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海辺の田舎町から山奥の集落へ引っ越した生粋の田舎人による田舎移住論

 論ではないです。
 秒でタイトルを壊していくスタイル。

 noteやTwitterを見てくださってる方はご存知とは思いますが、簡単な自己紹介を転生令嬢風にしておきます。
 
 ご機嫌麗しゅうございます。
 わたくしはジョー。
 剣も魔法もない世界で山あり谷あり紆余曲折だけはありで山奥の一軒家を買って、土佐犬&白猫と楽しく暮らしておりますわ。以上でございます(カーテシー)

 猫と土佐犬一緒に暮らせるの!?とよく聞かれますが、うちは普通に暮らせてます。「散歩が大変だろう」とかもよく聞かれますが、散歩を大変だと思うタイプならそもそも犬飼ってねぇ。
 家を買った頃は5歳を迎えようとしていた犬も、今年の春で7歳。シニアに入りつつも毎日モチモチと散歩を楽しみ、ご飯をモリモリ食べております。ご飯食べた後で「何も食べてない」顔するのって、犬共通だよね。さっき食べた。オヤツも食べたよ。もうないのよ。気に入らないカリカリをお皿に入れたら食べずにひっくり返して去っていくネコリアンと足して割ったらちょうどな感じだな。グルメなネコリアン。グルメリアン。もはや絶対にお外では生きていけない。
 寝てる犬の頭を嗅いだらショートケーキの匂いがした。何故かな。イチゴを食べたからかな。ストロベリィーヌ。

 で、タイトル。
 
 ガチな田舎への移住って、意見が分かれる所だと思います。むしろ否定的な意見が多い感じ。
 利便性は皆無だし、人付き合いの問題もあるし、就職先は少ないし、車は必須だし、高齢になった時に詰むんじゃないかとか。子供がいたら学習環境とかで更に問題が増える。万人に向いてるわけではないと思います。手放しで「田舎への移住は素晴らしい!」とか絶対言えない。そもそも私が生まれ育った町も移住者確保のアピールを頑張っている過疎の町なので分かる。
 なのでこのnoteは移住を勧めるものではなく、漠然と田舎への移住を考えている方へリアルなメリットとデメリット、実際どうなのか、などをお伝えしていければと思ってます。ちなみに海の田舎町出身としては、海の田舎町も良いですよ。魚介は美味しく新鮮。山や公園にダニがいる季節でも砂浜なら犬の散歩も安心。台風が来る度に砂浜の地形が変わるのも新鮮で良い。弱点は高潮と塩害。風が強い日は顔が塩味。ペロペロ。口周りが美味しい。

 さて。そんな海育ちの私が引っ越した集落は、山を一つ超え、二つ目の山の上になります。訪ねてくる人に「二つ目の山!?」と言われる。それでも今まで住んでいた所の数分の1の時間で街に出られますが。平地に比べて気温が4度程低く、夏場ニュースで「今夜は熱帯夜です」と言われた夜も窓閉め切ってノーエアコンでした。
 まずはそんな環境について。とは言え環境は移住先に大きく左右されると思うので、あくまで目安でお願いします。北日本だと生態系にも違いがあるだろうし。関東から南くらいのイメージでよろしく。

 周辺の生き物について。

・多すぎるスズメバチ。
 昨今は都市部でも問題になっているが、山にももちろんいる。10月末くらいまでいたと記憶している、空飛ぶウィンナー(サイズ的に)。ボボボボ…、て音が聞こえてきたらどこかにいる。黄色いやつはキイロスズメバチ。ちょっと小さいのはモンスズメバチ。この2種類は割と好戦的。一番恐れられているオオスズメバチは意外にも進んで戦闘はしかけてこない。ただ見た目が、ぶっちぎりで怖い。
 どれも普通に飛んでる分には私も気にせず通り過ぎる。巣が近くになければミツバチの巣を襲ってるか花の蜜を吸ってるか、飛んでるかしている。もしもカチカチ音が聞こえたら全力で逃げよう。
 高価なスズメバチ用の殺虫スプレーは販売されているが、『オオスズメバチには効きません』と書かれているのでご使用の際はお気をつけを。めっちゃかけたら一応効いたけども。

