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『六月のぶりぶりぎっちょう』

万城目学著『六月のぶりぶりぎっちょう』を読んだ。直木賞受賞作『八月の御所グラウンド』が8月と12月の京都が舞台だったのが、この作品では6月と3月だ。この流れは、『八月の御所グラウンド』の感想(下の投稿参照)にも書いて、少しは予想はしていたものの、こんなに早く実現するとは思わなかった。昨日、いつもの書店で見かけた時は、一瞬装丁の雰囲気が似た前作と見間違えた。

この本は『三月の局騒ぎ』、『六月のぶりぶりぎっちょう』からなる。前者は京都の様々な大学の学生が集まる北白川の女子寮が舞台。寮の建物は東西2棟からなり、その中庭に植えられているの植物から「薔薇壺」、「棕櫚壺」と呼ばれている。また部屋は「局」と呼ばれる。更に寮生は「にょご(女御)」である。

この一風変わった寮に入居することになった主人公の「わたし」。「わたし」は長年寮に居座る謎の上級生「キヨ」と相部屋になるが、その期間は僅か。三月の末に「キヨ」は退寮してしまう。卒業後、就職、結婚、出産を経て「わたし」は書くことを生業とするようになる。そして学生時代の京都での「キヨ」との不思議な出会いに思いを馳せる。

昔ながらの畳の相部屋、インターネット黎明期の様子が懐かしい。また、娘の「新菜」が全国高校駅伝に出場が決まり、応援のため久しぶりに京都を訪れる設定は『十二月の都大路上下ル』を意識させて面白い。

『六月のぶりぶりぎっちょう』の方は、最近世間を騒がせた脚本家との因縁のある映画作品を思い起こさせる。6月2日に起こった戦国時代の歴史的な事件とホテルとを結びつけた作品である。「ぶりぶりぎっちょう」がどういうふうな形で、どのように使うのかは最後までわからないが、これが本筋ではない。「天下」を巡っての争いの謎を解き明かすため、6月2日に行われる再現の舞台に巻き込まれる日本史担当の高校教師が主人公だ。

こちらの雰囲気はどちらかというと 森見登美彦の不思議な世界のような感じを受けた。頭の中で場面を想像しようとするが追いつかない、あの感じだ。恐らく映像で見せられた方がわかりやすいタイプかもしれない。こちらにも勿論、遊びがあって、『鹿男あをによし』の設定が出てくる。主人公の滝川は大阪女学館の教師、トーキチロー先生は京都女学館の教師で、「大和杯」ならぬ「大和会」という奈良女学館もあわせて3校の研修会に参加するために京都に集まるという設定だ。

両作品とも京都にゆかりのある歴史上の有名人と遭遇する作品だ。直木賞受賞作の方で、手の内を「読んでしまった」ので、今作品は読みながら「これは恐らく、〇〇だ」と推測を重ねながら読むこととなった。あと残るは1月、2月、4月、5月、7月、9月、10月、11月となる。このシリーズ、まだ続くのか?全ての月を制覇するのか?楽しみに待ちたい。

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