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昆虫本の書評(昆虫本編集者のひとりごと)05『狩蜂生態図鑑』

『狩蜂生態図鑑』田仲義弘、全国農村教育協会、2012年、2500円、フルカラー192ページ

全体の感想

B5サイズ、192ページのなかに、ふんだんに写真が掲載されている。どれも迫力と美しさが感じられ、蜂の特徴が際立つものばかりだ。

またこのサイズ、ページ数で2500円はお買い得と思う。

著者一人でほとんどの写真を収集したらしい。高校の教員らしいが、いくつかの昆虫本を執筆している。

先生をやっていた人らしく、解説文は丁寧でわかりやすく、また単に事実を記述するだけでなく、国内外の歴史上の人物の引用をして解説したり、体験談が挿入されていてエッセイのようなテイストだ。

専門的な用語が出てくると、必ずと言っていいほどその解説が欄外にあって、とても良心的。

随所にイラストで図解されていて、これも理解を助けてくれる。イラストも著者が書いているらしく、感心してしまう。

ざっと内容について

冒頭で狩りバチの生活史、特に狩りの仕方、営巣の特徴が紹介されている。その後、科レベルで狩りバチの紹介されている。

狩りバチ、寄生バチは豊富な種類がいて、おもしろい生態を持っているものも多いが、一般にはあまり知られていないような印象だ。

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しかし本書一冊で、狩りバチについてはその多様さと面白さが一挙に感じられるだろう。

あくまで写真集であり、著者はプロの研究者ではないので、それぞれ生態の説明は概説的な者に止まっている。より詳しく進化や分子レベルの話は、他の本に頼るのがいいかもしれない。

それでも鮮明な写真を伴う解説は、具体的で実際に観察しないとわからないことも、丁寧に書かれている。

冒頭は上述したように、狩りバチの造巣、ハンティング、生活史、体の作り、運搬、巣への搬入、そして獲物のバリエーションが紹介される。

いずれも写真と丁寧な解説によって紹介してされる。

獲物のバリエーションでは、鱗翅目、甲虫、セミ・カメムシ、バッタ、ゴキブリなどのハンティングの様子がが写真付きで紹介。

女将と1章では基礎知識的な者、それぞれの狩りバチに共通することが紹介されたが、2章からはそれぞれの科が「ハチ図鑑」と称されて解説されていく。

それぞれの科は2〜3ページで紹介、種数の多いものはそれ以上の紙面を割いて解説。それぞの種の体調、分布、獲物、特徴が簡単に紹介されている。

3章では狩りバチの観察のコツが紹介。撮影場所選び、機材、トラップの作り方、また撮影のコツが紹介。これらも著者の実体験に基づく非常にわかりやすいものだ。

巻末には用語解説も掲載され、アマチュアに優しい配慮が見られる。

読後の感想

お腹いっぱいになる、満足できる一冊。

本で読むと文章だけではわかりづらい場合が多々あるが、本書ではふんだんな写真、図解によってそのようなストレスがほぼない。

著者はあくまでプロの研究者ではないのが功を奏しているのかもしれない。

文一総合出版でハンドブックシリーズがあるが、あれよりも丁寧に解説してくれていて、より充実化されて性格という印象。

ハチ好き、昆虫好きであれば、このボリュームと内容、この値段、買わない理由はない。

ただ、若干、イラストが見づらいものもあるが、大して気にならない。


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