・その他の蜂。
 油断したら雨戸の隙間とか軒下とか、よく分からん板の裏とかにすぐ巣を作るので『巣を作らせないスプレー』は必須。アシナガバチは危険度が高い。ミツバチとクマバチは許す。可愛い。庭のお花から蜜を持っておいき。

・その他の虫。
 ダントツでウザいのはブヨ。夏の水場近辺に出現。小さいハエみたいな姿をした吸血虫で、対象の皮膚を噛みちぎって血を吸う上に痒みと腫れ成分がMAXという蚊の何倍も厄介なやつ。犬を好んで吸血するので私には天敵。犬や猫が吸血された場合、予防薬をしてないとフィラリアに感染する可能性もある。ブヨ即斬。慈悲とかない。赤い森林香の効果範囲には含まれてはないのだが、一応煙が届く場所には近づいてこなかったので、夏は日中ずっと庭で焚いていたし、散歩の時は腰から下げていた。今年の夏は草むらに吹き付けるタイプの藪蚊避けスプレーも試してみたい所。
 一方で室内で遭遇しやすい益虫の代表であるゲジゲジやアシダカグモは基本サイズが手のひらくらいある。ゲジゲジはオオゲジゲジって名前らしい。外に出ろ、外に。山にはヤマゴキブリっていう家の中にいるのとは違う丸いゴキブリがいっぱいいるから、そっち食え。秋の半ば辺りまで出現。
 シャクトリムシは勝手に肩に乗ってる事が多い。3回くらい乗られた。そして勝手に尺を取られてた。初夏〜秋に出現。
 西日本に生息する日本最大のミミズであるシーボルトミミズは特に害はないけど、デカイので踏みそうになる。靴先が当たるとビタンビタン跳ねて怒るので、出来るだけ避けるようにしている。冬でも雨が降ると出てきたりする。よくロードキルされている。
 逆にダニは標高が幸いして、夏でもあまりいなかった。一夏で数匹、犬の足に取り付いたのを払ったくらいかな。地元の山は春〜晩秋にかけてウヨウヨいたので大変だった。
 ムカデも大きい。家の中にも侵入してくるので火挟を棚に置いていた。
 また、虫ではないが我が家の近くには水場があるのでサワガニやアカハライモリも冬に入るまでは頻繁に出てきた。攻撃はしてこないが前者は寄生虫のオンパレードだし後者は有毒なので家の中には入れないほうがいい。よくロードキルされている。

・爬虫類&両生類
 先程のヤモリを始め、蛇はもちろん多い。マムシ、ヤマカガシ、アオダイショウが秋の終わりまで出現する。シマヘビはまだ見てない。あと黒い蛇を何回か見かけた。タカチホヘビなのか単に黒化してるのかは私では分からない。よくロードキルされている。
 カエルは大きいのから小さいのまで。ゲコゲコ。よくロードキルされている。
 
 ・哺乳類
 猪…頻繁ではないが、そこそこ出現。とくに冬に遭遇しやすい。ウリ坊シーズンは注意。
 ポンポコ…めちゃくちゃいる。人口より多い。疥癬になってる事が多いので近寄ってはいけない。(動物だけじゃなく人間にも移るよ)
 ピョンピョコ(🐇)…朝や夜見かける。足が早い。たまにミニサイズもいる。

 ・その他 
 キジ…その辺をウロウロしている。あんまり逃げないが、逃げる時は全力で走っていく。飛べよ。特に害はないが雄は派手なのですぐ私に見つけられる。
 サギ…田んぼをウロウロしてる。
 カラス…冬はよく蜜柑を食べているが、疥癬でデッドしたポンポコを食べていることも多いのでもちろん近寄ってはいけない。

 この段階で虫や爬虫類が苦手な人は「山の生活無理」てなったと思います。その予感は間違いではありません。虫が苦手だと、山の生活はマジでつらいと思います。移住チャートにすると

