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透明日記「ベランダで泣く」 2024/04/23

朝の空、雨を降らしあぐねる灰色の顔。今日はベランダで泣きじゃくった。家でひっそり古い漫画を読んでいた。長々と。朝が昼になり、昼が夕方になる。

坂口尚の『石の花』。希望コミックス版は初めて読む。文庫で読んだのは遠い昔で、どこが違うとか分からない。とにかく新鮮な気分で読んだ。

ベランダでタバコを吸うときも読んでいた。戦時下の旧ユーゴスラビア、ナチスに抗うパルチザン。ゲリラ活動中のパルチザンが結婚式をあげる。笑いがなかった日々でのひとときの笑い。

作中に詩が流れる。その詩にやられた。涙が出てくる。光が液体になったような、そんな涙がじゃぶじゃぶ出てくる。次から次へと、涙が涙を押しのける。止まらない。タバコを吸う。放心した。

夕方は夜になり、小雨が降る。ベランダでぼーっとタバコを吸う。小雨が少し体に当たる。頭の地肌を大きな水滴が叩き、ハッとした。

少ししてこう思った。いつもどこかのベランダで、泣いてるやつがいるんじゃないか。それはいい考えだ。なんとなく、いい考えだ。

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