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透明日記「断片と断片」 2024/06/19

(断片A)
今日は駄洒落の世界に迷い込んだ。

内田百閒は駄洒落を垂れ流す作家だ。最近よく読んでるから思考回路が感染ってきた。

入れ歯をいじる婆さんを見て、入れ歯は口に入れるから入れ歯だが、口から出すときは何て言うのだろう。出すのに入れ歯では理屈が合わない。出すときは入れ歯ではないだろう。なんなんだろう。

そう思いながら、西日の差す大きめの交差点で信号を待っていたら、西の車道からチロチロチロって車椅子のじじいが出てきた。どこから迷い込んだのか、ちょうど交差点だから傍に避けるのかと思った。

が、そのままチロチロ、後ろにつっかえる車にも構わず、堂々と交差点に侵入し、右に曲がっていった。

驚いた。周りの車には堪ったもんじゃないが、すげー、イカつい、サイコー、やるなーとか思ってるうちに、車椅子の車って、そういう意味やったんかと、ヘンに納得した。理屈やなあと感心した。

言葉の綾を乗りこなすじじいだった。駄洒落の世界がそこにはあった。

最近の小学生はどうかしたのか、小2ぐらいの女の子が並んで歩いて話すのが耳に入ると、サザエさんは戦後社会の…、当時の子供たちは…、とか聞こえてきた。

床屋の前を通り過ぎたときだ。床屋の料金表にはメニューの横に、それに合ったサザエさんの家族がそれぞれ描かれている。

そこからそんな話になったとしても、小2ぐらいの会話ではないように思う。戦後社会とか、言わない。

今日はどこか、普段とルールが違う世界を感じる。

(断片B)
あそこの炒飯は、半分食べると飽きる。
それから先の食事は、ただの労働に過ぎない。
だから、わたしは賃金を要求した。

おれが食うはずのステーキは、おれの顔面に叩きつけられた。そんな気分だった。

きみの可愛さ、美しさは、納豆と同じぐらいの賞味期限だったな。
あなたのかっこよさ、逞しさは、外国の詐欺サイトの電子レンジみたいに役に立たなかったわね。

ペニスは持ち方を誤ると危険であるが、説明書は付いていないのが普通である。

アスファルトの下から現れた男は、地球の裏側から来たと言っているらしい。この国の言語で、この国の顔で、この国の服を着て。

書けない、書けない、私には何も書けない。書けない星人だ。
あっ、書けない星人だ!
ん?書けない星人か?
おお、確かに、書けない星人だ。
腕も目も口も、耳や鼻までない。
よく見ると、頭も体もないじゃないか。
アレは確かに、誰にも書けない。書けない星人だ。

ニーサやってるか?
おれは次男だ。下もいない。
それは兄さんだ。ニーサ知らないのか?
たとえ合法であっても、麻薬はいけない。顔つきがヘンになる。
なんの話だ?

最先端だかなんだか知らないが、中古で買った家のしゃもじがおれに話しかけてくる。
「ぼくの今日の運勢はどんな感じ?」
「ぼくは天秤座やから、モテるねん。」
「今年の恋愛運とか気になるねんけど。」
「無視するんやったら、ご飯すくうのやめるで。」
うるさいから、人気の占い師の天秤座情報を教えてやった。
「その人あんまり当たらんで。他のとこで調べて。」
おれはしゃもじを床に叩きつけた。そして、「しゃもじは中古で買うな。」と、胸に刻んだ。

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