エンドロールのつづき LAST FILM SHOW
片田舎に住む映画好きの少年はお金もなく、こっそりと劇場へと潜り込む。見つかって放り出されたところを映画技師に拾われる。ある約束を交わして、少年は映写室への立ち入りを許される。映写室で見る映画の数々に魅了され、映写技師からは映写の仕組みを学びとる。映写室に残されたフィルムの切れ端を眺めては映画の場面に思いを馳せる少年は映画を作りたいという気持ちがますます強くなっていく。そしてついに少年は故郷を出て都会へと向かうのだった。
こう書くと、トルナトーレ監督の「ニュー・シネマ・パラダイス」のことと思う人もいるだろう。「現代のニュー・シネマ・パラダイス」という作品評もあるくらいだから、そう思うのも無理はない。この作品はインドを舞台とした一人の男性の映画愛を描いた作品で、この作品のパン・ナリン監督自身をモデルとした実話なのだ。
カーストの上では上位のバラモンではあるが、経済的には貧しい家庭で育つ。父を手伝い、駅で電車の乗客にチャイを売るのが日課。そんな中で少年が夢中になれるのが映画だった。作品中、数々のインド映画がスクリーンに現れる。恐らくインドの人なら誰しもが知る作品であろう。定番の歌や踊りの場面も 紹介され、すっかりインド映画を見にきた気分になる。また、カースト制度による差別や英語が分かるかどうかによって職業や仕事が左右される様子も描かれている。そういったインドというどことなくアクの強い文化と伝統、人々の生活が感じられる映画だ。
映画を愛するパン・ナリン監督は映画の最後にリスペクトを込め、日本の監督を含め、世界中の映画監督の名前を挙げる。その内の一人、スタンブリー・キューブリック監督に対しては特別な思いがあるのか、彼の映画へのオマージュと思える場面もある。とにかく映画への愛に溢れた作品だ。