 虫や爬虫類が苦手  はい→海辺に移住
           いいえ→山に移住

くらいのレベルで山と海の虫出現率は違う。
 私は幸いにも手のひらサイズ以上のアシダカグモ以外は「毒がないなら別に良い」タイプなので餌となるゴキブリ対策をフルでしてます。

 あとは細々と畑の作物を蝕む虫などがいます。昨年を教訓として、今年は虫がつきやすい野菜は前庭でプランター栽培にしてみようかと思ってます。家庭菜園において虫との戦いは永遠のテーマ。これを書いている今は真冬なので畑がめちゃくちゃ楽です。菜花とほうれん草と大根と玉葱とニンニクを植えてる。霜除けのトンネルやマルチは必須だけど、虫に襲われないという解放感は素晴らしい。
 自分で育てると分かる。農家さんは本当に凄い。凄いという言葉では収まらない。知識量と仕事量、本当半端ないと思う。

 とりあえず生き物はこんな感じでしょうか。

 次に気候について。

 雨が多くて風が強いです。山だからね。天気も変わりやすい。
 家を買う編でも書いていますが、私が住んでる集落は下水道どころか上水道さえない場所です。その代わりに湧水の地下から汲み上げた水を各家庭に直接繋いでます。軟水。今の所一度もお腹を壊してはいない。味は無です。マジで無。そもそも地元も水が綺麗な所だったので、そんな変わらん。出張で泊まる都会のビジホの水とかは「ウグッ…」て口の中がイガイガになる。無の味の水が飲みたい人はうちに汲みにきていいぜ。
 家の近くの神社に滝があって水神様が祀られているので、たまに「ありがてぇ」と見に行ってます。冬でも枯れることのない水を、どうぞこれからもよろしくお願いします。
 なんてことをつらつら書いていたら水道が凍りました。三ヶ所から出しっぱなしにしていても凍る。分厚い保護シートしてても凍る。ていうか保護してない敷地外の斜面の水道管が凍ってた。貯水槽からダイレクト水道という作りなせいで…。

 さて、環境の話はこのくらいにして。

 もしこのnoteを読んでる方の中に田舎への移住を本気で考えている方がいたとして。物件を見にきた時に見るべきポイントを自分の経験からお伝えしていきます。
 車は持ってる前提で。片田舎くらいならともかく、ガチ田舎は車持ってないとそこで終了です。バスの便が少ないとかじゃねぇ。そもそも、ない。

1:移住先までのルートが一つではない。
 海辺は高潮、山は崖崩れ。田舎は自然災害が多いです。災害発生時、孤立しないよう街へ出るルートが複数ある移住先が望ましいでしょう。

2:地盤、命。周辺の古い地図を見て土地の歴史を調べるのも良いでしょう。意外に多い、「整地してるけど以前は沼、川、たんぼ」。事前に調べるに越した事はないと思います。

3:一番近い病院の距離と規模。(ペットがいたら動物病院も)
 街中が住みやすい理由の一つは、間違いなくこうした施設が充実してるから。田舎はそれらを徒歩圏内に揃える事は不可能ですが、ある程度寄せる事は出来ます。以前のnoteにも書いてますが、私が今住んでいる所に移住を決めたのは犬猫の元々のセカンドオピニオンが近くにあるからでした。

