との関連性がわかるのですが、他に七宝つなぎ文様とそれを分解したもの(七宝くずし?)がデザインされています。なぜこれらが使われてるのかがよくわからないんですよね。
 再演で七宝つなぎ文様は消えているのですが、七宝くずし?は続投していて、蝶千鳥梅菊と同列にデザインされています。
 ならば作品に関わりの何かなのではないか、と思うのですが、さっぱりわかりません。輪郭だけだと鍔のようにも見えますが、何のモチーフでどんな意味があるのか……。
 気になりすぎて夜しか眠れないので、どうかどなたか教えてください……。

おわりに

 ここまで読んでくださった方がいらっしゃるのかどうかわかりませんが、お付き合いありがとうございます。
 明日からスタートする再演、無事全公演終えられることを心から願っています。

関連リンク

公演情報はこちら→ 2019 / 2020

2019公演時の関係者様ツイまとめ → 双騎関連ツイ


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