モチベーションの構造

これまでの記事もたくさんの方に読んでいただき大変うれしいです!
さて、今回は多くの人が悩みがちな「モチベーション」です。

  何に対してもやる気が出ない…
  子供のやる気を高めるにはどうしたらいいの?

そんなお悩みを解決するヒントになれば幸いです。
それでは、構造化はじめます。

モチベーションの種類

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「モチベーション(動機づけ)」は、心理学では基本中の基本として様々な研究が進められています。
一番はじめに目にするのが、内発的動機づけ外発的動機づけです。

内発的動機づけ:その行動そのものに価値を見出して行う
外発的動機づけ:他のものによる理由付けでその行動をとる

さらに細かく分類したものが、Deciらによる自己決定理論です。
これは自律性の高さで4段階に分けられています。

内的調整:その行動そのものに価値を見出して行う
同一化的調整:その行動をとっている自分に満足する
取り入れ的調整:不利益を被らないために「仕方なく」行動する
外的調整:無理やり「やらされている」

そして、自律性の高い2つと低い2つをまとめて

自律的動機づけ:positiveな意思決定による行動
統制的動機づけ:negativeな意思決定による行動
無動機づけ:そもそも行動を起こさない

と分類することもできます。つまり、一口にモチベーションと言っても多様な定義がされているのです。

例えば、下校したらすぐに宿題に取り掛かる習慣がついた子供は、どうしてすぐに宿題をするのでしょうか?
・宿題の内容にとても関心が高い(内発的動機づけ)
・「遊ぶ前に宿題」という家庭のルールを守る(取り入れ的調整)
・宿題が終わったという解放感をもって遊びたい(同一化的調整)
・先に宿題をやらないと遊ばせてもらえない(統制的動機づけ・外的調整)
など、同じ行動でもモチベーションの意味は様々に考えられるというわけです。
宿題をする「習慣」をつけたいのか、宿題の「中身」に関心を持たせたいのか。意図するものによってアプローチや評価が変わってくることを理解しておきたいですね。

上述のこれらは「行動を起こすまで」の心理状態を指すもので、ピンポイントで限定的なものです。

では、「行動を起こすまで」+「行動を起こした後」として包括的に構造化したいと思います。


モチベーションサイクル

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すごくマジメで模範的な態度なのに、実力が伴わない子っていますよね?
逆にテキトーに済ませるのに、及第点以上のパフォーマンスを出せちゃう子っていますよね?
特にスポーツや体育の場面、漢字テスト等ではよくあることだと思います。
「態度」と「技能」どっちを重視するか?なんて議論も起こりがちですが…

本人の「やる気を高める」という視点から、分析したいと思います。

報酬価値 × 達成の見込み = 努力量

まずはここからスタートします。
「報酬価値」とは、課題を達成したら何を得られるかということです。
漢字テストで100点をとるうれしさ、家族から褒められること、ほしいものが買ってもらえることなど、その子によって頑張る価値はバラバラです。
「達成の見込み」とは、どれだけ頑張れば達成できるかという予測です。
達成できるという期待が高いほど、やる気になります。

つまり、頑張る意味を見出して、かつできそうと思えた時に最も能動的に行動するということになります。
課題が簡単すぎると、物足りなさが残るからむしろやりたくない、ということもありえるってわけですね。


次に関わってくるのが「能力」と「役割認知」です。
組織や集団で生活していると、様々な質の課題が存在します。特にスポーツにおいては、ポジション別にそれぞれの役割があります。

どれだけモチベーションが高くても、能力が足りなければ達成できません。

非情にも思えますが、これば事実です。
したがって、ほとんどの場合、組織内での役割は個人の能力で決まります。
ここで重要なのが、本人が自分の能力を正しく認知し、役割を納得できているかです。

ゴールを決めたくてサッカーを始めたのに、監督の意向でキーパーにされては、当然モチベーションは下がります。本人の果たしたい役割と、与えられた役割に矛盾があれば、葛藤が生まれるでしょう。
納得できなくても「仕方なく」それを引き受ける(取り入れ的調整)場合が多いと思いますが、そこに「やりがい」を見出す(自律的動機づけ)ことは難しいでしょう。

本人が自分の能力と役割に納得するには、
集団内での比較ではなく、個人能力と課題の関係で評価する
ことが必要です。(詳しくは前回のnoteを読んでください)

フィードバックがモチベーションに与える影響

さて、ここからは「行動を起こした後」の話に移ります。
長くなったので、同じ画像をもう一度載せます。

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個人が起こした行動(=パフォーマンス)は、自己あるいは他者に評価されます。そして、評価に応じて報酬(=ベネフィット)を受けたり、受けたベネフィットに応じて感情が喚起されたりします。

内的報酬:達成感や満足感、能力の向上など
外的報酬:周りからの称賛や物的報酬(ごほうび)など

もう1つ重要なのが、相対的な報酬の認識です。
これは、自分のした努力と得られた報酬が見合っているかという評価です。

例えば、
「昨日テスト勉強10分しかしてないのに、3時間もやった人と同点だった」
とか、
「この間勝った時は祝勝会やったのに、今回は勝ってもやらなかった」
と比較して捉えるので、結果から得られる満足度に影響を与えます。

ここで特筆したいのは、
内的報酬・外的報酬・報酬の認識が満足度に与える影響の大きさは、人それぞれ違うということです。
いくら褒められても自分が納得しないとだめという人もいれば、とにかく褒めてもらいたいという人もいます。

こうして得られた満足感が、次の「報酬価値」として学習されていきます。

ニーズは常に変わる

このような循環構造になっていると考えると、
モチベーションのもとになる「報酬価値」すなわち行為者が得たいニーズは、常にアップデートされていくということになります。

つまり、同じ人が同じ行動をとるにしても
1回目と2回目ではモチベーションの質が変わるのです。

モチベーションややる気を高めさせたいと考えている人は、
相手が今どんな報酬を得たいのか?ニーズは何なのか?
を正確に捉えることが必要になってきます。
そして、そのニーズを最大限に満たせる課題と役割を与え、適切なフィードバックをしてあげることで、自律的な動機づけを強化できるでしょう。

長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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