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透明日記「なんか四時に起きたし」 2024/06/03
変な時間に起きた。タバコを吸いにベランダに出た。三日月は外壁工事の防護ネットに濾されてぼやけ、午前四時の寒さ、静けさを一人で見守っている。すごく眠そうだけど、頑張っている。
鋭角の下弦の月。若さを感じるような細さ。なんでこの時間にこの位置におらなあかんのか、あんま分かってないような感じで、愛おしい。警戒心もなく、知らない場所で頑張ってる感じがする。若い雀のような、ガキの使いのような、自分でここに来た感じではないような。そんな月。鋭角の下弦の月。
業者用のごみ収集車が近くを通る。重いエンジンの音、ガシャンガサゴソという乱雑な音。躊躇なく寝静まる町を犯し回っている。夜の盗賊。ガシャンとかやっても誰も目を覚まさないことを知っているかのようだ。大胆な盗賊。
部屋に蚊がおる。窓を開けた時に入ったらしい。抜け目のない奴らだ。あいつらは夜通し、窓が開くのを待っているのか?
布団に寝転んでると、細い音が耳元に近づいてくる。思い過ごしの幻聴みたいに、か細く始まる。耳の感度がピンと張り詰める。微弱な振動が持続する。蚊の存在感は針の先ほどの大きさ。その大きさで持続する。
それがあるとき、カメラでズームしたように大きくなる。蚊の接近。一、二秒のあいだに、蚊の音は許容できなくなるまで増大していく。蚊の存在感は頭いっぱいにまで拡大される。抱えきれない存在感に首を振ると、頭に広がった蚊は風船を割ったようにパッと消える。蚊はどこにもいない。
あいつらは何遍でもチャレンジしてくる。しつこい。暇だから殺してやろうと思い、耳を澄まして、顔を囮にした。二回ほど飛んでる蚊を目で捉えた。反撃の好機。平手を浴びせる。が、手の平がツンとしただけで、やっつけられなかった。
狙われたことに気づくのか、しばらく姿を消すようになる。諦める。また出てくる。日の出まで、同じようなことを繰り返す。
東の空が白んできた。カラスがよく通る声で鳴いている。みんなに向けて、朝を見つけましたと報告している。雀も来た。四時半。日の出とともに活動のリズムが始まる。たくましい。
寝て起きて、内田百閒、「山東京伝」おもしれーとなる。最高。腹が捩れる、元気出る。犬みたいにゴロゴロしながら笑い転げた。
抽象的な読書が続いたから、具体的な方向に展開しようと、午前中は色々本を調べていた。
昼は紙芝居の仕上げで、画用紙を整形したり、言葉を崩したり、表現のリズムを探したり、筋書きの強制を緩めたり、微調整をしていた。
ある程度できたから、本を買いに出た。近所のブックオフのセールで一冊20円の本を三冊。天王寺のジュンク堂で本五冊・漫画二冊。思いの外、金を使う。本屋は危ない。hontoのサービスが終わったらしく、在庫検索は店頭でしかできなくて不便だった。来月にはネットでできるようになる予定らしいが、どうなのだろう。
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