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イエローとグリーン。スナワチで買ったm.rippleの金具のない財布。

2017年、もうすぐ大阪から東京へ引っ越すというタイミングだった。京阪電車に乗って、ひとり京都の街をふらふらしていた。甘味を食べに行ったんだったか、もしかしたらどこかの神社仏閣へ行ったあとだったかもしれない。

もうすぐ、コピーライターになる。大阪での仕事を辞めて、横浜の実家に帰らず、東京で暮らす。新しいスタートを切ることが決まっている状態。

細い道を歩くのが好きで、鴨川沿いの大通りを外れて、碁盤の目のような道を迷路を楽しむ感覚で進む。ふと、ショウウィンドウに目を引かれて、レザーのバッグや財布が飾られたお店に入った。

かわいらしいもの、大人っぽいもの、いろいろあったけれど、ちょっと無骨な馬革の長財布を買った。気に入ったのは、丈夫そうなところ。経年変化が楽しめるところ。ダークチョコレート色の財布は、最初はシワがしっかりあった。いまでは、つるりとしていてちょうどいい質感になっている。

もう、京都で出会ったこの財布を5年近く使い続けてきた。そのあいだにわたしは、コピーライターになり、コピーライターを辞め、いまはライターとして縁もゆかりもなかった長崎県波佐見町に住んでいる。

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2021年12月、財布を買った。

長く付き合ってきた相棒を気に入っていたけれど、新しくする時期が来た、と思っていた。いまの相棒と出会ったころと同じように。べつに仕事を変わるとかじゃなく、ひとつ階段を上がる前のような、そんな自分への手応えがあったのだ。

買う先は、決まっていた。

わたしが東京へ「バトンズの学校」を受講しに行くタイミングで、スナワチさんたちは原宿でPOP-UPストアをするという。

行った。

買った。

もともと、どの財布にするかは決めていた。
金具のない「DEW-003(スリム)」。スナワチのオンラインショップの説明に、この財布のよさがぜんぶ、かっこよく記してある。

考え抜かれた設計を、ほぼお札サイズのボディに
「お金を出し入れする」という、財布の当たり前の用途をイチから見つめ直し、m.rippleらしい美しさと使いやすさ、レザーでつくる意味を、村上氏が考え抜いた長財布(スリム版)である。

四辺すべてが、革を折ることでかたちづくられているので、丸みがあり、手に心地よくフィットする。
柔らかなミネルバ・ボックスのボディに、キリッとしたブッテーロ・マレンマのフラップという、ぜいたくなレザーの合わせ技だ。
いずれも、使うのが楽しくなるような経年変化を見せる。

消耗品であるジッパーや金具を一切使用せずに、レザーと糸のみでできているため永く使えることが期待できる。
まず特徴的なのはカード収納で、ポケットではなくスリットに横向きに挟み込んで、6枚入れられる(DEW-002は縦に8枚)。別途ICカード用ポケットが一つ。
見た目にも美しく、出し入れがしやすい。
お札は、対角線上にナナメに設置されたフラップ部分にしまう。マチによってお札が折れてしまうのを防ぎ、きれいに使うことができる。
コインポケットは革2枚を縫い合わせるのではなく、1枚を折り曲げてつくられているため、コインが底に挟まらないよう考慮されている。
財布の中身が一望できる設計で、これは思いのほか使いやすい。

m.ripple村上氏の、デザイナーとしての高い能力と、レザーを専門的に扱うクラフツマンとしての知見が、構造に、使い勝手に、素材に活きている。
スリムサイズのこちらDEW-003と、フルサイズのDEW-002もチェックしてほしい。

POP-UPストアには、m.rippleの村上さんもいた。革のこと、財布のことを教えてもらう。オンラインストアにないピンクの革の「DEW-003」も、すてきだった。でも、迷う。あの色がいい。ずうずうしくも村上さんにお願いしてみた。

「可能だったら村上さんのTwitterで見かけた、グリーンの革を使って『DEW-003』をつくってもらえないか」と。

村上さんはにこにこ顔のまま、「いいですよ」とうなずいてくれた。合わせるのはいちばん好きな色、イエローでお願いした。

話がまとまって、スナワチの前田将多さんに声をかけると、オーダー内容をメモしてくれる。お会計をして、届くまでしばらくあるというのに、すぐにうれしくなった。

そして、昨日。年をまたいで、長崎県波佐見町のわが家に、財布が届いた。

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見ての通り、金具はない。撫でまわしても、金具の冷たさや硬さがないことが、心地よい。革の質感と匂い、そしてうつくしい色。

何年も、これからながく使っていこう。1月25日、寅の日に使いはじめようと思っている。

どうしてスナワチさんで財布を新調しようと思ったのか。周りのTwitterつながりの友人たちがスナワチさんで買っているからではない。日本のクラフツマンのすばらしい仕事を集める将多さんを信頼しているが、それだけでもない。

いちばんの理由は、将多さんのひとことだったと思う。

2020年、わたしが「東京から波佐見町に引っ越す」とTwitterでつぶやいたとき、将多さんはこう言ってくれた。

かっこいい。胸が熱くなった。

たぶん、もともと幸運なわたしは、新しい財布と一緒にもっと幸運になってしまうと思う。だって、すごい職人の村上さんがつくってくれて、こんなにかっこいい将多さんが売ってくれたんだから。

GOOD LUCK!!!

30minutes note No.941

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