4:ゴミ捨て場。近すぎないか、遠すぎないか。変な張り紙はないか。汚れすぎていないか。荒れててもダメだし、常に監視者がいるようなところも怖い。

 そして最後。
 おそらく移住を考えている方が一番気になるであろう、人間関係。集落のあれこれ、について。

 最初に知っておきたいのは。

 ガチャです。
 結局は移住ガチャ。
 どうやっても無理な所は絶対あるでしょうし、その反対で住みやすい所もあります。しかしながら確実に言えるのは「人と関わらずに自然の中で暮らしたいから田舎に移住する、は無理」ということです。それを叶えたかったら都市部に住んで休日にキャンプに行った方がいいです。
 私は幸運な事に、すんなり馴染みました。何百年と続いているだろう集落皆血族、の中にポコンと入った私という異物。しかしながら快適に暮らしております。私の生き方にあってるというのもあるんだと思いますが、犬バフがすごい。犬がいると朝晩散歩でウロウロしてるので覚えてもらうのも早いし、初対面時の好感度も高い気がします。犬すごい。ネコリアンは「窓から外を監視している白い猫」枠で暮らしています。
 休みの日は犬猫と戯れて庭と畑の手入れをして暮らしている私ですが、年に何回かは集落の行事がありますし、割り当てられた仕事もあります。神祭や草刈り(全員草刈り機持ってる前提)、ゴミ当番、回覧板などなど。これが無理な人はマジで移住はやめた方がいいです。病むと思う。
 まぁでも行事は事前連絡で休むことも可能。実際私も仕事で何度か休んでますが、事前連絡しておけば問題はないです。ずっと休んでる人がいても、別に陰口とかは言われない。ただし無断で休むのはNG。会議の開始が遅れたりするしね。その辺は一般常識の範囲だと思う。でも参加するメリットもちゃんとあります。仲良くなれるので、引っ越して半年過ぎた私はスーパーでお野菜を買う頻度が激減しました。犬の散歩してるだけで、みんないっぱいくれるんだぁ。もちろんお返しはするよ。あとは色んな事に協力してもらえるし、危険な事とか教えて貰える。神祭に参加して働いたらお供えもいっぱい貰える。
 行政の手が届きにくい集落は、そうして固まって互いを守ってきたんだと思います。それが良い方向に行くか悪い方向に行くかは、まさにガチャなわけで。
 人間社会で文明の恩恵を受けて生きる以上ある程度は仕方ない面もあると思いますが、自分に合わないと感じたら諦めるのもありです。やっぱり結局ガチャとは言え、「田舎移住は初めてでどう振る舞ったらいいか分からない」という方は「困ったらまとめ役、もしくは一番長く住んでる人に相談」がベストだと思います。仕事もそうだけど、『聞かずに勝手にやる』はどこでもNGなのではないかな……。聞けば教えてもらえる。聞いても教えてくれない所は、会社でも何でもヤバいから早く逃げた方がいいです。見て覚えろ系は私も無理です。あえて効率が悪いやり方を立場的に弱い相手に押し付けるタイプとは価値観が合わん。やってみせ、言って聞かせて、させてみせ。ほめてやってもネコリアンは動かないけどね。
 この辺のやりとりも苦手だなと思う方も、田舎に移住するとキツいかもしれない……。
 
 そんな感じでしょうか。
 ちなみに今日は神社の掃除です。みんなで掃除する日に仕事で行けないので先に連絡して私の掃除分を聞いておいたのです。
 それが終わったら「うちの畑から好きな時に好きなだけ持っていきな〜」と言ってもらってる畑があるので大根を取りに行きます。永遠に量産される切り干し大根。

 庭にはフキノトウが出てきています。畑の菜の花も蕾が膨らみ始めました。昨日の散歩で今年初めての梅が咲いているのを見かけました。
 休日は犬と共に山を見下ろしながら、あの日描いた光景そのままに、どこまでも歩いて行きます。私とって此処は、大きなアミューズメントパーク。
 何を楽しいと感じるかは人それぞれな中で私は毎日に満足しています。映画だったらエンドロールが流れているところです。

 もう少し暖かくなったら、また庭でバーベキューを再開しなきゃ。燃料は無限にあるから大丈夫。ソーセージ作りにも挑戦したいし、去年作った石窯をちゃんとした釜に作り直したいな。
 そろそろジャガイモ用の土も作らないと。今年は何を植えよう。初夏に収穫予定のタマネギとニンニク、うまく出来るといいな。
 桜が咲いたらお弁当を持って犬とお出かけして、広場でゆっくり花見をしよう。

 あなたがこうした未来を望むのであれば、田舎移住はきっと素晴らしい選択になると思います。

 よい人生を。

   

         〜エンドロール終了〜

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