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透明日記「散漫な日、もう夜」 2024/07/18

気づけば、もう夜だ。今日は意識が散漫で、たいして面白くない日だった。音楽を聴いたり、新しい靴で歩いたり、ニットのほつれを誤魔化したりするうちに、夜だ。

靴紐の具合はよく分からない。歩いていると、足の甲に冷たい痛みを感じて背中がゾクっとした。歩道の傍で紐を調節しながら歩いた。しばらく、靴に悩まされることだろう。

昼ごろ、ゆるい感じの空を見ながら、ほっころり、ほっころりとしていると、腹の黒ずんだ雀が来る。ほっころりとしているから、エサをやる気が起きない。無視していると、叱咤激励するように、ウヂヂヂヂ。刑務所の看守のような声を出す。顔も少し怖い。ハイと思って、エサをやる。だんだん、わがままになってきた。

なにか、文章を置いておく。

「60才のわたしへ」
びょう院にはなん件かよっていますか
タバコは1にち何本ですか
ひと箱3000円ぐらいですか
それは少し嫌なので、死にます
元気でね

「アレルギー検査」
皮膚科でアレルギー検査を受ける。無数の項目に引っかかった。

アシナガバチ、オオスズメバチ、ドングリキツツキが無数に空けたドングリを埋める穴、ハスの花の生殖器官、順序立てられた遅々として進まない論理、洗練された愛情表現、見返りを求める自己愛、ロリコンのダニ、生ぬるいJポップ、入り口の分からないレストラン、音楽のない観念論者、などなど。

どうすればいいのかと、医者に聞くと、フィンランド語の辞書やビートルズのレコード、台湾のホラー映画、フランスの漫画、アフリカの仮面、パプワニューギニアの楽器、当医院の看護婦長マリコが作ったエログロのスクラップブックを数冊、高そうな茶器、ナース服、宮内庁御用達のダンボール工作キット、などなど、数々の品物を処方された。

ナース服とアフリカの仮面以外は郵送にした。会計は47万3600円だ。全部いるのかなあと思いながら会計を済まし、皮膚科のトイレで着替えて帰った。

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