雑だけど、うまい。わたしのテキトー料理。
ふだん、ひとり暮らしの父に、エビを殻むいて料理しようという気概はない。ある程度は料理できる父だけど、レパートリーはそう多くない。ひとり暮らしでも自炊しているだけ素晴らしいことだ。父を尊敬している。
こんにちは、こんばんは。栗田真希です。
長崎県波佐見町から、鼻の手術のため横浜の実家に帰省してリモートワークしているわたし。そろそろひと月以上が経って、術後の体調も安定してきて、せっかちでひねくれ者の父にあれこれ言われている。
黙らせるには、おいしいものを食べさせておくのがいちばん。外食を好まず、晩酌を楽しみに暮らしている父には、おいしくて酒の肴になるものを差し出せばよいのだ。
日曜日に一緒にスーパーへ買い物に行って、そのときまあまあ安かった殻付きのエビを買った。頭はないやつ。買い物カゴに入れると、すかさず父が言う。
「そんなの買ってどうするの?」
イヤミではなく、純粋にどうするのかって問いだ。
「炒めものにしてもいいし、パスタにしてもいいし。あ、アヒージョにしてもおいしいよ!」
テキトーに答えると、じゃあ買ってもいいかと頷かれた。父はだいたい、豚肉か鶏肉を買ってメイン食材にしている。候補にエビは入ってこないから、そんな会話になる。
それから、テキトーにできるだけ安い食材をカゴに入れながら、頭のなかで献立を組み立てる。
「家のカレーが食べたいけど、夏だしねえ」と父が言う。
「え、じゃあキーマカレーにしようよ。そしたら余ってもラップで包んで冷凍しやすいし、煮込まないカレーだから初日からおいしいよ」
キーマカレーも採用された。こう言ってはなんだけど、ちょろい。わたしだって、たいして料理上手ってわけでもないのに、父の水準と比べるとできることが多い。
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キッチンに立つ。
キーマカレーって好きだ。ひき肉をバラバラにしすぎないで、しっかり焼き色をつけて「焦げ」の旨味を引き出すのも好きだけど、今回は肉はあと入れ。
先にフライパンで生姜のみじん切りを炒めて香りをひき出して、そこにみじん切りにした玉ねぎやにんじんなどの野菜を入れて炒める。くず野菜でもなんでも刻んで入れりゃ、うまくなる。
そこにひき肉を入れて炒める。肉がかたくならないための、あと入れ方式。塩胡椒をして、ほんのちょっと醤油を入れる。それからトマトジュースとカレールウを入れて、ルウが溶けて炒まったら、水をバッと入れて10分ちょい煮込む。
すぐ完成!
キーマカレーを煮込んで味がなじむのを見守りながら、エビを料理する。キーマカレーじゃ父は晩酌できない。
エビの殻をむき、しっぽの殻もスポンと抜く。エビの背中に軽く包丁を入れて背ワタを取る。塩胡椒と酒と片栗粉で揉む。これでエビの下準備はOK。片栗粉をまとわせると、エビが火を通してもぷりぷりのまま楽しめる。
ズッキーニとオクラを切る。ついでにえのきも入れることにした。
キーマカレーをつくるときにすこしだけとっておいた生姜のみじん切りを油で炒めて、そこにエビを投入。赤くなって気持ち程度焼き色がついたら、いったん取り出す。
それから野菜とえのきを炒める。軽〜く塩をふる。下味がつくし、浸透圧かなんかで野菜の水分が出やすくなるので早く火が入る。たぶん。
炒まったら、エビを戻す。ぜんぶの具材が絡み合う。さっと炒めたら、フライパンのはじっこにスペースをつくって、そーっと醤油を入れる。ただでさえ焦げやすい醤油が、じゅわじゅわと焦げる。焦げつく一歩手前で、フライパンを何回も振る。焦がししょうゆを全体に行き渡らせるのだ。
レモンがあったらな〜、塩レモン味でもよかったんだけど。
完成! 雑にフライパンから大皿にうつす。
食卓に今日の晩ごはんを並べると、父の晩酌スタート。わたしはお茶で、父と乾杯する。
エビの炒めものを、おいしそうにつまむ父。テキトー料理なので味見などしていないわたしも食べてみる。
思った以上に味がまとまっていた。ほどよいとろみ。エビにまとわせた片栗粉と、えのきだ。このふたつが合わさると、あんかけなんかとは違う、ちょっとしたとろみがつく。これがいい。えのきはもっと使い方を学んで実験してみたい。地味な外見のきのこだけど、ポテンシャルが高そうだ。
とか、今更なことを考える。世の料理上手な人たち、ほんとうにすごい。
いやしかし。自画自賛にしかならないが。
わたしの料理、雑なんだけど、うまい。
凝ったこともしないけど、彩りも微妙だけど、盛り付けにも無頓着だけど。
うまい。
自分好みの味になってるだけかな。
ちなみに、父のキーマカレーには目玉焼きをのせてあげたらよろこんでいた。ちょろい。
30minutes note No.1037
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