シャツ分が(全文読める後払い)

『シャツのボタンもとめられない分際が』
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二日前から、四歳息子が入院している。　
特に大したことは無いが、キツ目の風邪を引き､血液検査の結果が思わしくないようで入院。
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今日は入院してから､二日後の土曜日だ。　もう既に息子は元気だ。
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今日は僕が付き添い、病院に泊まる。　
病院に着き、その事実を伝えると、息子は､とても嫌そうだった。　
仕切りに「ママが良い！」「ママと寝る」を繰り返している。
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現在、午後2時。　
もうかれこれ……僕とヨメが交代してから、30分間ほど､息子はゴネ続けている。
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なだめるが､聞きやしない。　
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が……少し経って､おさまった。　
さっきまで､あんなに元気だったのに、何故かベットに横になり……息子……無言。
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こちらに背中を向けていたので、除き込んで顔を見てみる。
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無言で､泣いていた。　
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横になり､声は出さず、涙だけ流していた。
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ワシは､今日初めて見る､親戚のオッサンか！！　何がそんなに悲しいんや！！
毎日､一緒におるやろ！　
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そこから少し経ち、息子は落ち着いた。　冷静さを取り戻したようなので、尋ねてみた。
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「なんで､パパと一緒に寝るのは嫌なん？」と尋ねてみた。
なんと､哀しい質問か……。
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息子が、ゆっくり答える。
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『だって、パパ……躾けてくるやん！』　
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そんなことは､当たり前だ。　
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米粒をこぼしまくって、まともにご飯も食べれない幼稚園児を、躾けない訳がない！！
そんなことは､当たり前だ。　
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シャツのボタンがとめれず､発狂している年小を、躾けない訳がない！！
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躾けられている人間が､今……
躾けている人間に、クレームを言って来ている。
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びっくりし過ぎて、聞き返してしまった。
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『え？……躾け……』　すると息子。
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「うん、躾け……ママに、パパは躾けが多いなぁって言うたら、笑っとったで」
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身の回りのことが､全て出来る人同士の会話。
　なにこれ。　

片一方､幼稚園児なんですけど……。　これ､どういうこと。
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恐ろしい。　恐ろしい類いの成長の仕方をしている。
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ハンドソープで手を洗わせた時の、すすぎの甘さと比例していない。
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手首辺りが泡だらけのまま、タオルで手を拭く人間とは思えない。
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歪だ。　
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そこから何時間か経ち……夕方。　完全に落ち着いた息子と、トランプをした。
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ババ抜きなどをしていたが、おもむろに息子が、マジックを見せてやる！と言い出した。
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従って見せて貰うことに。　息子が言う。
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「この6を引いて」
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『はい、引いたよ』
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「もう一つの､6は？」
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『知らんけど』
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「あった、これや、これも持って、その2つのどっちが好き？」
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『え？　どっちとか無いけど…………じゃあ、クローバーの6』
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『あっくんも！』
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「え？　これがマジック？」
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『そう』
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これをマジックだと思っている人間が……
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『だって、パパ……躾けてくるやん！』
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、
信じられへん。
、
、
おやすみなさい。